第67話 勇者ペリンの伝説

リナリーンは若い頃、白馬の王子を待ち続けていたが叶わずにいた。

手紙を読む限り、今は白馬の王子を諦めて、自らの手で最高の男を育成しようとしているらしい、厄介なババアだ。


「師匠は歳の割には若いんだけど…結婚出来るとは思えない、な…。」


そう、アイツは若い頃はそれはそれは美人だった。

魔法軍に入って来た時には大きな話題になったものだ。


しかし全くモテはしなかった。


いや、語弊があるな。

アイツは寄ってくる男を受け入れるが、自分の理想というものがあまりにハッキリあるらしく、そこから外れた男を弾き飛ばして周った。

物理的に。

その中には当然貴族も混ざっていて貴族の兵から襲撃されたが返り討ちにして、潰してまわった。

屋敷を物理的に。


そうなると、手駒でどうにもならない貴族はなんの関係もない軍に指令を入れるのだ。

なんとかしろと。


その頃はまだ聖騎士団の部隊長だったシャルルと魔法部隊長の私、竜狩りの勇者ペリンで彼女の捕獲へと向かった。


恐らく当時戦闘能力では王国最強であった3人だったが、それは叶わなかった。


単純に負けたのだ。


始めから私は全然やる気が湧かなかった。


言いよって振られた男の腹いせを8倍返しして、それを倍返しされたのを13倍返ししただけだったのだ。

やり過ぎだとは思ったが、私達が駆り出される程の問題か?と思ったのだ。


ダラダラ3人で探していると、わざわざ自ら現れたリナリーンは私達に、勝てたら私を好きにしていいよと言い襲いかかってきた。


その時の気持ちは良く覚えている。

後でシャルルに聞くと彼も同じだ。


「絶対に勝つわけにはいかない。」


そう、絶対に勝ってはいけない戦いになった。


リナリーンの魔法は強力でまともに当たるわけにはいかない、どうにか体力か魔力を削り、怪我をしない程度の魔法を喰らって気絶したフリをしようと思っていた。


長丁場になっちゃうなと思って一歩引くと、ペリンがマジで突っ込んでいった。


当時のペリンは私達2人より2段ほど強く、そのペリンが本気だと言うのはすぐにわかった。


そして、2人より強いペリンより更に強いリナリーンに引いていた。


ペリンの剣がかすりもしていなかったのだ。


ペリンを圧倒しけちょんけちょんにして踏みにじりながら、私たちに


「せっかくだしアンタらもやっとく?」


と言って魔力を溜めていた。


全然やる気もないし、ペリンも砂になってるし、

どうせこの女はこの国に残ることはないだろう。


間違っても、マグレでも勝っちゃいけない私たちが断ると、


「いくじなし。」


と寒気がする言葉を残し、馬鹿でかい鳥に乗ってすっ飛んでいった。


魔女を追い払いこれでこの国は元通りになる。

そう思ったが、数日後ペリンが旅立った。


惚れた女の願いも叶えられない自分が不甲斐ないとのことだった。


この本当に無意味で無益な戦いのせいでこの国は最強の魔法使いと、最強の剣士を失った。


この国に残ったのは二つの伝説。


あらゆるものを無茶苦茶にした、災厄の魔女の伝説と勇者ペリンの伝説だ。


そうして私達の心に残り続けるペリンは正しく勇者だったのだ。


色々な意味で。


あんな女を追うなんてスゲーな、と。

勇者だな、と。

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