第52話 剣聖奥義!強制ラブコメの術
ジジイはクレバーだった。
聖騎士団長なんてものは作戦も練られなきゃいけないし、そもそも政治に疎ければ就けない地位だ。
そう、シャルルはこの3年間でアンヌを可愛らしくすることに心血を注いでいた。
有り余る地位と財力を駆使してかわいい孫を、とんでもなくかわいい孫へとプロデュースしていたのだ。
アンヌさえ気づかないうちに、美容のプロにケア用品を用意させ、服をプレゼントする際もきっちりプロに目的を話して準備してもらった。
更には淑女教育に混ぜて、こっそりトップオブトップの夜のお姉さんを入り込ませ好かれる女としての教育を施し、隙のないいい女へと成長させるための行動をとっていた。
「この3年間、私の影をちらつかせて、他の有象無象に無駄なことをさせずに、ラルフを剣術に没頭させることは成功しました。
幸い、あの家には私の親族も通っているし、愛弟子のルーベンスもいる。
あの子の成長をこの手で促せないのは魔法バカのせいで出来ませんでしたが、直接手を出さなくても色々と方法があるんですよ。
もうすぐだ!
今のうちにラルフにお爺ちゃんと呼ばれる心の準備をしておかなければな。
嬉しさのあまり死んでしまうかもしれません。
シャシャシャシャ!
かわいいかわいい私の天使よ!
剣聖の後継を連れておいで!
シャシャシャシャ!」
そしてシャルルは、さらに外堀を埋めることを開始していた。
うちの孫娘と、サシュマジュクの孫が大変仲が良くて、このまま婚約してしまうのかもしれない、とあらゆる重鎮が集まるところで話しまくっていたのだ。
そこには王様やなだたる貴族、他国のお偉いさんなどもいて、彼らは
「魔法使いの高みと剣士の高み、その孫が連れ添うなんて素敵なことだな。」
なんて思っていた。
事情を知っているカルは警備の為にその場にいることが多く、人知れずに、出会わせたことと、止められない罪悪感に胸を痛めていた。
しかしそんな策士シャルルの策略で、現在さらなる魔の手がラルフに忍び寄っていた。
アンヌを美しく、優しい人受けする女の子へとプロデュースした結果、同年代からの人気が絶大なものになっていた。
対してラルフは噂だけは聞くものの、誰も見たことがない。
よってこう思う輩が出てきたのだ。
「アンヌちゃんは悪い男に騙されているのでは!」
それには現在の聖騎士団長の息子も入っており、彼に筆を取らせるまでに至っていた。
そうして今日、ラルフの元に決闘状が届いた。
アンヌを賭けて決闘を行え!
というものだ。
えぇ…なんでさ。
賭けても何も、そんな関係でも何でもないのに。
決闘状には、シャルルのサインもあった。
神聖なる決闘でアンヌを取り合うことを了承する、親族のサインだ。
妖怪シャルルは脳筋を操ってラルフを表に引っ張り出すことに決めたのだ。
「婚約はまだ早い?
いつまでも友達のままでいられると思うなよ!」
シャルルの手紙には最後にそう書いてあった。
そう、剣聖は強制ラブコメの術を繰り出して来たのだ。
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