クレア、騎士団にいく。
朝起きると目の前がなんか仄暗い、でもなんか安心する。
「んぇ、、、」
「あら、クレア。起きたのね、甘えん坊さんね」
上から母エリスの声がして徐々に頭が覚醒していく。
「まま、おはよう」
前世では忙しくて甘えられなかったお母さん。お父さんが死んでからは二人でいきなきゃいけなかったからこうして甘えてしまう、もうずっと甘えん坊でいいなぁ。
「クレアったら服の中に入るの好きね、」
「ままのおなかにくっつくの好き」
「ほんとっ可愛いわねぇ。愛してるわ」
「わたしもまま、大好きっ!!」
そうして、母エリスといちゃいちゃしながら、朝の用意をする。
ーーーーー
ーーー
ー
「クレア、今日はどうするんだい?」
父ギルから今日の予定を聞かれる。えっと、今日はヴァンとジークのとこにいこうかな。
「今日はヴァンのとこにいくよー。」
「ヴァン、騎士団に行くのかい?」
騎士団の名前を出した途端、父ギルとギランからの視線がちょっと強くなった気がする。まだバレてるはずはないよね、大丈夫。そう言い聞かせるようにままに視線を戻す。
「うん」
「じゃあ、クレア。騎士団の後はママと一緒にお散歩しましょうね。」
「うんっ!」
父ギルからの訝し気な視線から逃げるように朝食を食べ、朝の支度を終えると騎士団の宿舎に向かう。
ーーーーー
ーーー
ー
騎士団へと歩いていくと、訓練場から聞こえる激しさを感じさせる金属を散らせるような音。そうして門の騎士に挨拶をすると、
「こんにちは。ジークかヴァンいる?」
「こんにちはお嬢様。今日はジークがいらっしゃいます。それと、シャロン様が会いたがっておりました。」
「シャロンが?わかった、いくね。ありがと」
「ではっ、」
精錬された敬礼を見せる騎士の一人がジークのもとが案内する。すれ違う騎士の強さや装備を確認しながら、歩いていく。
「ここです。団長、お嬢様がいらしていますよ!」
「入れ」
「では、私はここで」
「うん、ありがと」
ジークの返事が聞こえたので団長室に入ると机の上に山積みになった紙束に埋もれながら作業しているジークを見つける。
「ジークっ!!」
ジークに向かって駆けていくと、吊り上がった黒い瞳が少し緩み身体をこちらに向けてくれる。そうして、ジークの膝に座ると、
「クレア様、いつも装備の提供と盗賊の対処、ありがとうございます。」
「いーのいーの。最後は騎士の人に任せちゃってるから申し訳ないよ」
「それでも、アーティカの領民はクレア様のおかげで助かっております。」
「それで、どんな感じ?」
「恐らくですが、主にカルディラ戦争の敗残兵が集結していると思われます。」
「カルディラ戦争...メリノス公爵家とスフィラ辺境伯家は?」
「辺境伯家は隣国ナーラ国との国境地域の調停のために奔走していますが、彼らのほとんどはどうやらニーファ山脈から来ているようです。」
「ニーファ山脈ってことは、東部...ノーディス家かぁ。あんまりいい噂聞かないよね。」
ノーディス伯爵家、今の当主のロンドは安泰ではあるが嫡男のレントは結構なクズらしい。女好きで浪費家。いいとこ探すとしたら家格だけ?なのかな。父ギルも代替わりした際には関係を見直すって言ってたし、もしかしたら?ってのが拭えない。
「ノーディス家を探ってみよう。もしかしたら、第二のカルディラ戦争が起きるかもしれない。」
「第二のって、お嬢様。それは、あまりにも。」
「大丈夫。うちのを使うから安心して。調べた結果はジークに渡すね。」
信じたくはない。けど、ここ最近の盗賊は違和感があった。盗賊団って感じじゃなくて盗賊隊って感じ。明らかに集団戦に慣れていた。今のうちに討てるだけ討たないとアーティカ領にまで被害が及ぶ。
「承知しました。あぁ、それと、シャロン様が会いたがっていましたよ。」
「シャロン、シャロンね。うん、行ってくる。またねっジーク」
そうして、団長室から出ると、本部地下の空き部屋、通称[盗賊庫]。地下に行くと、若干の鉄の匂い。そうして盗賊庫を開けると、
「クレア様~」
目の前が何かに塞がれて息、息が...
「ああ、クレア様?しっかりしてくださいっ!!」
私が作った始めのホムンクルス:シャロン。趣味全開で作ったせいで騎士団内でも不動の人気を得ているシャロン。だけど、その仕事内容のせいで敬遠されがちである。
「私に会いたがってたって聞いたけど、どうしたの?」
「聞いてくださいよ~、最近量が増えたじゃないですか~。この仕事一人じゃ厳しいなって。もう一人欲しいなって、お願いです。」
あぁ、そっか。確かに盗賊は増えてる。だから私の夜遊びも結構増えちゃってて寝不足気味。可愛い我が娘のお願いだしなぁ。
「うん、わかった。一人つくるね。どんな子がいい?」
「ん~っとね。ギルドのセレナさんみたいな人?かっこいいし」
「セレナさんか、わかった。モデルとしてつくってみる」
クールな眼鏡美少女って感じでつくるか。
「二日待ってほしい。あ、能力的はどう?困ってない?」
「情報量が増えちゃって、ちょっときついかな~」
「おっけー、じゃあ、ちょっと奥で作業するから待ってて」
「ありがとっ‼」
情報量の拡張か。この盗賊庫には私が許可した人しか干渉できないようにしてある。それに応じて、そして、空間の[情報庫]の部分を拡張をすることでより多くの外部から持ち込まれる情報にも対応できるようになる。つまり、より多くの盗賊らを一回で盗賊庫に転送できる。シャロンはこの空間内の管理と私の収納庫、私の空間に関した管理をお願いしている。
「(更なる空間の拡張...細分化して負荷と効率を維持できる部分まで落とし込む...盗賊ら生き物の転移する道、魔物素材、余剰空間を三つまでいけるかな?後は適切な量の魔力を注いで)」
新たな空間の創造と分割による空間操作によって岩が割れるような亀裂が入り始める。それに応じて、割れるような甲高い音もし始め、シャロンは外部への影響を減らすために全力で空間に干渉する。
「(やばいよ、マスター。これはあまりにも多い...)」
「ふぅ...できたぁあああああ‼‼あぁ~疲れたぁ」
「く、クレア様お疲れ様です。こんなに拡張してもらえるとはとてもありがたいです。おぉっと、、、クレア様?」
やっばい、魔力使いすぎた。私のバカみたいに多い魔力を注いですらギリギリなんて。体内の魔力が減ってきた...。この空間魔素を空間維持に注いでいるからあんまり回復しないんだよなぁ。
「ほら、クレア様。少しお休みください。」
「あぁ、ありがと、シャロン。」
シャロンにもたれかかると抱き上げられて、そのまま運ばれていく。
「では、お屋敷までいくのでゆっくりお休みくださいね。」
「うん、おねがい...」
シャロンが屋敷に連れ帰った時の母エリスへの説明(誤魔化し)が一番大変だった。
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