第十三話ー商店街の協力一~片想いの相手の姉と父~ー

「さて、クリスマス会の商店街の協力の件だが、少し私も動いた。やはり、生徒からのアポがないと動かないと言われた。ということで、南商店街の鮮魚のはなまるが代表だから開店時間中に聞きに行くんだよ」

「ん? 鮮魚のはなまる?」

「ありがとうございます!! 理事長」


 理事長が『代表』と言ったお店に夏芽がピクリと眉を上げた。


 その後、授業もないので、すぐに南商店街に、オレと麻実さんが向かった。多奈川さん、久賀、夏芽は学校に残って、フォークダンスの練習であったり、有志企画の試案をすることになった。実は有志企画は実行委員意外の友達からも意見を集めている。各々、外部に絶対情報を漏らしそうにないという友達に限って、有志企画の相談をしようとなっていた。


 南商店街はこの市にある二個の商店街のうちの比較的栄えてる商店街だ。代表の鮮魚のはなまるはその中でも一、二を争う老舗で、今の店主で三代目のおじさん店主である。


「なぁ、麻美さん、さすがにタダで頼む訳にはいかないし、かと言って魚を買っても、そこまで家に帰らないオレたちには不要の代物だし、どうしよ」

「それもそうだよねー、どうしよう」


 そんな話をしていると、南商店街の入口付近についた。クリーニング屋に宝賀の夏服をクリーニングに出しに来ている女子生徒に会った。


「おっ、まみっちじゃん。えっと、横の子は確か……なんとかくん!!」

「いや、なんとかくんって失礼なー広瀬だよー!!」

有紀ユキはクリーニングに来たの?」

「そうだね、いやーお父さんに言われて思い出したよ。でも、あーしのじゃなくて妹のほう。もう使わないけどね。まみっちはえーっとごめん、なんとかくんとデート?」

「広瀬だ」

「デートではないかなー、迅くんは好きな子いるし」

「ん? じゃ、なんで、商店街にいるの?」

「ごめんね、有紀、ここで油売ってるわけにはいかないんだ。鮮魚のはなまるに急いでいかないと」

「あーしの家?」

「いや、鮮魚のはなまる」

「だから、あーしのお父さんが鮮魚のはなまるの店主なの」

「有紀!! 力を貸して!! 妹さんのためという意味も含めて」


 『え、まみっちどうしたの?』と困惑した顔を見せた有紀さん。そういえば、この人が宝賀の関係者だという子とはわかるが、妹のためにクリスマス会に力を貸してとはどういうことだろうか……。


「妹……? 夏芽がどうしてでてくるの?」

「……夏芽?」


 ここでオレはようやく理解した。この有紀さんは夏芽のお姉さんだ。したがって、オレは片想いしている相手のお姉さんと話すことになる。


 緊張するなぁ。


「ほら、クリスマス会代表の迅くんが説明する!! 商店街の協力仰ごうって言いだしたのも迅くんだし」

「あの……、すいません」


 『はい、逃げ出さない』と言って麻実さんはオレの服の首元をつかんだ。おそらく夏芽へのオレの想いがバレているうえに夏芽のお姉さんと話すのだ、しかも、この後、夏芽のお父さんとも話をするのだ、すでに緊張で心臓もそのほかの臓器一気に出そうだ。


「ほんと、仲いいねー、まみっちとなんとかくん」

「ひ、……広瀬です」

「もしかして、うぬぼれてるわけじゃないけど、なんとかくん、あーしにひとめ……」

「それはない」

「否定早いね」


 歩きながら話していたので、気付けば鮮魚のはなまるに着いていた。


「ただいまー高校の友だちがお父さんに用事だってさー」

「わしにか? 確か、お前、高校、宝賀だったよなー?」

「そうだよ」


「悪いのう、斉藤から事情はきいちょる。斉藤には、生徒から来いと言ったが、あれはただ単に商店街で打ち合わせがしたかったんだ。結果はな、肉屋と雑貨屋は協力したいと言っている。わしも鮮魚で協力したいが……」

「待ってください、こちらとしても……」

「そうじゃの、わけぇ男、お前の言葉をまだ聞いていない」

「宝賀高校の文化祭、学生が期待するようなものではなかったんです。飲食の模擬店もなし、お化け屋敷もない、まるで小学校の体育祭にあるような集団行動でした。二、三年生からすれば例年通りなんでしょう。そして、ボクたちがもともとクリスマス会で案として出したグラウンドで火を起こして、フォークダンスをして駄弁ろうでは文化祭の二の舞なんです。本来ならボクたちで模擬店メンバー集めて、模擬店の計画練ってということをすべきなんです。ですが、お恥ずかしい話ながら、ボクたちは今、フォークダンス以外のことも含めて何かをすることを考えないといけないんです。提案としてなのですが、十二月二十四日の夕方から商店街の何店舗かから模擬店を出店していただけないでしょうか?」

「そうだな、わしの娘も宝賀にはお世話になっているし、わしは斉藤にも個人的に世話になっているし、この商店街は一度つぶれかけた。でも、その時、助けてくれたのが斉藤だ。その斉藤が理事長してる学校の生徒からのお願いだ。引き受けよう。斉藤から聞いているが、今、お前ら、学校、特に授業もなく、しかも、学校に泊まり込むことを許されていると聞いている。ならば、代表ともう一名、今日の商店街の打ち合わせに参加してほしい」


 鮮魚のはなまるの店長から打ち合わせに参加してほしいと言われた後に、夏芽のお姉さんが反応した。


「え、なにそれ、クリスマス会おもしろそう!! 絶対行く!! 確か、十二月二十四日って木曜日だったよね? 友だちに声かけてたくさんの人数で参加する!!」

「有紀ありがとう!! 楽しいものにしようね」

「なんとかくんもクリスマス会代表ガンバレ!! アガリ症も治さないとね」

「有紀、迅くんのはアガリ症とはちがうよ」


 夏芽のお姉さんの有紀さんは、『どういうこと?』という風に首をかしげていた。ニマニマ笑っていたのは麻実さんだ。


 学校に戻り、学校に残っていたメンバーに事情を説明すると、夏芽が商店街の打ち合わせに立候補した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る