サシュマジュクとおまけでサンドラ
第15話 可哀想なおじいさん
「死んでしまいましたか…。
しかし今回は許容していたので、まだいいですかね。
彼ら2人に名前がない事が認知されてから死んだのもよかったです。
これで名前を変える事ができますよ。」
…それは良かったよ…。
僕は死ぬことに慣れてきていた。
死んだとしても神様の元に戻ってくるだけだし、ここまで誰とも関わりが無かったからっていうのもある。
でも慣れていたのは自分が死ぬことで、僕が死んだことを悲しむ人が居る、それがこんなに辛いことだとは思わなかった。
僕は今、キルカメラでサシュマジュクさんを追っている。
神様のいる空間は時間の流れが違うのか、僕が死んだ後をダイジェストで見ている様な感覚だ。
彼は普段、校長の様な仕事をしているが、最低1日1コマ授業も行うし、放課後に生徒たちで開かれている研究室に顔をだしたり、嘆願をもって会議に参加したり忙しそうだ。
「サシュマジュク様、最近あまりにお忙しくし過ぎてはいませんか。
会議などは私も参加出来ますから、少し休んで下さい。」
そんな心配をされる姿を見たのも一度や二度ではない。
彼はその度に、少し忙しくしているくらいが丁度いいと答えていた。
夜になると部屋で一人になり、お酒を一杯作り、ゆっくり祈ってから飲み、何かを考えてからベッドへ入る。
5日に一度ほどのペースで教会へ行き、軽く掃除をしてから祭壇へ祈りを捧げてから、現在は崩れてしまった、裏の泉がある洞窟へと向かい、ゆっくり祈ってから帰宅する。
真摯に祈りすぎてみるみる痩せいっている気さえする。
…見てられない!
すごく引きずってしまってるじゃない!
「貴方に授けた不幸の能力は他人に影響を与える様なものではなかったのですが、他人の不幸に心を痛めてしまう善良な方は傷ついてしまうのですね。」
色々誤解とか無駄な深読みとか、斜め上の発想で器用に同情していたけど、僕と神様とこの世界に生きる人たちの常識や文化が違うんだからそれは仕方がない。
仕方がないが、どうにかしたい気持ちが日に日に強くなる。
優しくてちょっとお堅いけどいいおじいちゃんなんだよ。
あんなちょっとしか関わっていない僕に同情してこんなに傷つく人を、ちょっと手助けしたいと思うのは普通のことだろう。
「神様、一緒に考えてよ。
敬虔な信者を救ってこその神様でしょ。」
「ええ。直接救うことは出来ませんが貴方に能力を与えて、間接的に接することは出来ますね。
ラルフ、これは私からのお願いでもあります。
共に救いましょう。」
その瞬間身体が光った。
なにこれ…!
「あ。」
え?
「私がラルフと呼んだことで、命名がラルフに正式に決まりました。」
えっ?
「まぁ、これは問題ないでしょう。
この世界で本当にありふれた名前ですからね。
前世でもあったでしょう。
聖人から名前をもらってマイケルさんとか。
神様だって貴方のために地上の文化を学んだんですよ。」
今までよく知らんかったのにあんな名前付けたのか…。
地上のことも詳しいです感出してたのに、全然分からなかったから身長を452cmにしたりしてたのか。
でも今回名前で困ることは本当に無さそうだ。
「奇跡的に助かったことにして、顔を見せるだけでいくらか救いにはなるでしょう。
今回はどんな能力にしますか?」
そうだな…。
癒しの力が欲しいな。
やつれたおじいちゃんなんでみたくないよ。
「優しい子ですね。
わかりました。
貴方に癒しの力を与えましょう。」
よし、今回はすぐ死ぬわけにはいかない。
せめてサシュマジュクさんを癒して、出来ればそのまま幸せに過ごしたいものだ。
「無理ですよ?
今回は名付けと共に依頼をしてしまったことで、私の使徒や天使の様な扱いになってしまいました。
いやー!ついつい、あっ、て声に出ちゃいましたね。」
神様と医者の
「あっ」
は許されないんだよ!
天使?
天使ってなんだ?
「役目を終えると自動的に召されますね。」
…やる気を削ぐ様なこと言わないでよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます