第26話 副作用
「ラルフ、父さんはな、神にお会いした。」
普通なら頭がおかしくなったか、心が壊れてしまったかの二択だが今回は本当だ。
「やはりお前に顔や雰囲気が似てる感じがしてな、像や宗教画から来る印象より神々しかったが…。
いや、あまり神のことを口にするのは良くないだろう。お前も疑ってないようだし、それで充分だな。嬉しいことだ。」
そうなんだよね。
神々しさは半端ないんだ。
静かで優しく美しく、少し怖い感じ。
雰囲気はね。
父さんを改めて鑑定してみると、鑑定情報でも親子になっていたので、少し恥ずかしくなった。
それとやはり聖人になっていた。
両方とも神から直接認められたのだから当然か。
書類上とかはまだなんだけどね。
「さ、家に帰るか。
お前を紹介しなければならないものもいるのだ。
使用人もいるのでな。」
使用人なんているのか。
性格的に一人で暮らしてるものだと思ってたよ。
「私は一人でも良かったのだがな、偉くなってしまうと色々しがらみがあったり、教え子が路頭に迷ったりで少しずつ増えていったのだ。
しかし今となっては家族みたいなものでな、そういう扱いだと思ってくれ。
想像してる使用人よりも仲がいいぞ、自慢だ。」
そうか、そういう人だから僕を引き取るのに何の抵抗もなかったのか。
奥さんがいない事を気にしていたけど、父さんにとっては関係なかったのかも知れないな。
…しかし言いづらいな…。
命懸けの聖属性魔法はなかなかの効果を発揮した。
聖属性の特性は大きく分けると活性化と浄化だ。
がんを治し、余波でサンドラさんの髭呪いを解いた、この二つのほとんどは浄化の力で補助的に活性化を使っている形だ。
実はカルさんの古傷なんかも治っている。
触らなくても命を燃やした膨大な魔力は暴れ回ったようだ。
活性化は一時的に身体の能力を上げたり、自己治癒能力を上げたりするのに役立つ。
一時的に能力が上がる、の部分に若返りもある。
衰えた筋肉なんかを補助するわけではなく、筋肉自体を若返らせて強化しているようだ。
じゃないと魔法効果が切れた時反動でとんでもないことになるだろうしね。
さっきまで僕は聖属性の天才だった。
それも神レベルの。
天才が命を燃やして活性化させた結果、明らかに父さんは若返った。
具体的には55歳だった実年齢から28歳くらいまで肉体が戻った。
問題はそこからだ。
その状態のまま僕のついでに神様に召されたのだ。
何度も生きたり死んだりしている僕にしかわからないだろう、神様が僕を下ろすのは魂じゃない。
天界で体を作り直しそれごと降ろしているのだ。
前に言っていた、物質をゼロから作ると大変なことになるらしいからそれも関係しているのかもしれない。
あの神様は雑なのだ。
一時的に若返った父さんを見て、そのまま作り直したようだ。
マジに若返っちゃったのだ。
神様からみたら55歳だろうが28歳だろうが誤差なのだろうが、人間だととんでもないことだ。
「父さん…なんか…若くなったね…。」
「そうか?
胃の調子が良くなったし、最近のストレスも軽減されたし、神にも会えたしな。
若くもなってしまうだろう。ははは。」
ははは。じゃないんだよ。
ほら鏡見て鏡。
「…バカな。」
何て声をかけていいかわからない。
さっきの推測を話すと、神様が病気を治したわけじゃなくて僕が治した事がバレるから言えない…。
せっかく天界でのことを誤魔化したのに。
「でも、年齢的により親子っぽくなったね。」
「そうだな!
神様からの親子になったお祝いなのかも知れんな!
ならいいか!
ははは。
…どうしようもないしな。
どうしようか。これ。
まぁ、聖属性魔法の副産物で一時的に若返る事があるから、すぐに元に戻ってしまうさ。
神の力が強すぎて残留時間が長いのだろう。
そんなに気にすることはない。
今のうちに油の強い肉でも食べるさ。」
そうだね…。
対外的にどうするのかは知らないけどそれがいいよ。
絶対元には戻らないけどね。
鑑定でも28歳になっちゃってるんだから。
28歳のまま55歳の見た目になるよりは全然いいよ。
慰めにもならないけど。
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