第16話 自分のためではなく

今回は祭壇前からか…。

出現の瞬間を人目に晒せ無いってことなのかな?


今回は明確にやる事がある。

サシュマジュクさんの心を穏やかにする事だ。


出来れば能力を試してから行きたいけど、あいにく怪我とかはない。

腕についた模様は消えていて、薄汚れているくらいで傷なんかはない。

今回はこれで丁度いいかもしれない。

目を覚ましたら教会の周りの森にいて、木の実なんかを食べていたことにしよう。

足を重点的に身体中を土で汚してから、僕は街の方へ歩き出した。


…これか肉片って。

カリカリに乾燥しているけど、知ってたらわかる。

普通消えて無くならない?

自分のだし結構気持ち悪いけど、幽霊とかは出ないことだけはわかる。

本人ここにいるし。

少なくとも2回はここら辺で弾け飛んでるからな…。


門の近くには小さなクレーターもある。

サシュマジュクさんの魔法が炸裂したとこらその1だな…。

その2は教会の横にちゃんと残っていた。


門のところには二人の兵士が立っている。


カルさんはいないようだ。

ちゃんと話してみたかったんだけどな。


勝手に入っていいものかもじもじしていると、右側の男の人が話しかけてくれた。


「どうした坊主?

…ボロボロじゃないか。

孤児か?教会まで案内してやろうか?」


…教会って街の中にもあるのか。

なんであんな外れにもあるんだろう。

そのうち誰かに聞いてみたいな。


「サシュマジュクっておじいさんにあいたい。」


「サシュマジュク…?

あぁ!先生のことかな?

あのちょっど恐い感じの白い髪の人だろ!」


そうですそうです。

大人から見ても恐い感じなんだね。


「あなた、先生が探していた子じゃない?

先輩、ほら、カルさんと先生がちょっと前にこのくらいの歳でクリーム色の髪の子供が来てないか聞いていたでしょ?

この子だよ、きっと。」


「あー!

お前が対応してたな。

先生に直接師事してないから俺はちゃんと聞いてなかったんだよ。

正式な依頼とかではなかったしな。」


探されていたのか。

死体を見つけたり出来る状況じゃ無かったもんな。


「わたしが連れていってあげる。

でもちょっと待っててもらっていい?

引き継ぎをするから。」


僕はもちろん異論なんてないさ。

こくこく頷く僕を撫でて、門の横にある詰め所へ入って行った。


「坊主が探されてたのって結構前だろ?

今までどうしてたんだ?

ほら、これ食うか?

干した果物だけど甘くてうまいぞ。」


ありがとう。

黄色いドライフルーツだ。

噛むとすごく甘い、どこかで食べた様な初めて食べる様な不思議な感じだ。

僕はもぐもぐしながら丘の上の教会を指差した。


「果物ありがと。

気がついたらあそこの森にいて、木の実とかたべてた。」


「そっか…。

大変だったな。

あそこって結構獣もいるし、大人ならまだしも子供でよく無事だったな。」


そうなんだ。

知らなかったし嘘だからな…。

もぐもぐしながらコクコクと頷くことしかできない。


「お待たせ。

引き継ぎも終わったし、連れてってあげる。

おいで。」


そんなことを言いながら出てきた、兜を脱いだ彼女を見た瞬間、ギョッとして固まってしまった。


「ほら、お前やっぱびっくりさせるって。」


「そんなこと言われても先輩。

今更変えられないですって、わたしの家はみんなこんな感じなんだから。」


…おねーさんかと思ってたらひげもじゃのおにーさんだった。

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