デート??
「ふぅ、緊張するわね」
やっと莉子と一緒に出かける日がやってきた。
昨日約束したばかりだけど、長く感じた。
もうすでに待ち合わせ場所の駅にはついてるけど、11時ぴったりになっても莉子はまだ来てないらしい。
何かあったのか心配になり、LINEを開く文字を打ちかけてはやめてを繰り返す。
(...心配しすぎかしら)
しつこいって思われると嫌だしもう少し待ってみよう。
数分経った頃に莉子らしき女の子がこちらに走ってくる姿が見えた。
「ごめんなさい。遅れてしまって」
「いえ、大丈夫よ。遅延でもした?」
「ん、ちょっと服を選んでたら時間かかって...」
恥ずかしそうに俯いてしまう姿がやっぱり可愛い。
今日のために時間ギリギリまで服を選んできて正解だった。
「実は、私も今日時間ギリギリだったの」
「そうなんですか?」
「ええ、私も楽しみで今日のために気合を入れて選んできたのよ。変じゃない?」
今日の服装はVネックの白いワンピースを着ることにした。
普段は黒系しか着てないからこそ逆に清楚な色をきてギャップ狙う。
「すごく綺麗です...いつもの黒も綺麗だけど、白だと可愛さも出てて...」
「ふふ、ありがと。莉子も珍しい服装ね、可愛くてドキッとしちゃった」
莉子はお店に来る時、ロングジャケットを羽織り、中にワンピースを着ていたけど今日は膝まである可愛い形をした黒いドレスを着ていた。
「今日は周りの目も気にしなくて良いので、年相応な服でギャップを狙いました」
「私と同じこと考えてたのね...気が合うわね」
「当然です」
私と莉子の着ている服は色も形も違うけど、その凸凹が上手くハマり2人一緒に歩けば華やかな姿に見える。
(流石に目立つわね...まぁ仕方ないわよね)
私もだけど莉子の容姿が整っているのはもちろん、今日の服やメイクをいつもより頑張ったおかげで道ゆく人に見られてしまう。
私としては仕事柄慣れてるけど、莉子は慣れてないだろうし目立つのは嫌いそうよね。
どこか落ち着けるお店に入ろうかと思い適当に周りを見渡す。
一応プランは考えたけど、どんなお店が良いのか迷った挙句に何も決まらずおすすめのお店はどこ?って聞かれたら答えれるぐらいには調べはしたけどね?
「燈さん、あのカフェに行きましょ」
莉子が勧めてきたカフェは私も調べた、カフェだった。
やっぱり気が合うわねなんて考えてるうちに莉子に手を引かれお店の中に入り、2人席に案内される。
対面で席に座りメニュー表を開く。
「何食べようかな、莉子はどうする?」
「私はあんまりお腹減ってないので、パフェにします」
「んー、そうね。私もお腹減ってないしパンケーキにしようかしら」
2人して甘い物を頼み、届くまで雑談の話をして待つ。
これといった特別な話はしてない、学校で何が流行っているのか、学校は楽しいのか、どこら辺に住んでるのかとか普通の会話をしていたら甘く美味しそうな匂いが風に乗って運ばれてきた。
「こちらパンケーキとパフェになります。ごゆっくり」
優しそうな店員さんに運ばれてきた、美味しそうなデザート達はキラキラと輝いていて《早く私達を食べて》っと言っている。
「いただきます...んーおいしいわぁ」
温かいパンケーキを口に運び、ふんわりとした食感にほんのりと甘い蜂蜜とバターの相性は最高に美味しかった。
「いただきます。...っ!おいしい」
莉子は一口、口に運ぶとキラキラした表情になりもう一口とパクパク食べていく。
なんかリスみたいで可愛いわね。
「ねぇ、パフェ美味しそうね。少し味見していい?」
「いいですよ、どうぞ」
莉子は食べていた手を止めパフェごと寄せてきてくれるけど、そういう意味じゃない。
「?食べさせてよ、はいあーん」
「えっ、いや、でも」
「あーん」
「っぅ...」
(すごい動揺するわね、もしかして間接的なのは嫌なのかしら?)
他の人から見てもわかるように、動揺しっぱしで新しいスプーンを出そうとしたりパフェをこっちに渡したかと思えば、元の場所に戻したりとよくわからない動きをしている。
「はやくー、あーんして」
口を開き、莉子から差し出されるパフェをおとなしく待つ。
無理そうならこっちから差し出すのもいいかなと思っていたら、ひんやりとした甘さのあるアイスがゆっくりと口に運び込まれた。
「ん、美味しいわね。ありがと」
「いえ...あの、私にもください」
顔が赤くなり恥ずかしそうに俯きながらも、同様の行為を欲しがる。
その姿に悪戯心が出てしまうのも仕方ないわよね、だって可愛いんだもの。
「あーんしてほしいの?はっきり言わないとわからないわよ」
「イジワル...あーんしてください」
「んー、仕方ないわね。あーん」
「あー」
口を開き、雛鳥のようにご飯を待つ姿がこの上なく愛おしい。
何この可愛い姿は反則級に可愛いわよ。
「なんてね、ほいっと。んー、おいしぃ」
「っ!!!」
そのまま、口に放り込む訳もなく私の方へ運びパクッと一口で食べてしまう。
莉子は食べれると期待しているたからこそ、ショックが大きく羞恥と恨めしそうな表情が混ざり込み睨んでくる。
(あら、かわいい顔ね。全然睨んでる顔じゃないわね)
好きな子を虐めたくなる男の子の気持ちが理解できたわ、こんな感じなのね。
案外Sなのかしら?
なんて呑気に思って、また一口自分の唇に運び込もうとしたら、手首を掴まれ無理やり莉子の方へと引っ張られ大きな一口でパクッと食べられてしまった。
強制あーんね、これは。
「ふんっ、すっごく美味しいですね。これ」
ギロっと恐ろしく睨みを利かせてくる。
さっきの可愛さはどこへ行ったのよ、仕方ないわね。
「ごめんね、はいお詫びに蜂蜜たっぷりの美味しいところあげるから機嫌なおして」
大きめに切ったパンケーキを莉子の口に運び、次こそは本当に食べさせてあげる。
「どう?美味しい?」
「ん、さっきのより美味しいです」
すぐに機嫌が治り幸せそうな笑みを浮かべる。
うん、やっぱりこっちの表情の方が可愛いわね。
莉子の喜ぶ顔を見るとこっちまで、幸せな気持ちになる。
でも、本題を忘れてはいけないわ。
私が今日のデートを誘ったにも理由があるのよ。
そう、
「ねぇ、莉子。私に恩があるって言ってたけどその事教えてほしいの」
「別にいいのに...まぁ燈さんからしたら当然の行いかもしれないですけど、私からしたら凄く嬉しかったんです」
「ふぅん?そんないい事したなら覚えてそうだけどね」
「そうですね...私と燈さんが初めて会ったのは去年の夏です」
「去年の夏?あー凄く暑い日だったわね、あれ本当に死ぬかと思ったわよ」
去年の夏は人が死んでもおかしくない暑さでその事はよく覚えている。
たしかその時体調悪い女の子がいた...
「あれ?もしかして座ってた」
「!!思い出したんですか?」
「まぁね。でもあんなの」
「人に手を差し伸べられるのは当たり前じゃないです、私は確かにあの時救われました。ありがとうございました」
姿勢を正し、感謝の言葉をまっすぐに向けられる事に慣れてなく私が恥ずかしくなる。
「そう言ってくれると嬉しいわね、こちらこそありがと」
あの時、私が彼女にした行為は特別は事でもない。
普通な事だったと思う、それをこんなにも感謝してくれるなんて思ってなかった。
照れくさいような嬉しいような不思議な感じがする。
「感謝をするのは私の方ですよ。あの時は本当に...」
私から視線を外しカフェの窓から何処か遠くを見つめだす。
私達が出会った、あの日を思い出しているのかもしれない。
私もあの時の出来事...莉子と出逢った日を思い返す。
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