第2話 秘密の書2
「ニコちゃんって、最近髪の毛下ろして来る日が増えたよね?今日も寝ぐせ付いてないし」
「えぇっ?そうかな?」
親友の
今週は音楽室の掃除当番で、3人でするんだけど、もう一人は男子で、廊下に出されてある古い机を倉庫に運んでくれている。だから、私と璃々ちゃんは二人で中を掃除していた。
「だって、いつもは寝ぐせを誤魔化すために、一つにまとめてるでしょ。めんどくさがり屋のニコちゃんが髪の毛下ろす時って、好きな人が出きた時なんだよねぇ。で、誰が好きなの?」
璃々ちゃんはピッタリと私の隣にくっついて、興味津々の顔で聞いてくる。
「何言ってるの?好きな人なんていないよ」
音楽室に二人しかいない事は知っているのに、私は思わず、周りを見渡した。
「ウソ。ニコちゃんは思ってる事が顔と態度に直ぐ出ちゃうから、分かるもん。今、恋しているって」
璃々ちゃんが言う通り、私は隠し事が出来ないタイプで、ウソをついたところで、直ぐにバレる。
それが分かっていながら、璃々ちゃんに正直に話せないのは、好きになった相手が、学年で一番カッコイイ、
新型コロナの感染対策でマスクをしていた時は気が付かなかったけれど、マスクをとった甲斐君の素顔は、記憶にあった甲斐君の素顔よりずっとカッコよくて、自然と目で追ってしまっているうちに、好きになっちゃったんだ。
見た目も、性格も、女の子らしいとは程遠い私は、魁君を好きだと言っている女子たちの中でも、恋が実る可能性が一番低いことは分かっている。
だって、魁君が好きなタイプは、可愛くて、優しくて、女の子らしい、璃々ちゃんみたみたいな女の子なのだ。
璃々ちゃんは、いつも髪の毛を可愛く括って来てるし、お洋服も、ピンクや水色みたいな淡い色が多くて可愛い。それに、人の変化にすぐ気が付いて、今みたいに気になる事を聞くだけじゃ無くて、困ってる人とか、怒ってる人とかにも声を掛けて、助けてあげる、天使みたいな女の子。
璃々ちゃんが魁君を好きになったのなら、恋が実る可能性は高いだろうけど、私なんて…。
でも、親友の璃々ちゃんに隠し通せる自信は無くて、私はあっさり白状することを決めたが、最後のあがきは忘れない。
「私が教えたら、璃々ちゃんも好きな人教えてくれる?」
私達は二人しかいないのに、内緒話の声で話をする。
「もちろん。で、誰?」
璃々ちゃんの言葉を信じて、頬っぺたが赤くなるくらい体温を上げて囁いた。
「あのね。
「えっ?ホント?ホントに魁君が好きなの?」
璃々ちゃんは目を丸くして驚きながら、大きな声で復唱する。
「シー!シー!声が大きいよ」
「お前ら遊んでないで、掃除しろよ」
慌てている私を睨むように、同じ班の男子、
「あっ、ごめん。ちゃんとする」
璃々ちゃんは、私と青空君を交互に見ながら謝って、箒を動かした。
「聞かれた。絶対に聞かれたよぉ」
私は泣きそうになりながら、小声で璃々ちゃんに訴える。
「きっと大丈夫だよ。もし聞こえてたら、青空君なら真っ先にからかってくるから」
確かに、青空君は隠していることをここぞとばかりにいじって来る、少々ウザい男子。ついこの前も、寝坊した上に、寝ぐせを誤魔化してひとまとめにした髪を見て、「ニコの髪は、括ってても寝ぐせがついてるの分かるよな」と言ってからかわれたところだ。それさえなければ、意外と優しいところもあるんだけど。今日も不要になった机を率先して倉庫に運んでくれてたし。
様子を伺うように、後ろに下げた机を元に戻している青空君を見た。
ちょうど顔を上げた青空君と目が合うと、青空君はじっと私を見た。
その顔は、「魁がニコなんて好きになるわけ無いだろ、身の程を知れ、バーカ」と言っているようにしか見えなくて、私は耐えられずに、目を逸らして心の中で言い返した。
魁君が私の事を好きになってくれるなんて思って無いよ!片思いだっていいじゃない!
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