第18話 獣と学校へ
おねーさんの様なおにーさん改め、獣と街を歩き学校へとたどり着いた僕たちは、校門横の警備室へ訪ねた。
「こんにちは。
ウチの隊長か、サシュマジュク様います?
前に二人が探してた子供らしき人が外門に来たから連れてきたのだけれど。」
「サンドラさん、こんにちは。
サシュマジュク様なら今授業中ですね。
訪問客の為に学園内の私室を開放して頂いているので、そこでお待ちいただければ。
カルさんも最近、子供たちの剣術の先生をやってくれているのでいらっしゃるかも知れませんね。
外部講師なのでそっちは把握していないので、いればカルさんもサシュマジュク様の私室へ案内しておきますよ。」
この獣はサンドラさんと言うのか。
「ありがとね。
さ、行くよ。」
何もなく通してもらい、園内を進む。
この時間はあまり人が歩いている様子はないな。
遠くで揃った声が聞こえるから、さっき言っていた剣術の練習を行っているのかも知れない。
「ありがとね。
サンドラさん、お仕事は大丈夫?
場所を教えてくれたら一人で行けるよ、僕。」
「お気遣いありがと。
そういえばお名前聞いてなかったね。
何て言うの?お年は?」
「ラルフ。
7歳だよ。」
「ラルフちゃんね。
わたしはサンドラ。
18歳になったばっかりなの。
よろしくね。」
18?
嘘だろ?
ひげもじゃすぎるよ。
「あら、やっぱり今は授業中みたいだね。
ほら、あの建物が先生の部屋なんだけど、ドアに緑の布が掛けられているでしょ。
あれでどこに居るか大体わかる様になっているの。
赤だったらもう帰っちゃってて、青だったら室内にいるとかね。」
来客が多いからシステム化したのかな?
しかしなんでこんなに入り口に近いところに園長室があるんだ…。
普通一番奥まってるところにしないかな。
「普通は一番奥にするんだろうけど、先生が反対してね。
先生を訪ねてくる人が、無闇に子供に触れない様にすることと、危ない人が入って来た時に子供の後に部屋があったら守れないからってそうしたんだって。」
強い魔法使いらしいもんな。
あんなに不機嫌そうなのに子供を守る気持ちがすごく強い。
きっといい先生なのだろう。
「さ、部屋に入ってて良いみたいだから中で待たせてもらいましょ。
わたしはここの出身だから、慣れたものよ。
お茶とお菓子のありかだって知っているんだから。」
部屋に入り示されるままソファに座り、お菓子を貰った。
サンドラさんがお茶を淹れてくれた時にやっぱり魔法で水を出していた。
じっと見ているとサンドラさんは、何か珍しい?と言ってくれた。
「魔法をちゃんとみるのが初めてなんだ。
遠くで撃ってるのは見たことがあるけど、どう言う仕組みなのか全然わからない。」
小指を上に向け野球ボールほどの水の玉が浮いている。
「どんな生活してたの?
あなた。
使い方なんか教えるのは先生の方が上手だけど…。
そうね。
これわかる?」
サンドラさんは首から下げたペンダントを見せてくれた。
小さな光が赤と青に灯っている、二つの石が付いている。
「これを触媒にしてね、魔力で操作すると魔法が出るの。
赤いのが火、青いのが水の触媒だよ。
他にも緑色で風のやつとか、茶色いので土のやつとか沢山あるよ。」
はぇー
ちょっとだけ認識が違ってたな。
自由に手から出るもんだと思ってた。
種があってそれを大きくしたり、飛ばしたり操る感じなのか。
「先生に教えてもらったらあなたにもすぐ出来る様になると思うよ? 」
そうなのか…。
楽しみだな。
そう言えば僕も一つだけ使える様になった魔法があるな。
「サンドラさん、怪我してない?」
誰かを癒す力を貰ったのだ。
ここまで案内してくれたお礼にサンドラさんを癒してあげたい。
「よく分かったね。
この間の訓練の時に右手を痛めたのと、肋骨にヒビが入ってるよ。
あと今朝髭剃った時に首のところ少し切っちゃって。」
見える?と少し上を向いてくれるサンドラさん。
いや…朝ヒゲ剃っていまそのひげもじゃなの?
目視出来るスピードで伸びてるでしょ…。
訓練ってそんなに激しくやってるんだ。
確かに表に出てる右手は青くなっているところがある。
みんなを守るって、普段から大変なんだな。
僕は右手をサンドラさんへ向けて構えた。
「サンドラさん、案内してくれたお礼に僕が治してあげるよ。」
右手が光始め、サンドラさんの怪我が治って行く。
一瞬で手の青くなっているところは治ったみたいだ。
「ちょっと!?あなた!ラルフちゃん?」
他の怪我も治ったかな?
と頭に浮かべた瞬間僕の目の前は真っ白になった。
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