第5話 次の能力


はい、いつもの祭壇の前です。

今回は無難にしました。

力です。パワーを凄くしてもらいました。


これなら宇宙に吹っ飛んでいくこともないし、力があって不便なことなんてないと思って力を望んだのだった。


転生して計32秒で2回も宇宙に射出されれば学ぶってもんだ。


立ち上がり教会から出て行こうとした時に違和感に気がついた。

…ドアが小さい。

小さくない?

2メートル程の高さだったと思ったが少し屈まないとくぐれない。


思い返してもここには鏡のようなものはないし、32秒しか活動してないので前回前々回の自分の容姿はわからない。


それでも違和感感じられるほどハッキリとドアが小さかった。

そしてドアノブに伸ばした手は信じられないほどゴツく、そこからみえる前腕と上腕は筋張っているとかいう次元を超えており、前世で観た伝説的ボディビルダーなんて目じゃないほど太く、逞しく、人間を辞めていた。


「これは…あれか…。

単純な力を望んだからデカくなったのか?

上にも横にも…。

身長は何センチくらいなんだろう…。」


前世では170cmそこそこで痩せ型だったので、違和感がすごい。


でも…まぁ…これでやっと人の居るところへいけるな。力仕事はやっていけそうだし、兵士が居るようだからそっちの試験とかあったら受けてみようかな。


ドアノブを握って扉を開けようとしたとき、この肉体の本質に気がついた。


ドアノブは手の形にクシャクシャに潰れ、軽く押した硬そうな木製のドアは粉々に砕け散ったのだ。


「嘘だろ…。」


やっていけるのか…?

本当に人里で…。

振り返ると前回も今回もやり過ぎなんだよあの神様。

目に写らないは比喩だし今回も人よりはってその程度の願いで、こんな落ちてる石を親指と人差し指で海の砂よりサラサラにできる様なパワーを望んだわけじゃない。


…話せばわかるか。

そんなに凶暴な性質じゃないしね、僕は。


一歩歩くたびにズンッと地響きを鳴らしながら過去最高にこの世界を楽しんだ。


この坂は前回射出されて歩けなかったな、とか

この鐘楼は遠目に漆喰の白い壁に見えてたけど意外とツルツルしてるな、とか。


言ってて悲しくなってきた。

こんなに上手くいかない転生あるのだろうか。

僕の要領が悪いのか、あの人の良さそうな神様のせいなのか。

でも神様はお願いした通りにやってくれてはいるんだよなぁ。


ズンズン(足音)と木に止まる鳥を羽ばたかせ、木の実を落としながら進んでいくと遠目に城下町の門が見えて来た。

教会は郊外にあって街の外だったのね、と思いながら遠くから見ていた兵士たちを見ると、なにやらこっちを指して慌てた様子だった。


後ろから何か来てるのか?


振り返っても何もいないが僕はこの世界の情報を何も知らないのだ。

もしかしたら凶暴なドラゴンとかが迫って来ているのかもしれないと思い、城門に向かい全力疾走を始めた。


…怖い。

でもこの身体すごく速く走れる気がする。

ぐんぐんと城門が近づいて来ており、大声なら届きそうな程に近づいて来た。


助けてもらおうと思い手を開けながら

「オーイ!!」

と力の限り叫んぶと門からもよくわからない言語の声が聞こえて来た。


魔法の詠唱か?助かった!そう思った時目の前が真っ白になった。


気づいたら神様の前に居たのだった。

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