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 我に返ったふたりは、じたばたと暴れたくなるほどの恥ずかしさがこみ上げてきて、とりあえず落ち着くために再び椅子に座り直した。やがて顔の熱が少し和らいできた頃、ユークがぽつりぽつりと話し始める。


「マリナには、とっくにバレてた。俺がリディアの誕生日に何をしようか悩んでたら、魔法でサプライズをしようって言ってきて。完成間近になって、ミュラの花言葉を教えてきたんだ」


『花言葉は、ユークからリディアに伝えてあげてね。好きなんでしょ?』


 ──姉は嬉しそうに微笑んで、そう言ったらしい。


 また頬が熱くなってきて、リディアは手でパタパタと仰いだ。


「あの魔法は花言葉になぞらえて、微弱だけど守護の性質を持たせてた。結局、完成する前にあの事件があって……そのままだ」


「未完成だったのね。そうは見えなかった。すごく綺麗だったから」


 そう言うと、ユークは「あとちょっとだったんだけどな」と苦笑した。


「二人の魔法を組み合わせて新しい魔法を編み出すなんて、子どもの発想とは思えないわ。お姉ちゃんらしいというか」


「マリナに合わせるのは苦労したよ。何回も試行錯誤して……それをリディアに隠れながらやってたから、俺がマリナを、なんて誤解が生まれたんだろーな」


「…………」


 長年、ずっと真実だと思い込んでいたことが違うとわかって、まだ心の整理がつかなかった。ましてやユークが自分のことを好きでいてくれたなんて信じられない。


 ──ただ、とリディアはふと思う、


 ユークもリディアも『子どもの頃は好きだった』と打ち明けただけで、今はどうなのか、はっきりと口にしていない。


 リディアは今もユークが好きだ。リーヴェンに帰って来て、一層想いは強くなった。


 だけどユークはどうだろうか? リディアがここ最近やったことと言えば、正体を隠して冷たい態度を取るわ、海に突然飛び込んで心配させた挙げ句に風邪を引かせるわ、仕舞いには吸血しかけるわ。


(……ものすごく嫌われるようなことしか、してない気が、する……)


 ずんと落ち込んだリディアを横目に見て、ユークは「えーと」と頭を掻く。


「あのさ、俺たちって……」


 おずおずと切り出された言葉は、視界の端でチカリと光った何かに気を取られ、最後まで聞くことができなかった。


 光を纏って飛来したそれは、音もなくリディアの手に収まった。小鳥のような形が、ゆっくりと一枚の紙へと変化する。


「マドリ先生からだわ」


「…………あいつ、わざとか?」


 ぶすっとしながらユークは呟き、椅子に深く座り直す。ユークの態度も不思議に思ったものの、それより今も手紙のほうが気がかりだった。


(定期連絡にしては早いわね。……何かあったのかしら)


 逸る気持ちを抑えながら、リディアは二つ折りの紙を開く。そこにはマドリらしい走り書きで、こう記されていた。


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