第13話 不幸とは その1
目を開けづらい…
とっくに意識は取り戻しているけど、僕の頭を撫でながらオイオイ泣くおじいさんを前に自然に起きる方法が分からない。
「この子…すごく魔力が少ないですね。
なにもしなくても感じ取れるくらいです。
訓練を全くしないで育つと少なくなると聞きますが、ここまで少ないのは…。」
「効率的な成長を促すのが訓練だ。
効率的ではなくとも成長はする。
孤児も魔力が少ないと言われているが、親から自然と行われる訓練がない事が原因だと思っている。
カル、君も幼い頃から暖炉の火付やカメに水を汲む為に体を強くしたりしなかったか?
当たり前にやっていた事だろうが、それも訓練だ。
親が面倒なことを子供に任せている部分もあるがな。」
すごい鼻声だけど、為になる…。
前世だって手伝いながら学んだこともあるし、家業がある家庭は余計そうだろう。
「孤児だって生きていくのに魔法を使う事が必要で、生活がそのまま訓練になる。
しかし親が教えてくれたりするよりも大分効率は落ちるだろうな。
生きていくことを考えなくてはならないのも大きい負担だろう。」
カルが渋い顔をする。
「つまり…。
この子は…。」
生まれたばかりなんです!
「あぁ…。
この子の顔を見てみろ。」
「汚れては居ますし、呪われた紋様が不気味な印象を与えますが…。
顔立ち自体は凄く綺麗ですね…。
普通に生まれていたら幸せな生活も出来たでしょうね。」
「そうか…。
その様な印象になるのだな。
私を含め神職者は皆違う答えをいうだろう。
この子はな、原典のラルフィールド様にそっくりなのだ。
敬愛し、毎朝祈る像にとてもよく似ている。」
なんだって!
「なんですって。」
被った!
「使える…と思ったのだろうな。
カルが想像した通り監禁されていたのだろう。
この歳になるまで…。
産まれてから最近まで…
いや、この子が悪魔の儀式の生贄になるまでな!」
…ちがうよ?
生贄にはなってないけど、エライ目にはあってるか。
でもそれはあなたの敬愛する神様が原因なものもあるよ?
「虫唾が走る!」
びっくりした!
どちらかというとよく通るけど、声を張る様な事がないサシュマジュクさんが凄く大きな声を耳元で出すから、ビクッとしてしまった。
「気がついたか。
良かった…。
悪魔付きになった者はそのまま死んでしまうことも多いのだ。」
「たす…けてくれた?
ごめ、なさ」
知能ドーピングで無理やり覚えた言語だ。
全然身についていなく、なんとか話す事が出来るが、たとたどしくなってしまう。
介抱してくれました?って言いたいのだけど、適当な単語がわからない。
なんか咄嗟に謝ってしまった。
「いいのだ。
…ここに君を害する者はいない。
安心してくれ。」
初めて目を開けてサシュマジュクさんを見ると、想像の8倍泣いてた。
ギョッとして固まっていると、もう一人のカルさん?が話しかけてくれた。
「こんにちは、俺はカルロスって言うんだ。
君の名前を教えてもらっていいかな?」
カルさんはカルロスさんなんだね
名前?
…今は無いんだよね?
説明されたことを噛み砕くと、名前を認識している人を増やすのはよく無い気がする。
「なまえ、ない。
まえはあったけど、いまない。」
おぉ…と言いながらカルロスさんまで涙目になって上を向いてしまった。
大人が勘違いで泣いてるのは心に来る物があるな…。
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