光の速さは想像を絶する
「光の速度がそんなに·····」
「そうだ、人知を遥かに超える速度が光本来の速度だ」
そう言われると、光の速さを私は考えた事がなかった。
光魔法を出せば、どんなに遠くとも光が届いてくる気がする。
つけた瞬間に光るからそういうモノだと認識していたけれど、あまりにも早すぎてつけたと同時に届くものだと考えていた。
いや、事実無根の嘘の可能性もまだ捨てきれないが、完全に事実無根と言いきる事は今はまだ無理だ。
現に、光の速度を私はまだ確認できていないからだ。
「·····証拠は?」
「丁度いいものがある、見てくれ」
シャッ!
という音と共に、先生が部屋のカーテンを開けて外を見えるようにした。
「·····?」
「おかしいな、先程までは·····」
カッッ
そう言った瞬間、窓から激しい閃光が飛び込んできた。
「ふむ、丁度来たか····· 1、2、3·····」
ゴォゥウウンッ·····
「ひゃっ」
「ふむ、0.6マイレといったところか····· おや?雷は苦手だったか?」
「いえ、突然だったので驚いただけです」
どうやら、先生が見せたかったのは雷だったようだ。
でもなぜ·····
「落雷の位置は閃光から音が響くまでの時間で特定が可能だ、今の場合は約3秒、つまり0.6マイレ(約1km)ほどだが····· なぜ特定出来たかわかるか?」
「いえさっぱり」
「風の中を音が伝搬する速度は秒速約0.2マイレ、単位を変えると1000フィト程度と覚えてくれ、ちなみに私が実測した結果これは正しいと判明している」
「なるほど、つまり·····っ!?」
「気がついたか?この法則が成り立つには落雷と同時に光が届かなければならない事n
カッ!ッッピッシャァアアアアアンッ!!!ゴォンゴロゴロゴロゴロ!!!!
「ひいっ!!?」
「·····おほん、今のは、何マイレかしら」
「すぐ近くだな」
『おい校庭の木に雷が落ちたぞ!』
『木が折れたぞ、ヤバいぞ室内に逃げろ!!』
「·····な?」
「そうみたいね」
確かに、先程見えた落雷も相当離れた場所で落ちたが、この場所から見れば落ちる過程が肉眼でも見えた。
·····だが、光が動く過程は全く見えなかった。
ちなみにさっきのは本当に近すぎて光も音も凄まじくて今も耳がキーンとしている。
当然光の動きなんて見えるはずもない。
·····で、話を戻すけれど。
今までは光とはそういうものという認識だったけれど、もし先生の言うとおり『目にも止まらない速さで動いてる』としたら?
「お前の使う光魔法は、無属性のマジックボールと速度はほぼ同じだ」
「·····見ていたんですか?」
「一般人が使う光魔法はそういうものだからだ、·····いや、正確には『速度を決めるのに重要なイメージが出来ていないからデフォルトの速度になっている』と言うべきか?」
「確かに、風は早いというイメージがあるから早くなるのは納得ね····· それに石魔法は投擲の速度が早い人ほど早くなると言われてるわね」
この世界の魔法は、イメージが重要となる。
例えば火魔法の場合、普段から高熱を扱う鍛冶師と火を使わない一般人を比較すると、温度のイメージが出来ている鍛冶師は1000度を超える炎を出すことが出来るが、一般人は行っても数百度程度の温度しか出すことが出来ない。
故に、速度を感じ取れない光では速度のイメージが出来ず、魔法を構築する際の速度指定が無いためデフォルトの速度が指定されてしまう。
故にあまり早くない攻撃しか出すことが出来ないのだ。
「だから想像してみろ、人間では認識さえ不可能なほどの光の速度を」
「光の····· 速度·····」
私は想像した。
1時間で6億マイレも進むほどの光の速度を、たった1秒で18万マイレという想像を絶するその速度を。
そして偶然、私は想像することが得意だった。
想像を絶する光の速度を、私の想像は捕らえることが出来てしまった。
「·····なるほど、わかりました」
「出来たか?」
「ええ、要するにどんな距離であろうと瞬時に届くのでしょう」
「あぁ、ちなみに月まで推定だか1秒程度で届く」
「凄いわ·····!」
「更にだ、本来の光は射程は無限大、俺でさえ想像できないほど離れた夜空の星々でさえ見えているんだ、本来の力を解放した光魔法は例えどれだけ離れていようと瞬時に当てられるはずだ」
「試してみるわ」
ギィィッ!
そう言うと、私は先生の部屋の窓を開けた。
「あ、おい待てバカ、今大雨」
ッッザバァァアアアアッ!!!
「わひゃっ」
「·····」
「·····」
「·····あと30分もすれば止む」
「·····はい」
あっという間にずぶ濡れになった私は、雨が止むまで制服を乾かす事にしたのだった。
◇
結局雨は授業が終わるまで止むことは無く、制服は少し湿っている程度にまで乾いた。
そして昼休みになり、私は自主トレーニングの出来る訓練場へとやってきた。
ちなみにお昼は食堂のヘルシーセット(670イェン)で済ませた。
「おいおい、何すんだ?」
「光魔法のトレーニングですって、光の強さの練習かしら?」
「光属性って練習するような事あったか?」
「えぇ、だから今から試すのよ」
そして空腹も満たされたから、早速光魔法を·····
いえ、呼び方を変えるべきね。
「光速魔法を·····!」
先生に言われた事を思い出すのよ、私。
想像すれば魔法ならなんでも出来るって·····!!
「言ってねぇぞ」
「光の速度で飛べ、ライトボール改めて『ルミナスボール』!!」
カッッッッ!!!
「·····あれ?」
「·····うん?」
「光っただけか?」
「不発かしら?」
私はルミナスボールを発射してみたが、特に変化が無かった。
的にも当たった痕跡は無く、飛んだ所も見れなかったからイメージが上手くいかず発光しただけになった可能性も·····
「·····あっ」
私は見つけた。
校舎の壁を抉り、屋根まで貫通して空が見えてるたった今空いたばかりの大穴が。
「外れたのかしら、じゃあ次は当てるわ」
ピカッッッ
「·····あら?当たらないわね」
ピカッピカッピカッ!
「おかしいわ、なかなか的に当たらないわ·····」
私は続けて4回、光速魔法を放ったが1発も当たることは無く、全弾が背後の校舎を穿った。
そしてここでようやく、玉が直進している事に気が付き今までの湾曲することを考慮した軌道から変更してみた。
「発射」
カッッ!
バヂンッ!!
その結果、私の魔法は的を捉えて抉るように撃ち抜く事に成功した。
そして当然のように背後にあった校舎をも撃ち抜いて風穴を開けていた。
「おっ、当たったわ、それにしてもすごい威力ね、これが····· 光魔法本来の力····· 光速魔法の実力なのね」
「な、何だアレ·····」
「光った途端にえぐれていく·····?」
「何をしたのかしら、まさか光魔法?」
「そうよ、これこそが真の光魔法よ」
「光は本来想像を絶する速さで、例えどんな障害があろうと消して止まらず進み続けるのよ!」
「いや違ぇよ····· 流石に障害物があったら止まるだろ·····」
「あら先生、いつから?」
「最初からだ、それと校舎に穴開けたのどうするつもりだ」
「·····そうね、どうしようかしら」
その後、私は先生方にかなり怒られ放課後まで木造校舎に空けた穴を修理させられる羽目になったのだった。
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