第22話 進路

「サシュマジュク様、自分の子供居なくて良かったですね、ホント。

何にも手につかなかったっすよ、その感じじゃ。


ラルフ、森で迷ってたんだってな、無事で何よりだ。

これから行くとこあんのか?ないんなら兵舎の幼年部に所属するよう話せるし、サシュマジュク様がやってる孤児院に行くことも出来ると思うぞ?」


家も何もないのだ。

まだ7歳の身の上じゃ家も借りられないし、仕事も探せない。

誰かに頼るか、毎晩召されるしか無かったところだ。

ホテル代わりに死んでたまるか。


「わたしが育てる。」


サシュマジュクさんはカルさんに言うが、カルさんは無視してこちらに選ばせるつもりの様だ。


「私がそだ…」


「孤児院だと勉学と魔法が学べる。

なんせ院長やってるのがそこの子供大好きおじいちゃんだ。

魔法と勉学、宗教でこの街にこの人より詳しい人はそうはいない。

今は目がキマってて信用できないかも知れないが、信頼できる人だ。

それも良いと思う。」


うん。

目がキマってて信用できないけど、優しい人なんだと思うよ。


「んで、兵舎だ。

おっさんが一杯でむさ苦しいが飯はでる。

勉強は文字を覚えるくらいだが、こっちは兵士としての訓練がある。


更衣室は頭がおかしくなりそうな匂いだが、身を守る方法を学べるのは大切なことだ。


この二つ以外にも生きてはいけるかも知れないがあんまりお勧めできるものじゃないな。」


その二つは想像がつくよ。

奴隷になるか、孤児になるかだ。


全寮制の進学校に行くか、軍に入るかか…。

どちらにせよ、迷うところがある。


能力の関係だ。

知能が高まって言語を覚えた事で分かったことがある。

経験は失わない、ということだ。


サンドラさんにかけた癒して文字通り死ぬほど魔力を使った結果魔力が激増した事でも分かる。

その能力を犠牲にするリソースを支払って、僕自体の性能を上げることが出来るのだ。


今僕の未来で確定していることは、サシュマジュクさんの心を救ったら一度召されてしまうことだ。


心を救うって一体なんだか分からないが、もし達成したら聖属性魔法の能力、この場合才能か、を失う。

ならば才能があるうちに魔法を学び、召された後に剣術の能力を貰って訓練してもらう方法もある。


能力を失えば神基準のとんでも才能ではなくなっても、神基準の経験は得られるのだから。


最終的には基本的な生きていくすべを身につけたら、切り札的な能力をもらって普通に生きていくことを目指そう。


神の能力なんて危ないだけだと言うことを身をもって知ってる。


前世の知識が活かせるとは考えないでおこう。

この世界のことが何も分からない今、基礎的な知識を入れながら最低限戦うことが出来る様になるのが急務だ。


「サシュマジュクさんの孤児院で勉強したいかな。

今、聖属性魔法を教えてもらってちょっと出来たんだ。

人を治せるなんて素敵だし、きちんと学んでみたい。

でも守るってことが大事なことなのもわかるから、武術も学びたいのもある。」


「だってさ、サシュマジュク様。

頼めますか、ラルフを。

剣術は俺が教えてやるさ。

ただまだ7歳のなんだろ?

あんまり先のこと考えんな。

楽しく感じることをたくさんやれ、な。」


そうだね。

これからがあるのだ。

一度途切れるのは確定してるけど、神様の言う幸せな生活を目指せる気がしてきた。


まずは魔法だ!

やる気が沸いてきたぞ!


「サシュマジュクさん、お願いします。」


このやる気に溢れた目を見よ!!


「…孤児院にはいれられないぞ?」


なんでさ!

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