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『やはり鍵になるのは血の繋がりだ。


 真祖は、己の血だけで吸血鬼を生み出すことができる。つまり分身のようなものだ。


 その分身、真祖直系が更に分身を作ると、後天性が生まれる。


 真祖、真祖直系、後天性。


 この繋がりを断つには、大元おおもとを殺せ。


 大元おおもとの真祖を殺せば、分身は全て灰になる。


 お前の身体の中に流れる吸血鬼の血に関しても、同じことが言える。


 ただし真祖を殺したその瞬間に血が半分になるわけだ。当然、そのままだと死ぬ。


 一旦、俺はリーヴェンに向かう。


 医療魔術師が近くにいれば何とかなるだろう。明朝に着く』


「真祖を倒せば、元の身体に……」


 当然、簡単な話ではない。真祖は対吸血鬼特殊部隊シルバーバレット随一の戦力を誇っていた隊員番号一ワンでさえ、両足と引き換えにようやく討ち果たした存在だ。それでも伝説的といっていい快挙で、CVO設立以降、真祖の討伐成功はこの一例のみだった。


 しかし、人間に戻る方法は存在するのだ。それは確かな希望だった。


「リディア……」


「……えぇ」


 手紙を読んだユークは何か言いたそうにしていたが、リディアが微笑むのを見て、ほんの少し緊張を解く。


「良かった。方法はあるんだな」


「影の一族の大元おおもと……影の真祖スコティニア。組織の記録には、ほとんど情報らしい情報はなかった」


 そもそも、真祖自身が人間の前に出てくること自体が珍しいのだ。奴らは眷属に血を運ばせ、それを糧としている。実際にどこに潜んでいるのかは知らないが、玉座から動かぬ王のように献上を待つだけの存在。


 奴らが動くとすれば、それは眷属からの供給が十分ではなくなったとき。


「私の中に残る吸血鬼の血を、スコティニアは求めているわ」


 ──早く母の元へ帰っておいで


 洞窟で聞こえたあの声は、スコティニアのものだ。


 リディアと、影の真祖スコティニア。


 血の繋がりは、ふたつの存在を引き寄せる。

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