第6話 武器の強さは間合いの遠さ
俺が離れ牢に呑まれ、そろそろ一時間。
虚の剣が刺さっていた部屋と同等の広さを持つ空間に出た瞬間、それが目に入った。
「ビンゴ」
広間の中心に浮かぶ、金色の輝きを帯びた、歪な菱形の岩。
なんというあからさまなスタイル。どう考えてもアレが
もし違ってたら出るとこ出てやるぞってレベル。紛らわしすぎる。
〈aaaa〉
〈aa──〉
〈aaaaaaaa〉
そして当然、その周囲には片手の指を埋めてなお余る数の天使たち。
いずれも今まで遭遇した連中と同じ最下級、第九位の
「ッ」
両腕が剣ではない個体が居た。
内訳は七体のうち二。いずれも左腕は指先の尖った、人のそれに近い手。
そして右腕は、矢が番えられたクロスボウ。
「や、べ」
鏃がこちらに向けられていると視認した瞬間、考えるよりも早くサイドステップ。
俺の心臓があった位置を灰色の矢が貫いたのは、そのコンマ数秒後。
「ッッ……!」
助かった、と胸を撫で下ろす暇も無く、間髪容れず放たれる二の矢。
体勢が悪く、避けるのは無理だと判断し、魔剣を盾がわりに防ぐ。
衝撃で大きくのけぞらされ、二歩三歩たたらを踏んだ。
──お、もっ。
矢と言うよりライフル弾。ヒグマとかを一撃で仕留められるようなやつ。
尋常な人間の数倍に及ぶ身体能力を持つ
こんな代物、そうそう何度も凌ぎ続けられやしない。
クロスボウ持ちを最優先で排除すべく、身構える。
しかし、残る五体の剣持ちが、進路を遮るように押し寄せてきた。
「チィッ」
剣持ち
五体同時に迫ってこようと、各個撃破はそこまで難しい話ではなかった。
けれど、後衛にクロスボウが控えているとなったら話は別。
遮蔽物の無い広間は飛び道具に打って付けの環境。
多数に囲まれた状況で回避或いは防御に一手を強制されたら、そのまま袋叩きだ。
と言うか、クロスボウ持ちが剣持ちの接近まで射撃を待っていたら既にそうなってた。
反射的に獲物を攻撃するだけの、昆虫同然な知能しか無い連中で本当に助かった。
〈aaaa〉
〈aaaaaaaa〉
〈aaaaaaaaaaaa〉
連携も何もあったものではない剣持ち五体を捌きつつ、クロスボウ持ちの様子を確認。
金属の軋む音を響かせながら、ちょっとしたロープ並みに太い弦を引いている。
あれだけの張力だ。再装填まで、あと十秒は必要な筈。
〈aaaa──〉
「ぐ、鬱陶、しいっ!」
俺と
が、未だ
つまり剣持ちを振り切ってクロスボウ持ちへと肉薄し、即座に仕留めるのは無理筋。
かと言って十秒足らずで剣持ち五体全て打ち倒す、なんて選択肢も現実的ではない。
「ああ、くそ……こうなったら……!」
少しばかり危ない橋を渡る羽目になってしまうが、生憎と他に有効な手を思いつかん。
一か八か──『
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