第21話 ラブ
「診察で例えて言えば、知識と練度があればどこがどう悪いのかがわかる様になっていく。
どちらかに偏ってもどこら辺が悪いのか分かってもどう悪いのか分からなかったり、確実に肺を痛めていてもどの様に悪いのか分からなかったりする。
魔力量は範囲に関わるな。
少ないと手をかざしたところしかわからないし、多ければ全身が一度でわかる。
ま、診察の魔法だと、だがな。
治療になると魔力量は治せる深刻さの違いがあるし、知識がなく健康なところに治療を当て続けるとその部分が病変すると言われている。
なので、ラルフは知識と練度、量どれもきちんと学ぶと良い。
良かれと思ったことが、良い結果に必ずなるとは限らないのだから。」
人の命が関わる魔法だから、余計に気をつけないとね。
健康な箇所を治療をし続けたら病変が出来るって、病気として心当たりあるな。
頭の片隅に入れておこう。
「だからな、例えばラルフに妻が出来、子供が出来ても、自分で診察の魔法を使わない方が望ましい。
思いはやはり判断を迷わせてしまったりするからな。」
「サシュマジュクさんも奥さんとお子さんに診察とか治療をしないの?」
サシュマジュクさんが困った顔で固まった。
…おぉ、独身だったか。
偉い人なのに独身だったら、今まで面倒なことがたくさんあったんだろうな…!
「先生、お見合いなんかしても子供達がどうのとか、教育がどうのなんて言って忙しくしちゃうから独身なの。
街では有名な話なんだから。
それでラルフちゃん、先生にどこか悪いところはあった?
この人、働きすぎでいっつも難しい顔してるんだから。
みーんなに休みなさい休みなさいって毎日のようにいわれてるの。」
この辺、と鳩尾を指差すとサンドラさんは苦笑いをして、腕を組んだ。
「ほら、胃の辺りを痛めてるじゃない。
休んで下さいね、先生。」
そう言われたサシュマジュクさんは、うむと頷きこちらを振り返り僕の両肩を掴んだ。
なになに?
え?
掴む手がブルブルしてる…。
「この歳でそこまで分かるなんて天才だ!
将来はいい医者になるぞ!
な!サンドラもそう思うだろ!
そうかー
胃が悪いのがわかったかー
なー?
すごいよなー
サンドラー
みてたか?なぁ?
ラルフよ、よく魔法使えていたな。
よしよしよしよしよしよしよし….。」
…え?
サンドラさん?笑ってないで止めてよ。
どうしたのこの爺さん。
ボケた?
なでなで摩擦でハゲそうだ!
召されそう!
僕の召されやすさはすごいんだぞ!
「先生が子供褒めるところ見るの久しぶりだけど、すごいね、やっぱり。
あっは、隊長、止めなくて良いんです?」
「サシュマジュク様、そろそろやめてあげてくださいよ。
少年の頭が四角くなっちゃいますよ、せっかく命が助かったのに。
良かったな、よく無事だった。」
カルさん?
いつの間に!
良かった、元気そうだ。
サシュマジュクさんと違って深刻そうじゃない。
…いや、まてよ…
腰に下げた剣の柄頭についてる飾り…
あれあの時のランタンの破片だ。
重い!
形見は重いよ!
なんで二人してあの一瞬でそんなに思い入れちゃったんだ!
…
……
………
「ラルフは子供ですね。
不幸なんてものは愛がないと成り立たないでしょうに。」
神様が一人つぶやいた。
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