第35話 1日の流れ


屋敷に来て一月ほど経ち、ルーティン化されて来た生活は居心地のいいものだった。


朝起きて、ララさんを手伝って布団を回収して周る。

体調が悪い時はその限りではないが、研究熱心な方々が昼夜逆転生活を繰り返す為、見かねたララさんが始めたルールらしい。

布団が無ければ眠れない、朝起きればいくら夜更かししても夜は寝てしまう。


その後朝食、蒸したパンとスープなことが多く、スープは夕飯のスープに何か足したものなことが多い。

これも恐らく昼夜逆転生活で食べたり食べなかったり昼に朝ごはんを食べたりな方々対策なのだろう。

この家にはスープとパンは常に用意されているようだ。


午前中はシーさんかお父さんに魔法を教わる。

聖属性魔法が得意だと思われており、お父さんはそれを中心に、シーさんはそれ以外の魔法を満遍なく教えてくれている。

まだ初めた生活に必要な火、水が中心で風、土は本当に触りだけと言う印象だ。

4:4:1:1くらいの割合だろう。

おかげで自分の部屋に灯りを灯せるようになったし、なによりトイレを流せるようになったのは嬉しい。


昼食の時間になると、僕が屋敷を周り皆を食堂に集めるのが仕事だ。

シーさん、お父さんと一緒にいることが多いし、ララさんはぺぺさんを手伝っていることが多いので、そこへ声がけに行くと完了する簡単なものだ。

昼食はパン、スープに何か一つついてくることが多い。

元々は蒸した野菜だったり、果物だったりしたそうだが、僕が育ち盛りなこと、お父さんが若返ったことで、肉や揚げた何かが出ることも増えたらしい。


午後の初めの方はララさんの洗濯を手伝ったり、ぺぺさんの夕飯の準備を見てたり、本を読んだりしている。

言ってみれば自由時間で、今後はこの時間を使ってカルさんに剣や戦い方を教わりに行こうと思っている。


3時頃になるとぺぺさんがホールパイを焼き上げており、僕が各々の部屋へ持って行く。

お父さんは今は仕事が強制的に休みでかつ、屋敷からも出られないのでこの時間は部屋にいるし、シーさんもお父さんがいることで研究が捗るらしく、あまり出かけることがない。

ララさんは買い物に行ったりしていない事があるので、僕とお父さんで水の魔法を使って乾かないようにしてから、部屋の前の棚に置いておく。

お皿をシャボン玉で包むようにする魔法で、一度かけるとしばらく持つらしい。

それから帰りがけに石碑と神様の棚へお供えをして軽くお祈りをして、ぺぺさんのいる台所へもどり、知らない事ばかりの食材のことを聞きながらパイを食べる。

前世の何かを再現できないかとか、栄養的な話を出来ればしたいのだが、材料が違いすぎることとそれに含まれる栄養なんでものがさっぱりわからないのでどうにもならなかった。

それでも、この食べ物はこれと合うかも、なんて言う話をしている。

知識と常識がないので、思いもよらない組み合わせを提案するので、それだけでも逆に参考になる事があるらしい。

唯一卵に火を通すと固まる性質は同じなので、プリンと茶碗蒸しのようなものは作る事ができ、茶碗蒸しは朝ご飯のお供に出てくる事がある。

しかし、生で食べられる卵か不明なのでマヨネーズなんかの生で使用する事が前提の料理は提案していない。

もしかしたら魔法で殺菌関係はどうにかなるのかもしれないが、元々マヨネーズが好きではない為、無いならないでいいか、と思っている。


それから夕飯時までルーベンスさんの授業を受ける。

算数は計算は問題ないが、言語の違いによる違和感、具体的には区切りが違うのだ。

3桁ずつ区切り言葉としては1000以上もあるのだが、読みとしてはない。

10万まではそこまでややこしくないがそれ以降は考えたくないね。

それもいつか慣れるだろうが今は大変だ。

ルーベンスさんは計算を重視していたようで、地理と歴史は触りだけ、直近に戦争があったことや、王国の仕組み、貴族の並びそのようなことだった。

地理に関しては、この王国は砂漠地帯の北西にあり、海があるし、大きな川もある。

大砂漠を囲むように色々な国が建っているらしい。

昔は砂漠地帯に大きな国があったが、大爆発が起きてから不毛の砂地になってしまったようだった。

そのどれもが前世と照らし合わせながらすぐに覚えてしまうと、ルーベンスさんはこの世界の物語を教えてくれた。

中でも黒い街という話と、王と太陽の子という話が面白かった。


夕飯は穀物、スープ、肉や魚を焼いたもの、果物などのデザートが出てくる。


夕飯後には、初めはただ団欒をしていたが、そのうちお父さんとぺぺさんがカードゲームを持ってきたり、ルーベンスさんがボードゲームを持ってきてくれたので皆で遊ぶ事が多い。

ぺぺさんとシーさんはカードが強く、ララさんとルーベンスさんはボードゲームが強い。

お父さんは思考が悪いわけではなさそうなのに、なぜか負け越している。

理由ははっきりしていて、僕を負けさせようという気が持てないのだ。

いいのに、気にしなくても。


そうこうしているうちに、ララさんとぺぺさんが抜ける、洗い物や寝る準備をする為だ。

そしてお風呂を入れるためにお父さんとシーさんが抜けて、僕とルーベンスさんで雑談をしながら今日の勉強の疑問点を話している。


お風呂にはいるともう皆部屋からはあまり出てこず、各々朝まで過ごしている。

一度だけどうしてもお腹が空いた時に、ぺぺさんを訪ねてパンを貰った事がある。

夜に食べるパンはいつもより美味しい気がした。


他の家族が何をしているか知らないが、僕はそのぐらいの時間から身体を抜け出し、石碑と話している。

やはり全然会話にならないし、過去の悔やんでいることしか喋らなかったが、ここ最近変化が起き始めた。


みんながみんな揃ってタナがいない、タナはどこにいるのか、という。

僕が、知らないな、成仏しちゃったんじゃない?というと、反応するパターンは2つ。

嘆くか、僕を恨むかだ。

何年も変化がなかったタナとの関係が僕が何かをして変化したのだと思っているのだ。

まぁ、その通りなのだが。


タナはいまここにはいない。


石碑に夜更けまで対応してから少し眠り、また1日が始まるという感じだ。


充実した毎日を過ごした結果、とんでもないクマが出来てきた。

当たり前だ、7歳が3時まで起きてるからだ。


そろそろ石碑はなんとかなる気がするが、早くしないと、お父さんが過剰に心配し始めた。


さあ、石碑が綺麗になるか、お父さんが禿げるかのチキンレースだ。

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