第24話 やり残したこと
サシュマジュクさんの胃は荒れている。
診察の魔法の結果で分かった事だ。
何故荒れているか。
神経性の胃酸過多、潰瘍、もちろんそれらもあった。
魔法の診察でなければまだ見つからなかったかも知れないそれを、わかりやすく言うならば、がん、だ。
恐らく、持病なのであろう胃痛に長年魔法で治癒を続けたのであろうその臓器に現れた病変。
診察では胃に異常に元気な箇所がある、と感じるものだ。
治癒魔法を健康体にかけ続けると病変が出来ると言っていたが、僕の知識からすると、がんは遺伝子のエラーが起きて異常増殖する細胞で、その感覚とは合わない気がする。
魔力が過剰に溜まった動物を魔物と呼ぶらしい。サシュマジュクさんに読ませてもらった中等部の教科書に記述があった。
…内臓の一部の魔物化?
そう判断した僕は治療方針を考えた。
まず通常のがんだとした場合、切除し治癒。
魔法があれば簡単だ。
周りの細胞を模してくれれば正常な細胞で再生されるだろう。
もし魔物化していた場合、切除し、浄化し、治癒。
浄化は知っている。
サシュマジュクに放たれた白い火、あれが浄化だ。
力の能力の時と知恵の能力の時はあれで死んだ。
デカい魔法の衝撃でバラバラになってはいたが焦げただけで燃えたりはしていない。
白い光が強い。
…時間がない。
ぶっつけ本番だけど、もう使い切って死んでも一緒な魔力だ。
そして、神レベルの聖属性の才能。
いけるはず。
いけるはずだ!
僕は魔法を行使した。
…
……
………
「さすがですね、病気の推測はほぼ正解と言って良いでしょう。
そして、サシュマジュクの心を救いました。
今回はよくやりましたね。
…次は普通に生きましょうね。」
なんだよ。
神様のせいでもあるんだからね。
まぁでも気分がいい。
「それで神様、サシュマジュクさんは大丈夫?」
「私は大丈夫だぞ。
胃も健康なようだ。
ありがとなラルフ。
しかし、ここは…。」
なんで天界にサシュマジュクさんがいるのさ!
「他人の体内に魔力をぶち込みながら召されたからじゃないですかね?
初めてのケースなので推測ですけど。」
そんなんでいいの?
「ラルフよ、ここはどこだ?
この方は知り合いなのか?」
あぁ…
どうしよう。
「はじめましてサシュマジュク。
私はラルフィード。
神です。」
後光をさしながら神様が自己紹介をすると、サシュマジュクさんが泡を吹いて倒れた。
「せっかく健康になったのに…。」
「…次の能力でも考えて、生き返らせちゃいましょう。今ならお告げか夢だと思うでしょう。」
そんなんでいいの?
「ラルフからサシュマジュクの今までの善行と、不幸な身の上の子供を救った褒美とでも話しておいて下さい。
それで、サンドラさんは余波で治ったって、サシュマジュクは神職だからそれで納得してくれるかも知れませんね。」
…え?
サンドラさんもどこか悪かったの?
「えぇ、髭の呪いが解けました。」
あぁ、あの超スピードで伸びる髭、呪いだったんだ。
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