第63話 久しぶりのスピード感
異世界初心者パックといえば、コレだよね。
まずは試してみないといけないな。
部屋で1人でやらないと、誰も使っているのを見たことがないし。
「マジックバッグ!オープン!」
そう、マジックバッグを貰ったのだ。
説明に苦労したよ。
別空間に物を保管する魔法って言葉は簡単だけど、別空間ってなに?って言われたら説明なんか出来ないし。
神様には時間が止まっていて、空間に穴を空けて物を無限に入れられる魔法、と説明した。
すると合点がいったらしく、任せて下さいと言われたのでひと安心だ。
おぉ…。
空間に穴が空いてるよ。
怖…。
なにこの存在感のある2Dの穴。
横から見たらほっそいわ…。
CDとかDVDのディスクが真っ黒になって宙に浮いてる感じだ。
現実に見ると違和感がすっごい。
いつも使ってるペンでも投げ入れてみようかな。
…
……。
おぉ。
すっと入るね。
いいよ!
なんでコレを選んでこなかったのか!
穴のサイズを超えてもいけるのだろうか…。
枕を入れてみようかな。
…
……!
おぉ…!
なんか引き延ばされるみたいに入って行ったな!
ははっ!生き物だったら死んじゃう伸び方だったぜ!
いつも使ってるノートは?
いけるいける。
ははは、すごいな!
…はは。
んー?
この穴…どうやって消すんだ?
もしかしてマジックバッグ発動する度に穴が増えるの?
「クローズ!
クローズ穴!
ホールクローズ!
閉じて!
閉じなさいよ!」
ダメか。
…やっちまったなー!
部屋のど真ん中に開けちゃったよ。
せめて端っこに置いておけば倉庫として役に立ったかもしれないのに!
邪魔だし、部屋の真ん中の黒い穴はすっごい怖い。
…普通に生活してれば慣れるのか?
穴のある生活に…。
次発動する時はもっと考えて置こう。
部屋の端とか、誰も見えないところに。
流石に消えないってことはないよね。
魔法って説明したんだから。
お父さんなら知ってたかな。
まぁ、今は遠くに呼ばれて明後日まで帰って来ないから聞けるのは後でだけども。
…部屋の扉にも誰も入らないように書いておこうかな。
ララさんにも、変な魔法が発動しちゃったから入らないように言わないと。
割とすぐにタナさんを経由して消し方を教えてもらわないと、掃除に入ったララさんや家族が僕に用があって入った時に、収納されちゃったら困るよ。
あれ?
ペン、ペンは?
ペン…は、この中か。
出よ!ペン!
…
……
………あれ?
どうやって取り出すのさ、これ。
手を入れて取るの?
…これに?
この違和感全開の穴に?
うぅ…やだなぁ。
でもいつも使ってる枕とかも入れちゃったしな…。
仕方ない。
ラルフは黒い穴に手を差し込むとくるくると回して中の物を探した。
しかし手に触れるものは何もなく、グッと肩まで入れてみたが触れるものはなかった。
仕方がないので彼は一度腕を引き抜き、頭を入れてみた。
棚の裏に落ちたペンを探すように、一度目視出来れば、と思ったのだ。
彼には痛みもなく、気がついていなかったが、もちろん当たり前に肩から先の腕は収納されていた。
そうして、頭を入れた瞬間、ラルフは意識を失ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます