第36話 幽霊ブーケを持つ少年


タナはここにいない、ではどこへ行ったのか。

簡単なことだ。


お父さんの学園に1日問題がなかったか様子を見てもらう仕事を夜にお願いしたのだ。

長が居ない間に問題が起きたか分からないから心配だと言ったら快諾してくれた。

なのでタナは夜は学園におり、昼に屋敷へ戻って来ている。

もしダメなら、死属性魔術で眠らせて、触媒の中に居てもらおうかとも思ったが、そこまでしなくて良かったので安心している。


昼の石碑の亡者達は自分の意思を伝えられるほどはっきりしておらず、タナを認識したりも出来ていないらしい。

タナからすると普段通り祈ってはいるのだから変化が分からないのだ。


よしよし、順調だ。


「ラルフのクマは最近特にひどいな…。

夜眠れていないのだろうか。」


「あたしもそう思ってなん度か夜に覗いて見てるけど、ちゃんと布団に入って眠ってる。」


「シーさんもですか、私も見ているんだけどちゃんと寝てるのよね。

なんであんなに疲れているのかしら。」


「飯もちゃんと食ってるしな。

ルーベンスが勉強詰め込みすぎてんじゃねーの?」


「ラルフは優秀で、もう計算では学園を出られるくらいなので詰め込んでする必要がないんです。

僕も何人も子供を請け負ってましたが、その中でもラルフは規則正しく過ごしている方で、あんなに疲れている理由に心当たりがないですね…。」


「先生も比例する様にやつれてる。

せっかく若くなったのに、そんなに心配ばっかりしてたらまたおじいちゃんになっちゃうよ。

ただでさえ歳より上に見られてたのに。」


「そうは言っても心配だ…。

悪魔に呪われていた事があるのだ。

今度は幽霊にでも取り憑かれているんじゃないかと心配になる。」


お、お父さん当たり!


僕はいま600体ほどの幽霊に取り憑かれている。

毎晩毎晩、タナを隠し、煽り、スカし、様々な手を使って僕にヘイトを向けさせている。


「お父さん、当たっちゃってるじゃない!

でもね、死属性なんて殆どみんな適性ないからわかんないのね!

ラルフの後ろすっごいのに!」


その分石碑は綺麗になったでしょ?


後少しで完全に僕に移る。

まずはそこからだ。

それが終わってからタナちゃんをどうにかする。


それにしても怨嗟の声がすごい。

今は覚悟を持って夜に対して寝ていないからそんなに気にならないけど、意味もなくこんな状態だったら耐えられなかっただろうな。


タナちゃん、毎晩お願いしてごめんね。

お父さんが学園に復帰するまでタナちゃんにしか出来ないんだ。


「も〜。

お姉ちゃんに遠慮しないで!

お父さんの事だし全然いいのよ!


おほほ。」


よし、タナちゃんも頼られて絶好調だ。

石碑が綺麗になったあと、僕が考えてる道はある。

ただその時タナちゃんが何を考えるのかは分からない。

いいようになるといいんだけど。


「エマさんはどう思う?」

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