初連絡
「どうしよう、燈さんの連絡先を手に入れてしまった」
あの後兄が酔ってしまった事もあり、早々に帰ることにし迎えの車を呼ぶ事にした。
車に揺られながら、先程の出来事が頭の中で何度も繰り返す。
「なんて連絡すればいいの」
あの日からずっと心の中にいた、大好きな人。
その人と話せて連絡も交換できた私はこれ以上にない幸せを噛み締めていた。
『こんばんは。先程はありがとうございました。連絡交換して頂きすごく嬉しかったです。また連絡させて下さい、大好きです』
「うん、こんな感じで」
「ダメだろ」
寝ていたはずの兄が首だけ傾けて、覗き込んでくる。
「ちょっと、勝手に見ないでよ!...でどこがダメなの?」
「いやぁ、固すぎるね!!もっと簡単でいいんだよ、貸してみな」
「あ、ちょ」
私が言い終わる前にスマホを取り、ぽちぽちと文章を作っていく。
まぁ、私よりは人と関わるのが得意そうだし任せても平気だと思うけど、自分の文章で送りたいのにとモヤる気持ちを抑える。
「これでいいか、ぽちっとな」
「あ、何してるの!なんで勝手に送るのよ!馬鹿!」
兄からスマホを奪い取り、兄が送ったであろう文章を読み返すと溜め息以外、何も出てこなかった。
最悪よ....
『さっきはありがとねー!ちょう楽しかった、もっと赤姫ちゃんと話したかったからショックだよ。次こそは2人で遊んでみたいな』
急いで送信取り消しを押そうとした瞬間既読がついてしまい、取り消せなくなっていた。
燈さん仕事中じゃないの!?
既読つくの早すぎよ!!
『すみません。さっきのは馬鹿兄が送ったものです。でも寂しいのは本当ですし、2人で遊んでみたいのも本当です。燈さんが大丈夫でしたら遊んでください』
燈さんに勘違いされる前に、すぐに文章を送る。
「悪かった...おーい」
兄が何か言ってるが耳に入ってこない。
私はドキドキと高鳴る胸を押さえ、LINEの画面をじっと見つめる。
ふと、アイコンが目に入り思わずスクショをしてしまった。
だってアイコンの燈さん、私が初めて見た時の格好をしてるのよ。
大事に保存しておこうと心に決める。
スマホがピコンと震え新着メッセージが来たと教えてくれた。
『だと思ったわよ。莉子が私のことお店以外で赤姫って言わないでしょ?』
『莉子が寂しいと思ってくれたの嬉しいわ、私もなんてね笑。私も莉子と遊びたい、いつなら予定空いてるの?』
「っ!!!」
嬉しさで胸がドキドキと脈打つ。
私の事を理解してる感じの文章が可愛いし、寂しいって思ってくれていた事もそうだし、遊ぶ予定を燈さんからきいてくれたのも嬉しい。嬉しすぎるっ。
にへっと頬が緩みながらも、ニヤニヤしてるであろう兄を無視して返信の文章を打ち込む。
『私はいつでも大丈夫です。燈さんが空いてる日があればそこでお願いします』
すぐに既読がつき、数秒しないうちにピコンと音が鳴る。
『そうね、明日なら私1日暇なのよね。どうかしら?』
『大丈夫です。明日は駅に11時待ち合わせはどうですか?』
「平気よ、それでお願いね。明日が楽しみになったわ、寝れるか心配よ。寝不足だったらごめんなさいね』
「ぅぐ、可愛すぎる。素直な燈さんも可愛い。早く明日にならないかな」
『私もです。おやすみなさい』
『えぇ、おやすみ』
車から空を見上げ、明日着る服装や髪型を考える。
私も今日寝れるか心配になってきた。
仕事が終わり電車に揺られながら、莉子からきたメッセージを読み返す。
あの子からこんなに早く返事が来るとは思ってなかった。
ちょうど私が休憩している時だったから、すぐに返信出来たおかげでいつもよりやる気が出て私自身驚いた。
(少ししか話せてなくても、こんなにやる気って出るものなのね)
それに莉子からじゃ考えられない文章だったし驚いた。
メッセージだと性格変わる人とか居るし不思議ではないけどね...でもお兄様と一緒に帰ってたからあの人だろうとは予想はしていた。
それにしても、遊んで下さいって言い方が可愛すぎない?あの時本当に仕事抜け出して莉子の元へ行きたくなったし。
ふっと微笑みが漏れ、早く明日になってほしいと願う。
揺れ動く電車の中から空を見上げ、明日着る服やどこへ行こうか考えると、子供の時に感じた高揚感を久しぶりに感じた。
(明日の服装も綺麗だと思われたいし気合い入れないとね)
家に帰ったら、1番いい入浴剤を入れて、スキンケアもいつもより入念に行って朝の準備を万端にするためにも今日は早く寝よう。
(でも今日は寝れるかしら?)
((楽しみね))
お互いに眠れない夜が訪れ、朝日を迎える。
楽しみな時間はもうすぐ訪れる。
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