第十一話ー真実の薬一~間接キス~ー

 ……?


 文化祭ってなんだっけ?


 なんか、学校で盛り上がるイベントじゃなかったけ? 一切盛り上がりを見せなかった文化祭だった。そして、オレはふと耳にした。


-なんか、クリスマス会もあるらしいけど、どうせしょぼいだろ-

-だろうなー-


 その日の放課後。


「もっと盛り上がるために地域の商店街巻き込めないかなぁ?」

「どうしたの? 迅センパイ」


 いつの間にか梶原さんもオレに懐いてきて、名前呼びになっていた。ちょっと距離感バグるな、これ。



「あのさ、文化祭、正直どうだった?」


 文化祭? と不思議そうな顔をする四人。口を揃えて四人とも私立の割にはしょぼいと言った。


「ならさ、せめてクリスマス会くらい参加した特権で盛り上がりたいじゃん」

「そうだねぇ」

「でも、今のままだと、グラウンドで火を起こして、その周りでフォークダンスするだけになってしまう。今更模擬店するには人が明らかに足りない。だから、そこはプロの商店街の人の力をかりるべきだとおもったんだ」

「たしかに……。それが可能なら、売店もあるし、お祭りみたいになるもんね!」


 そこに急に大人の声が聞こえた。


「そうだな、その交渉とか含めても時間がなさすぎる。クリスマス会まで多く見積って一ヶ月だ。相手もひとつ返事とは行かないだろう、それを考慮した結果だ、理事長権限で、全員の親御さんが認める限り、この特別棟での宿泊を認める。ただし、夜は本棟にいくことは絶対認めない。夜の買い出しは特別棟の裏門から……」


 理事長はクリスマス会をより良いものにするため、非常に協力的だった。なぜか、置いていったのはグレープフルーツ色をした、つまり、ピンク色をしたジュースのようなものだった。


 これはホントに忘れ物だろうか? 何かを試すために意図的に置いていったのではないだろうか……? それとも、もしかして、このペットボトルのどこかに盗撮用カメラが入っているのでは? いや、学園の理事長を務めるようなすごい人がそんなものを持っているわけが……。でも、父さんの友だちっぽいんだよなぁ。オレが理事長への妙な疑いをかけていると、麻実さんが仕切りだした。


 忘れがちだけど、オレがクリスマス会実行委員の代表だよな……? 代表決めの時からずっと思っていたけど、いや、もっと前からか、出会った頃から『面倒見のいい姉御肌の同級生だなぁ、麻実さんって』と思っていた。


「さて、まずは親に学校に泊まり込んでいいかの許可を取ろうか」


 それから十分前後経って、全員の親は許可を出した。オレの親はというと、楽しそうでいいじゃない。それだけだった。


「親との交渉からくる緊張でのど乾いた。みんな理事長が置いていったジュースいる?」

「オレはパス」


 さっき、つい疑ってしまった罪悪感からオレは飲まず、他の四人は飲むことになった。


「あっ、待って、見たことない色だからどんなにおいがするかだけ匂わせて」


 パッと見、ピンクグレープフルーツ色だが、よく見ると青みがかっているような気もする。梶原さん以外は一気にグビッと飲んだので残っていなかった。


「うげ、あんまりおいしくない、迅センパイあげます」


 梶原さんが飲みかけのコップを差し出した。いや、オレ、本当に匂いが嗅ぎたかっただけなんだけどなぁ。


 何も考えずに、考えていたとしたら、『可愛い後輩の頼みだし』くらいだろう。


 この後、しばらく駄弁ってクリスマス会の話に戻した。

 ふっと、多奈川さんがさっきの飲み物のことを思い出した。


「あれって結局、間接……?」

「え?」

「ん、あぁ、いや、なんでもないんだけど、迅くん、夏芽ちゃんと間接キスしたなぁ、と思って」


ここで一度オレと梶原さんは二人で顔を見合わせて、顔を赤くした。

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