第46話 確認作業とタナの加護
家に帰る道路を横にそれ、城門を潜り懐かしの教会にやってきた。
ここはいつきても誰もいないな。
それでも誰かが掃除をきちんとしているようで、ちゃんと綺麗だ。
そういえばここには鐘楼があって、朝昼晩に鐘が3回ずつ鳴っているから、その役目の人がここに来て掃除しているのかも知れないなぁ。
一時期強制的に来ていた祭壇の前へ行き、祈りのポーズで唱えた。
神様、神様…。
僕に与えた能力は拳の術とかいて拳術ですか。
つるぎの術の剣術だと思ってました。
どうですか、合ってますか。
ちゃんと確認していなかったのと悪いけど、知らないとまた突発的に肉塊になりかねないのです。
家族ができたんですよ、僕が肉塊になって宇宙に行ったら、家族はどう思うでしょうね。
…返事がないな。
聞こえているはずなんだけどなぁ…。
知能が高くなった時にお父さんをここに呼んでくれたんだから。
神様、聞こえているんでしょ。
なんとか言わないと、まずは祭壇パンチで試しますよー。
違ったら痛いだけだけど、もしそうなら粉々ですよー。
10数えますねー。
10…
9…
8…
「ラルフちゃん、やめてって。
間違っちゃったんだって、
今日まで剣なんて持ったこともないのに剣のこと言ってるなんて思わなくて拳術にしちゃったんだって。」
ん?
あれ?エマさん?
「ラルフィード様が下界に声を下すと大変なんだってさ。
一人に声をかけるなんて繊細なこと出来ないから世界に響き渡るって。」
そうなの?
じゃあエマさんが伝えてくれて良かったよ。
「あ、それとね、私正真正銘の神様になったのよ。
それでね?
人間の時の名前使えないから、正式にタナって名前の神様になったのよ。
改めてよろしくね。」
よろしくお願いします。
そうかぁ、良かったなぁ。
あそこ神様一人だったから。
仲良くしてあげてね。
「じゃあ行きましょうか。」
どこに?と思う間もなく、僕は天界にいた。
え?死んだの僕?
「そうなりますね。
いやぁ死の神の名前は伊達じゃないですね。
はっはっは
スルッと召されましたよ。」
「死の神じゃないってば。
安らぎの神、タナよ。
だってラルフちゃんってば、つるぎの方の剣術が良かったんでしょ?」
いやー…死ぬほどではなかったかな。
教会に来たのはね、神様のくれる能力が神様仕様になってて発動したら6秒で死んだりしてきたから、どんな能力か把握しないと最悪、人を巻き込んじゃうから確認しにきただけなんだよ。
「あら、ラルフちゃん無駄死にじゃない。
ていうかラルフィード様、何やってるのよ。
ラルフちゃんってば今まで何回死んでるの?」
神様が指折り数え、十本の指を使い切り二本戻った。
「今回を合わせたら12回ですかね。
すっごい死んじゃってますね、ラルフ。
ははは。」
ははは、じゃないよ。
前回だけなんだから、自分の意思で死ぬことを覚悟したの。
他は宇宙にすっ飛んでいったり、発動した途端死んだりしてるんだから。
「貴方が死の神様じゃない。」
ね!
僕も前にそう思ったよ。
「さて、次こそつるぎの方の剣術にしましょうか?」
いや、それがね?
ちまちま改善しながら練習するのが性に合ってて、いきなり強くなるとか嫌なんだよ。
だから剣術じゃないやつがいいな。
でもどうしようかな…。
「貴方が今困っていることはなに?」
今は特にないんだよね。
屋敷では良くしてもらってると思う。
タナさんも見てたでしょ?
いい人たちなんだよ、あそこの人たち。
「そうねぇ。
助けたい人なんかは?」
ララさんの家事を手伝いたいくらいかな。
あ、家事の能力にしようかな。
「ちょっと!
ダメよ、ダメに決まってるでしょ?
ラルフィード様もラルフも能力の調整なんて出来ないんだから!
なによ神様レベルの家事って。
ここみたいになるってこと?
更地よ、ここ。」
おぉ…新たな視点だ。
神様もびっくりしてる…。
あんたはびっくりしちゃダメでしょ。
「7人も住んでてなんで家事が大変なのよ。
各々が少しずつやればいいでしょ?」
…僕はやってるよ。
でも正直いって元々はララさん以外と同じ系統の人間なんだ、僕は。
「ティナもそうなの?
もう!
…貴方に煽動とか命令系の能力あげて家事をさせる事は出来るだろうけど、神の命令なんて、自我を失ってそれしかしない生き物に成り下がりそうだし…。
ダメね、家事に関してはラルフちゃんが頑張るか他の人をラルフちゃんなりに説得するしかないわ。」
家族を操るなんてぞっとするよ…。
神様はなんかいい案ある?
僕としては正直、現状困ってることがないから、いざという時に頼れる能力が良いんだけど…。
「ふむ。
そうですね。
…そういえば、貴方はタナからの加護が付いていることに気がついていましたか?」
え?
知らないよ!
でも加護か!
タナさんは僕と仲良くなったっていうことだね。
嬉しいな。
これからも仲良くしてね。
「タナはまだ生まれたての信仰のない、弱い神様なので、強い力は有していませんがね。
そこで、結果的にタナの加護を強める能力なんてどうでしょうか。
今必要な能力が無いのであれば、タナの力も強まりますし、それも良いと思うのですが。」
それは良いかも知れない。
タナさんの力を強くすることにも繋がるならタナさんにも良いことなんだよね。
「決まりましたね。
では、ラルフよ貴方に与える能力は祈りです。
毎日ちゃんと祈って下さいね。
では、幸せを願っていますよ。」
そうして僕は祭壇前に戻ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます