良い歌ばかりで困る。
なぜ困るかと言うと、
私の能力では良さを説明しきれないからだ。
やれやれ。少しは評者の負担も考えていただきたいものである。
基本的に評者の作歌より何倍にも増して優れた歌というのは、上手くレビューしきれないものである。
まことに遺憾ながら私はゴミのような作歌を繰り返しており(最近はそれさえままならぬ)、
したがって今に天に昇らんとするがごとき菫野さんの名歌をレビューする資格など持たない。
しかしながら今回も「私でもなんとかなりそうな歌」をピックアップしてチクチクとレビューする。
・「破裂した夜の心臓やもしれぬ紅きちひさき遠花火見ゆ」
私はこういうのは得意なのだ。
ほら、まずこの歌の核になる発想といえば、
視覚的な連想(難しくいえばアナロジー)でしょう。
「破裂した夜の心臓」はもちろん「紅」く、「ちひさき遠花火」に似る。
おお、単純明快っ!
ポイントはまず「夜」の大きさと「ちひさき」「遠花火」の対比か。
しかしもっと直感的に考えた方が面白そうだ。
例えばベランダから空を見ていて、
暗く単調な一面の夜空にいきなり小さな遠花火が見えたとする。
その紅だ!
花火は破裂する。紅だ!
そうだ! あの「破裂」と「紅」は臓物が破裂して血が飛び散ったのに似ているではないか!
そこから「破裂した夜の心臓」に至るまでの発想の距離はそう遠くあるまい!
――ということで「遠花火」が「夜の心臓」になるのである!
単純明快ではないか!
そういえば江戸川乱歩に『パノラマ島綺譚』とかいう人間打ち上げ花火の話があったかとおもうが、
私はこの手の「典拠探し」はやめておきたい。
だって読書量・知識量で私が菫野さんに勝てる訳がないではないか!
的はずれなことを言うくらいなら最初から沈黙した方がマシだ!
そして、このレビューも終わるのである。