第51話 続く怪異
3年経っちゃったよ。
たまに何処からか
「ラルフ私だー
剣を教えに来たぞー」
とか
「すごい必殺技思いついちゃったなー。
才能のある子が弟子になってくれないかなー!」
とか
「殺してやるぞ!サシュマジュク!」
とかの、平和な幻聴はあったが襲撃されてはいないと思う。
ブランドさん曰く
「ジジイはラルフを何処かから見ているようで、俺を通じて指導をしているらしくってな。
ここをこうしてやれ、なんて言ってくる。
毎日だ。」
毎日何処かから…見ている?
ルーベンスさん曰く
「ジジイから手紙が頻繁に来ますね。
剣の振り幅から足の運び方、これからの練習方法なんかが毎日きます。
腹が立つ程的確なので、取り入れることが多いのですが…。
的確すぎるので何処からか見ていますね。」
やはり見ているのか…。
ララさん曰く
「何度か出入りの商人の馬車の底に張り付いて侵入を試みていたわね。
私が気がついて床の上から剣を突き立てたら、見えないはずの攻撃なのに避けられて、殺す気か!って言い残しながら消えていったわ。
私もまだまだね。」
あ、襲撃あったのね。
それにしてもどうやって避けたんだ?
本当に実力はすごいんだな…。
ある日アンヌが練習の際に2枚の紙をもって来た。
「ラルフ君ちょっと見て、これ…。」
そのうち一枚は僕を養子縁組する紙だった。
この紙は魔法がかかっており、ひと月しか使用期日が設けられていないので、毎月書いていることになる。
もし、そうだとしたら毎月毎月書いて、これは36枚目の紙となることとなる。
もう一枚は、アンヌとの婚約届だった。
貴族が多い文化なので、婚約の段階でも書類の提出が必要なのだ。
政治的な横槍や、横紙破りを防止するためらしいが、こっちは紙の期日が1週間しかない…。
ひえっ。
150枚以上書いてる可能性がある…。
「正直わたしはもう知らない人じゃないし、ラルフ君との婚約が嫌って訳じゃないけど、おじいちゃんちょっと強引過ぎるよね。」
ね。
そうなのだ、何度も何度も一緒に練習をする内にアンヌと仲良くなっていったのだ。
なので婚約が嫌なわけでは全然なく、むしろシャルルさんがくっついて来るのが問題になっているのだ。
両方のお父さん、ジェマとブランドさんも、長いこと一緒に練習を共にして、子供達の熱心さを評価しているらしく、二人の婚約には吝かではないようだ。
しかし父さんは
「シャルルと血縁…?
考えられん…。
あのバカをかわいいラルフがおじいちゃんと呼ぶだと?
よし!殺してしまおう。」
となって認められない。
ブランドさんはまだ早いし、ジジイが企てたことに乗るのは子供達に悪いと思ってるらしかった。
もちろん、他の家族も今はそのことに反対はなく、アンヌちゃんだったらいいんじゃないかと思い始めていた。
努力家で、最近より美しくなりだした優しい女の子だ。
ラルフの姉のティナとも仲が良く、来た際には卒なく家のことを手伝ってくれたりしているので、誰でもそう思うのだろう。
ね、いい子なんだけどね。
親族の方がちょっと…。
「ラルフ、ちょっとこれ、見ていただけます?
ジジイからの手紙に同封されていたんですけれど…。
知り合い、ではないですよね?
ラルフは妖怪に取り憑かれて外に全然出てないし…。」
なになに?
お手紙?
えーと?
はい、お日柄もよく、ね。
はいはい。
なるほどね、決闘状か!これ!
何がどうなって僕に?
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