第69話 村の変化


…この村に来て5日になるのだが、少しやり過ぎたと言わざるを得ない。

なんか楽しくなってしまったのだ。


たくさん看取って来た女の子たちの夢を託せるようでテンションがおかしくなってしまったのだ。


初日からリナリーンさんにお姫様らしい食べ方や話し方を教えて、土魔法で出来たポールに火魔法で熱をあたえ、髪をカールさせ、メイクは深めの赤が基調だったものを柔らかいピンクにした。


本人はずっとそうしたかったのだが、物語の中の様子しかしらず、細かい描写がなかったので自分なりにやっていたので、チグハグだったのだ。


それを僕が矯正して、誰がみても淑女となった。

それを頑張って維持していこうと喜んでいたようなので、僕も嬉しかった。


この村には僕しか男はおらず、なんか可愛がられた。

近所のお姉さんに剣を習ったり、魔法の使い方を教わったり、買い物をするとリンゴを一個おまけしたりしてくれた。


そんな彼女たちの態度が3日目から一変した。


リナリーンが僕のことを師匠と呼び始めたのだ。

確かに厳しくしたいた自覚はある。

自覚はあるが、そんなことを言い始めるとは思わなかった。

だって僕が習いに来たのだ。

本来僕が弟子じゃないか。


リナリーンはこの村の村長だ。

この村には女しか産まれることはなく、他所から男を調達して維持されている。


昔サンドラさんが言っていた魔女の村とはここの様だ。


その中でリナリーンさんは畏怖される存在で、何故なら誰にも媚びず、物心ついてから今までずっと一番強い存在とのことだった。


一時期婿探しに旅に出ていたらしいが、20数年前に戻ってから長を継ぎそれからずっと最強なままだった。


そんな村の魔王がお淑やかになったのだ。

村はぶったまげた。

意味がわからなかったが、男の子が師匠と呼ばれていること、あの子が来てからリナリーンが変化したことに気がつくと、色々な人が相談に来た。


サンドラさんが言っていた、男を拐うというのは事実だったようで、理由もあった。


この村の女はモテなかった。


女しかいないので、おかしくなっていたのだ。

長年かけて熟成された強気な気質が男受けしなかったのでやむを得ずに、拐って来ていたのだ。


しかし皆愛されたい。


そうして僕に聞きに来たのだ。

…僕がどれだけ小さい女の子の話を合わせるために少女漫画を読んだと思っている。


任せろ!

僕に!


お前らまとめてロマンチックにしてやる!



もしこの場に神様が居たならばこう言ったことだろう。


「貴方前世でモテモテだったわけじゃないのに、よく自信満々にそんなこと言えますね。」


と。


しかし、噛み合った。

村が持つ勤勉で気が強い性質と、ラルフの持つお姫様像の偏見が上手いこと噛み合った。


強弱のバランスが取れ始めたのだ。


そうしてこの村の戦闘力が少し落ちることとなる。

何故なら魔法の練習一辺倒だった村の授業に恋愛の授業が加わっていくのだから当然だ。

時間が割かれ始めたのだ。


この後この村の男不足は解消していくこととなる。


もちろん厄介さは格段に上がったと言えるだろう。

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