第48話 パーティ編成未遂


「うう…気が重い…。

何度目だ…。


生徒がいなくなって、先生達が学園中探し回ってると、あとからひょっこりジジイが勝手に連れ出して指導していたなんて分かって、園長に謝りに行くのは…。」


そんな何回もあるの?

学園のセキュリティも心配だ…。


「あのジジイを個人で止めるのは不可能だ。

いや、サシュマジュク様ならなんとか出来るかもしれないが、それだけだ。」


近所の野球狂おじさんを3周りくらい凶悪にした感じじゃない。

処罰とかはなかったの?


「親父も有名人だし、指導も変なことはしないし、連れて行く子供も兵士志望ばっかりで、むしろ望んで着いて行った節があるから大問題にはならないが…。

ジジイは自分が悪いと思ってないから毎回俺が謝りに行ってんだ。

やってることに問題はなくても、やり方に問題があると、誰かが謝りに行かなくちゃいけないんだ。

ラルフも覚えとけよ、これから誰かに迷惑かけないようにな…。」


屋敷の前に着き、門を開けるとすぐにお父さんが飛んで走って来た。


「ラルフ!

何があったのだ!

こんなに遅くなって…。

みんな心配したのだぞ…!


ん…?

…ブランド?

つまりそういうことだな?」


「すいません…あの…サシュマジュク様の息子さんですか?

はじめまして、私、騎士団長のブランドと申します。

この度は息子さんに…」


騎士団長さんでしたか!

シャルルさんの息子だもんね。

きっとすごく強いのだろう。


「シャルルのクソ剣術馬鹿がラルフに何をしたのだ!

…!

ラルフ!ラルフの手がボロボロじゃないか…!

今度こそ焼き殺してやる!

かけらもこの世に残るとは思うなよ…!」


「あの…。」


話を全く聞かず、人って顔にこんなに血管あったんだってくらい、激昂しているお父さんの後から、ルーベンスさんがやって来た。


「兄貴、何やってんだよ。

…また親父か?


ラルフ、何があったか教えて下さい。」


ご兄弟でしたか。

お兄さんは悪くないんです。


今日あったことを説明すると、ブランドさんはポツリとカルにも指導がいるな…と言った。


「兄貴、親父はもうダメだ。

今まで趣味だしまぁ、と思って来たけど、ラルフの、弟のような家族の手がこんなになるまでやらせるなんて、許せない。


殺そう。

そうだ!俺と先生と兄貴が組めばやれる。

やれるじゃないか!」


なに言ってんのルーベンスさんまで!

あれ?手がボロボロなのは自分のせいなんだって説明したよね?


「やるなら今夜だな。

あの剣術馬鹿は寝るのが早い。

ブランド、屋敷の使用人と家族をウチヘ連れてこい。

屋敷ごと燃やし尽くして、出て来たところをルーベンスとお前で斬れ、やれるな、ルーベンス」


ハッ

じゃないのよ。

止めて!

誰か止めて!


ブランドさん、何か言ってよ。


「もしかして…若く見えますけど…

サシュマジュクさんですか?」


あー!

違う!

そこからか!

すっかり忘れてた!


ややこしいなもう!


誰か来て!

人手が足りないよ。


シーさん…はダメかも。

あの人も過保護気味なんだ。


ぺぺさん…はこの時間絶対べろべろだ。

役に立たない。


ララさーん!

また仕事増やしてごめんだけどララさんしかいない!

ララさーん!


あっ、ティナ!

ティナがこっち見てる…!

ティナ!ララさんを!

そう、走って!

人死にが出るから!


……

来た!ナイスティナ!


「先生、ルーベンスも一緒になって何をしてるの!

師匠?

あぁ師匠が指導するのなんでいつものことでしょ?

…ラルフの手が…?

わかりました。

私もやります。

大丈夫よラルフちゃん。

毎日剣は磨いているんだから。」


ララさん?

ララさん!?


ダメだ、パーティ編成が分厚くなって行くだけだ。


あわあわしているだけの僕とブランドさん、ビキビキしている他の皆の上に、誰も気が付かない間に大きな水の玉が浮いていた。

ティナが小さな声でやっちゃえ!

というと玉は割れ、僕以外の頭の上にキンキンに冷えた水が降って来た。


「落ち着きなさいって、ラルフは自分で望んだ訓練でそうなったんだから、ね。」


シーさん!

さすが最年長!


落ち着きがちがうよ。

…ブランドさんは困ってるだけで冷静だったのに水を被ってるから少しは怒ってるのかもしれないけど、他の人と比べたら天地の差だ。


あ、奥の方でティナの横でぺぺさんがうずくまってる。

年季が違うとか言ったんだろうな、きっと。


…口に出してなかったよね僕、最年長ってはみ出てなかったよね?

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