第19話 慣れたもので

…死因は?


「おや、慣れたもんですね。

ダメですよ。

触媒もなしに魔法なんて使っちゃ。

貴方の世界はなかったんですか?力の法則とかの教育は。

癒しの力は厳密には魔法じゃないんですけどね…。

無から何かを生み出すのなんて途轍もないエネルギーが必要なんです。

それこそ、宇宙が誕生するくらいの。」


あるよ。

質量保存の法則とかでしょ。

詳しくはないけどあるのは知ってるよ。


「魔法っていうのは、触媒の力を増幅して使うものなんです。

私は神ですからその辺踏み倒してますが、魔法じゃなくたって代償はあります。

体を動かせばお腹が減るし、人を癒せば命が減ります。

貴方は聖なる力、心のエネルギーを使う癒しの力だから自分の命を燃やし尽くして死ぬだけで済んだものの、無から石なんて生み出したら大変なことになってましたよ。」


触媒ってあれ?

あのペンダントみたいなやつ。


「それですね。

ダメですよ。

癒しの力は白の触媒使ってやらないと。」


知らないよ!

魔法ってそこまで自由じゃないのね。

それはそうか。

無制限に使えると星ごとおかしくなっちゃうし、そのエネルギーはどこから来たものなのって話になっちゃうよね。


人間の力を燃焼させて、火種をおおきくしているだけなのか。


「さぁ、今回はゆっくりしてられませんよ。

サシュマジュクとサンドラにトラウマを植えつけに生き返ったわけではないのでしょう。


次の能力は聖属性魔法です。

本当は魔法という括りで渡したいところですが、全属性一気に無駄になったら目も当てられませんからね。


発動してしまった魔法と似た力で誤魔化しましょう。

回復もできるし、サシュマジュクがやったみたいに白い炎を爆発させることができますよ。

時間がないですね。

それではいってらっしゃい。」


早口!

だから初めに解説してくれ…!


「気づいたかい?

ダメだよ、訓練もなく魔法なんて使っちゃ。

死んだかと思ったんだから。

先生の机に偶然白の触媒があって、それが反応したみたいだよ。

それが無かったらあなた、確実に死んでたんだから。」


…なんか誤魔化せる状況が出来てる。

神様が白の触媒を気付かれないように置いてくれたのかな。


「ごめんなさい。

知らなかったんだ。

もうしない。」


「いいよ。

わたしの為にやってくれたんだ。

あまり叱る気にはならない。

でもね、心配はするよ。

心配する人がいることだけは覚えてなきゃいけないよ。」


本当にそうだね。


「僕はどのくらい寝てたの?」


「2、30分でとこかね」


そっか…

そんなもんか…

なんで気を失う前より髭が伸びて見えるんだ…。


伸びてる髭の不思議を解き明かそうと、じっとサンドラさんを見つめていたら背後のドアが開いた。


「待たせたな。

おや、サンドラじゃないか。

よく来た。久しぶりだな。


…君は…。無事だったのか。

そうか…。」


サシュマジュクさんは僕を強く抱きしめた。

そんなに思い詰めていたのか。

悪いことしたな…って神様が思ってくれてたらいいな。


「なに、なに?

先生どうしたのさ、その子と何かあったの?

珍しいじゃない。

そんな先生初めて見たよ。


何したのさラルフちゃん。」


簡単に説明するのは難しいな…。


とりあえずその広げた両手は下げてください。

ハグはしません。

髭の獣の懐には入りません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る