第47話 シャルルの被害者その2


今度の能力は祈りか…。

せっかく祭壇の前なんだから早速祈っておこうかな。


タナさん、ラルフィード様。

無事現世に着きました。

これからも見守っていて下さい。


挨拶はそこそこに無心で祈り続けていると、後ろから声がした。


「あなた、とても上手にお祈りするのね。」


びっくりした…。

ここって人よけとかされてる訳じゃないのか。


「こんばんは。

お邪魔をしてごめんなさい。

夜の鐘聞こえてた?

それを鳴らしに来た両親に着いてきて、私はここの掃除をしているのよ。

アンヌっていうの、よろしくね。

あなたは?」


はいはい、アンヌちゃんね。

ラルフです。

ここってもう閉める時間?

ごめんね、すぐに出ていくよ。


「ううん。

ここはいつでも開いてるのよ。

街にも教会があるし、ここにはあんまり人が来ないから、子供がいてびっくりしちゃった。

そしたら、その子がずうっと祈ってるんだから、我慢できなくて声をかけてしまったの。」


そうなんだね。

うんうん。

12歳くらいかな?の可愛らしい感じの女の子だ。

今日はむさいおじさんとばっかり会っていたからか、余計そう感じるよ。

まぁ、このくらいの歳の子供に可愛らしい以外の感想なんてわかないけどさ。


…ん?

ずうっとってどのくらい?

そういえばこんばんはって言われたぞ…!


「んー。

夜の鐘を鳴らしながら掃除をしてる間ずっとだから…。

2時間くらいかな?

鐘が鳴ってからは1時間くらい。」


やっべぇ…!

少なくとも7時か!

絶対心配してるよ、早く帰らないと。


扉の方から長身で引き締まった感じの男の人が歩いてきた。


「どうした?アンヌ、なんかあったか?

お?子供?

どうしたんだ?迷子か?

こんばんは。」


「ラルフです。こんばんは。

いや…神様に祈ってたらこんな時間になったの気がついてなくって…。」


「こんなに遅くなってたのに気がついてなかったの?本当にすごいね。


私たちも帰るところだから、送っていってあげるよ。

お家はどこ?」


サシュマジュクの家です、と答えると、二人は少し驚いた顔をした。


「サシュマジュク様の家ならお父さんがわかるよ。

何度か謝りに行ったことがあるから。」


謝りに…?

アンヌちゃんったら見た目によらずヤンチャなのか?


「わたしじゃないよ!

おじいちゃんがヤンチャなの!

おじいちゃんがサシュマジュク先生に突っかかって、それでお父さんが謝りに行ったの!」


…どっかで聞いたな、その話。

シャルルさんのお孫さん?


「おう!親父を知ってるのか。

そうだよ、俺が息子で、アンヌは孫だ。

そういえば今日は新しい子供を教えに行くって言ってたな…。

ラルフのことか?」


そうですー

このハズレの教会にいるのの7割くらいはあなたたちのお祖父様のせいです。

いや、あのままいつまで気絶してるか分からないから、すぐ目を覚まして追われないように真っ直ぐ帰っちゃまずいと思ったんだよね。


「もしかして…爺さんまたやったか…?」


またやったの内容がわからないけど、多分またやったと思う。


「お父さん、この子、サシュマジュク先生の家の子って…!」


「お孫さん?

そうか…。

絶対に送っていかなきゃいけなくなったな。

アンヌは来なくていいぞ、通りがかりに門兵に送ってもらおう。


はぁ…気が重いが行こうか。」


門のところではサンドラさんがいて、アンヌのお父さんが子供を送ってくれるようにお願いしていた。


「あら、ラルフちゃんじゃない。

…シャルル師匠のとこのブランド団長とラルフちゃんの組み合わせって、師匠またなんかやったの?」


シャシャシャシャって笑ってたよ。


「あぁ…もう…。

親父…。

じゃあサンドラ、アンヌを頼むな。

これから俺は愛娘に見せられない程の見事な謝罪をしに行くから。」


そんな悲壮な…!


「分かったわよ。

ちゃんと送って行くわ。

あ、ラルフちゃん見て見て。」


そういい、サンドラさんは兜を脱ぐと前と変わらず髭もじゃだった。


え?

呪いは解けたんだよね。


「すっごいおひげが伸びにくくなったの!

教会で診てもらったら、呪いが解けた形跡があるって!

きっとあの時よね。

ありがとね!」


あ、ウインクはやめてください…。

伸びにくくなってそれなのか…。

凄いな…!


「じゃあまたね、ラルフちゃん。

今度わたしも剣、手取り足取り教えてあげるからね。」


ひげもじゃの呪いが解けたサンドラさんは、ひげもじゃの獣のままだった。

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