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気付けば、言葉が溢れていた。
「好きだから、嫌われたくなかった。復讐なんて醜いことを考えてるって、好きな人に知られたくなかった。あの時の私、酷い顔してたと思うから。巻き込みたくなかったのも本当だけど、これも本当。……自分勝手な理由で、ごめんね、ユーク」
何気なく口にした一言を、何年も大切に想ってくれているユークが好きだった。
優しくて、なのにたまに悪戯っぽく笑うところも好きだったし、負けず嫌いなところも好きだった。──昔も、今も、ずっと好きだ。
「ユークがマリナお姉ちゃんのことを好きなのは知ってたから、ずっと言わないでおこうって思ってたけど。私がユークを信頼していないって勘違いされたままなのは嫌だから──……」
「ま、」
強く両肩を掴まれる。その拍子に涙がぽたりと床に落ちて、初めて自分が泣いていることに気付いた。ユークは深く俯いていて、表情が見えない。
「待て。何だって? 俺がマリナを好き?」
「え?」
まさかの反応に、リディアは面食らう。
「違う、の? みんなもそう言ってたし、私も花畑にいる二人を見て、そうなんだって」
「俺とマリナは、一緒に魔法を作ってたんだよ。花畑の魔法がそれだ。マリナが光属性を、俺が地属性の魔法を使って、なんとか形にしようとしてた」
あまりにことに言葉が出なかった。
あの魔法は姉だけのものだと思っていた。二つの属性を組み合わせるなどとんでもない才だと驚愕していたが、まさかあれがマリナとユーク、二人が編み出したものだったなんて。
「じゃあ、あの花言葉の嘘も、その関係で?」
「あ、あれは……」
そこでユークはようやく少しだけ顔を上げて、リディアは再び驚くことになった。さっきまで酷い顔色だったのに、今は耳まで真っ赤に染まっている。
「その……本当のことを言うのが、照れくさくて、だな」
へ? と思わず間抜けな声が出た。何故、この流れで『照れくさい』という感情になるのか。
「ミュラの花の、本当の花言葉は……い、一生あなたを守りぬくとか、そういうやつなんだよ。プロポーズとかに使われる……」
「ふ、ふうん?」
「それを、好きな子に言うのは照れる……だろ」
「…………そうね」
リディアは譫言のように呟いた。ユークは未だ赤面したまま、けれど真っ直ぐにリディアを見つめている。というより、見つめるを通り越してちょっと睨んでいるようにも見えた。
「あの……………………こんなに、照れるものなの?」
自分も、ユークと同じように赤くなっていくのを感じながら、自分でもよく分からない質問をした。よく分からないのに、ユークも「だよな」と同意をする。
ふたりは随分と長い間、何とも言えない雰囲気の中、お互い見つめ合っていた。
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