第20話 レクチャー
「なるほどな。
森の方に飛ばされていたのか。
すまんかった。
あの後大分探し回ったのだが、見つけられなかったのだ。」
サシュマジュクさんは頭を下げているけど、やめてほしい。
見つかるわけなかったんだから。
「先生も迂闊だよ。
悪魔が出たばかりだって言うのに子供を一人にして。
隊長も一緒にいたんでしょ?
二人も大人がついていてなにしてるの。
大人の責任でしょ?」
やめてあげてよ。
一言も反論しないで下をむいたままじゃない。
「僕が一人で行ったんだ。
今まで一人だったからお願いするなんて浮かばなかった。」
サシュマジュクさんが震えている…
フォローをすると心を痛めるだけみたいだ。
話題を変えよう。
「さっきサンドラさんの怪我を治したら倒れちゃって、きちんとした魔法の使い方が知りたい。教えてくれない?」
サシュマジュクさんがサンドラさんを睨んでいる。
これもこの世界では大人の責任の内なのかな?
「丁度そこに白の触媒があるな、これで教えようか。
ほら、ラルフ、握ってみなさい。
適性があれば人によるが、繋がる感覚があったり、暖かく感じたりする。
私はピリピリする感じがあるな。
…どうだ?
傷を治したのであれば適性があると思うのだが。」
んー?
ぶくぶくしてる気がするな…。
「そうか。
やはり適性がありそうだな。
そういえばラルフ、初めて見た時からみたらすごく魔力が増しているな。
何か練習したのか?」
さっき文字通り死ぬほどサンドラさんに魔力をぶち込んだ影響だろうか、初使用がスパルタすぎて魔力がぶち上がっているようだ。
でも言えないよなー。
やりすぎて死んじゃったなんて、サシュマジュクさん泡吹いて倒れちゃうよ。
「ランタンの中身がまだ燃えてたからそれを森で使ってた。
火をつけたり、捕まえた虫を焼いたりしてた。」
この世界の動物を知らないから迂闊に動物の名前なんて言えない。
子供でも捕まえられて食べられる虫と答えるしかないのだ。
「虫を…。
そうか、頑張ったのだな。
火の適性もあると言うことだな。
よかったな、火と水は適性があるものがほとんどだが、無かったら不便だ。
さて、実際行使してみようか。」
白の触媒をぎゅっと握りしめ、魔力を通す。
ぶくぶくしてる感じが広がった気がする。
丁度泡の出る入浴剤を手で握った時の感じだ。
ここからどうしたらいいんだ。
お風呂に入れれば良いのか。
サシュマジュクさんが右手を差し出して、触媒を握っているのと逆の手を握った。
「ここからは知識と技量によるが、相手の体内の様子がわかる様になる。
これが初歩だな、診察の魔法だ。」
ふむ…!
前世の記憶が初めて役に立った気がする。
人体の内臓の位置がわかるのがなかなかのアドバンテージのようだ。
悪いところがはっきりわかる。
サシュマジュクさん、胃が荒れすぎているよ。
ストレスだろうな…。
うちの神様がごめんね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます