ダンジョンで宝探し
「そういえばパパ、ひとつ聞きたいのだけど」
「なんだ?」
実家で暫くくつろいだ後、私は帰ろうも準備している途中にパパへと話しかけた。
いま少し探しているのだけれど、なかなか見つからない物でもパパなら何か知っているかもしれないと思って。
「絶対に壊れない武器とかって知ってるかしら?」
「うちの耳掻きが壊れない効果がついてるが?」
「えっ、あれついてたの?·····まぁいいわ、私が求めてるのは『絶対に壊れない篭手』なのよ、それか足用の装備でもいいわ」
私が探しているのは、『金剛不壊』の効果がついた篭手か足装備だ。
今のところ、1番威力の高い亜光速攻撃は放つとその部位が消し飛び、激痛が走って瀕死になるから二度とやりたくないのよね·····
でも、もし仮に絶対に壊れない武具があるのなら、その熱や衝撃から身を守れるはず。
だから私は篭手を探してるのよ。
「うぅむ····· 知らないな!ウチにあんのは耳掻きくらいだ」
「うちの屋根も金剛不壊なら良かったのだけど」
「·····まだ許してくれてねぇのか」
パバが何かとばっちりを喰らっているけれど、とりあえず実家周辺には目的の物は無いとわかった。
やっぱり、木剣が手に入っただけ幸運と思うしか無いわね·····
「そんな篭手が置いてあるのは王城の保管庫か英雄の所有物だろうな」
「パパも英雄じゃない」
「手当り次第に砲弾投げてたら敵の首魁を殺しちまっただけだぞ?」
ちなみにパパは王都防衛で砲弾を筋力で投げていたら敵の首魁を倒してしまって、部隊を壊滅させたのよね。
だから英雄という事に間違いはないわ。
「はぁ、ままならないわね·····」
「なんで必要なんだ?」
「この前、光速で魔物を殴ったら右腕が消し飛んだのよ····· あれは痛かったわ、だからそれを守れる篭手があると助かるのよ」
「なるほ」
「大丈夫なの!?腕は····· あるじゃない、どういうことなの!!?」
「ちょ、おま」
ママがパパの言葉を遮って私の手を掴み、無事か確認し始めた。
·····けど。
「そっち左よ」
「あら?こっちだったわ」
ママって結構ドジなのよね。
「光魔法のお陰よ、怪我くらいなら自己再生できるようになったの」
「凄いじゃない、もう無敵ね」
実はそうでも無いのよね、即死したら再生も出来ないし、ルクシオンが使えない状況でも再生できないのよ。
だから慢心しないよう気をつけないと。
「無敵じゃないわよ、無敵だったら篭手なんて探してないわ」
「そう····· たしかにそうね」
「ルクシアの為なら探してあげたいが、無いもんは無いんだよな····· あっ」
「何か心当たりがあったかしら?」
「そういう特殊な能力のついた武具はダンジョンからよく出るって聞いた事がある、うちの耳掻きもそうだしな」
「えっ、知らなかったわ·····」
「昔、仕事で入った時に見つけてな····· ってそれはどうでもいい、ルクシアなら多分だがダンジョンでも大丈夫だ、探してみたらどうだ?」
有益な情報ね。
たしかに、あの木剣も····· いえ、あれはユーシャとやらが持ってた物らしいけど、ダンジョンで手に入れたみたいだから有り得るわ。
帰りがけに何処かに行ってみるのもアリね。
「わかったわ、ありがとう」
「あぁ、だがくれぐれも無理はするな、ダンジョンは危険すぎるからな、欲を出して最深部を目指して死んだやつはいくらでもいる」
「私はルクシアの命が何よりも大丈夫だから、危険すぎる事はしないで欲しいわ」
「·····わかったわよ、気をつけるわ」
私はパパとママに忠告されたあと、ちょっとだけ学院での近況報告をして、また会いに来ると言い残し早速ダンジョンへと向かったのだった。
ずいぶんあっさりとした別れだけれど、いつでも一瞬で会いに来れるのだから寂しさなんて微塵も感じなかった。
◇
「·····という訳でダンジョンに来たけれど、凄い高さね」
「おっ?そこの娘っ子、このダンジョンは初めてか?」
パパとママに別れを告げた私がやってきたのは、点を穿つような山よりずっと高い塔型のダンジョンだ。
·····他のダンジョンが見つけられなかったから、1番見つけやすかったこのダンジョンにしたのよね。
「説明かしら?頼むわ」
「え?いやそういうつもりじゃ····· まぁいいけどよ、ってかその様子だとここが前人未到の最難関のダンジョンって····· 知らねぇよな」
「知らないわよ」
が、どうも来てしまったのはとてつもなく危険なダンジョンだったようだ。
「この中は狭そうに見えるけどよ、魔法かなんかで拡張されててめちゃくちゃ広ぇんだ、端から端まで3日は掛かるぜ?その中を歩き回って上の階に続く階段を目指さなきゃいけねぇんだ」
「で?このダンジョンからは不壊の効果のついた防具とかは出るかしら?」
「いやおまっ、俺が説明してんのに····· まぁ出るけどよ、耳掻きとか」
「は?」
「嘘じゃねぇよ!!!過去にマジで出たんだから!!」
パパが潜ったダンジョンってここかしら·····
聞いておけばよかったわ、聞いても意味無いでしょうけど。
まぁいいわ、ここからは不壊の効果がついた道具が出るって分かったもの。
「ただよ、そういう効果がついてんのは低い階層だと耳掻きとかしか出ねぇし、上に行くと出るけどよ····· なんで不壊の効果がついた武器が国宝級か解るか?」
「皆手放さないでしょうからね」
「うーんズレてんな、上の階になると物資の補給が出来ねぇ上に敵が強いんだ、今のところ30階くらいが限界って話だ」
けれど、不壊の道具は稀にしか無いし、目当ての篭手とかはかなり上の階からしか出ないようね。
厄介だわ·····
「ちなみに30階でもかなりレアだな、ただヒントってか不壊とかのレアな武具が見つかりやすい傾向もあるぜ?」
「へぇ、教えてくれるかしら?」
「へへッ、タダで教えるとでも」
「私が調合したスパイス1袋よ、これでどうかしら?」
「レアな物が入った宝箱の近くにはえげつねぇくらい強い魔物が居るぜ」
私が谷間に仕舞っていたスパイスの袋を渡すと、男はあっさりとヒントを白状した。
チョロいわね。
「なるほど、わかったわ」
「おぅ、探すの頑張れよ、·····見つかるか分かんねぇけど」
「大丈夫よ、秘策を思いついたから、ちなみに今は何階まで人が居るか分かるかしら?」
「うん?知らねぇけど····· なんで聞いたんだ?」
「秘策に人を巻き込みたくないのよ」
私は天高く聳える塔を見上げ、秘策を実行に移すため行動を始めた。
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