第66話 空の旅と犯行声明文


…どこだ?

あ?

そら?


おそら?

風が凄いな。

鳥の上?

鳥の上だ!

すげー!かっこいい!

こんにちは鳥さん!

ラルフです!


「おー!目が覚めたかい!

アンタがラルフだろ?


手紙を貰ってさー!

アンタを鍛えてくれってさ!」


…?


あー!

シーさんのお師匠さん?

はじめまして、ラルフです。


お姉さんのお名前は?


「ごめんなー!

いきなり空の上で!

夜までに帰らないと、ほらコイツ鳥だろ?

夜は飛べないんだよー。

急いでたんだ。


あっはっは。


サシュマジュクの孫なんだろ?

あいつこんな可愛い孫隠してやがってさー!


あいつ昔はカッコよかったんだよー!


それでラルフは土魔法を習いたいんだろ?

そんでなんか王国に居辛いんだろ?


だから村で修行していけよ。

ちょうどいいじゃんってなったわけだ。」


そうなんだ。

お父さんとも知り合いだしシーさんが頼んだのはこの人なのね。


ならいいか!

話通ってるなら問題ないでしょ。


確かに王国では外に出られないくらい変なことになってたから丁度いいね。


ちなみにどこ行くの?

あと、お姉さんのお名前は?


「あー!

聞いてなかったんだね!


隠れ里だよ!


魔女の隠れ里!


なかなか来られるやついないんだから!


楽しみにしとけよー!」


あの…お名前…。


「私か?

リナリーンだ。

よろしくな!」


よろしくお願いします。


……

………


「ラルフがいなくなっちゃった。」


屋敷に3日ぶりに帰ってきたジェマの元に届いた知らせは最悪なものだった。


どこぞの聖職者が出世欲のために拐ったのか?と思ったが、事態はもっと深刻だった。


「あたしが師匠に手紙出したの、ね。

土属性魔法を教えてあげて欲しいって、そしたら、これ…。」


ジェマは手紙を受け取ると目を剥いた。


おい…これ…。

お前の師匠はリナリーンなのか?


「サシュマジュク、我が孫が、可愛い婚約者殿が修行に出ると書いてあるではありませんか。

どういうことですか?

せっかく剣の修行をつけに来たというのに。」


ジェマが振り向くとそこにシャルルがおり、手紙を覗き込んでいた。

昨日ラルフと合同修行に来たブランドとアンヌが、シャルルと試合したあとに更に剣技に磨きがかかったと言っていたのを聞いて、我慢ならなくなったのだ。


「我が孫がいなくなったとはどういうことだ!

どこへ隠した!」


バチギレたシャルルだが、ジェマは応じない。

応じる余裕が無い。


よく見ろシャルルのバカ。

この手紙の差出人を。


よく見ろ!


「…。

リナリーンだと?

あのリナリーンか?」


恐らくそうだ。

このふざけた若作りした文章で人を拐っていくのはアイツしか考えられない。


「パパ、ラルフはどこに行ったの?」


娘のティナに手紙を渡す。

もうこの紙を触りたくも無くなっていた。


「えっと…?


シーへ


おてがみありがと。

ひさしぶりにおてがみきてびっくりしちゃった!

まっかせなさい!

あたしのお城へ連れて行ってそだててあげちゃう!

かわいい男の子ね!

あたしがつよつよのいい男にしてあげちゃうからね!


たーいせつにするから帰りたくなくなっちゃうかも!

そしたらごめんね!


あなたのかわいいお師匠さま

リナリーン



なにコレ…。

小さい子からの手紙?」


違う。

私とシャルルと同い年のババアだ。

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