第30話 文化の違い

「それにしてもよ、先生。

若返っちまったなら脂っこいもんも食えるな。

ジジイ用料理作るのやめるぜ?

もしそれで太ったら、運動してくれ。

膝も腰も痛く無くなっただろ。」


お父さんの若返りに関してはそんな軽い感じで、家族内では処理されてしまった。

シーちゃんはどうやってそうなったのか知りたがっていたが、再現性がないので説明しようがなかった。


「やはり先生の息子ということにしておいた方がいいでしょうね。

一月程は外に出ないで下さい。

その期間で調整したり、届出を出しましょう。

幸い、僕らはサシュマジュク先生の事を単に先生と呼んでいたので、そのまま先生と呼べば対外的におかしくはないでしょう。


それで、息子さん。

名前は何にします?

必要ですよ。」


「…ジェマとする。」


「あぁ、そう。

そうなの、ね、先生。」


「あぁ。」


シーちゃんとは他の人より付き合いが長いらしい、きっと何か思い入れのある名前なのだろう。


「エマちゃんって言う教え子がいたのよ!

初めての生徒だったんだって!」


全部言うじゃん。

なんで知ってるのさ。


「なんでって…。

石碑に名前があるからかしらね。

死んでるからかも知れないわね!」


そうか…。

石碑に名前があるってことは戦争で亡くなったと言うことだ。

もしかしたらお父さんはその子のために石碑を建てたかったのかもな。


「ララ、ラルフに部屋の案内を頼めるか。

夕飯までゆっくりしているといい。

疲れだろう、今日は色々あったからな。」


「お父さん、石碑に祈って来ていいかな。

休む前にそうしないと、なんか落ち着かないと言うか…。

あの石碑も家族のような気がするんだ。」


お父さんはにっこり笑って、それがいいと言った。


「ララさん、ごめんね。

ひと手間増やしちゃって。」


「ううん…。

あの石碑には皆の家族が眠っているから。

嬉しいよ、そう言ってくれて。」


タナちゃんが甘いもの欲しがってたな。

ぺぺさんに分けてもらえるかな。


「…石碑にか。

他国の文化か?

優しい文化だな。

もちろんいいぜ。


ほら、これホールパイを8つに切ったもんだ。

家族が増えて6人、二つ余る。

今までは5人だったから6つに切って、一つ余った分は神様にお供えしていた。


今度から一つを神様、一つは石碑に備えようか。

一人分の量は少しだけ減っちまうが…。

まぁ、誰も文句は言わないだろ。


ほら、これ持って挨拶して来な。」


皿を渡してから僕の頭をガシガシ撫でてぺぺさんは台所に入って行った。


「お皿もてる?

このパイ美味しいの。

きっと皆んな喜んでくれるね。」


「イエー!

パイ!

うれしー!」


一人は間違いなく喜んでるよ。

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