11,上様と第六天魔王
「先程ぶりだな」
そう言う信長さんは、さっき安土城で受付をしていたあの男性だった。
……そんな馬鹿な。僕のにわか知識によるとあの織田信長は、現代人でも到底思いつかないような苛烈で革新的なことをたくさんした、独裁者のはずだ。
それなのに、上座に座る信長さんからは、強烈な威圧感とかそういうのは全くなくて、ただ生きることを全力で楽しむ、陽気な殿様の感じがした。
呆然とする僕を尻目に、秀吉とーさんはプレゼンを開始する。
「本日は上様にお願いして頂きたいことがあり、こちらへ参上
それはズバリ、近々柴田修理亮殿が任命されるという、北陸方面の軍隊に、某も参加させて頂きたいのです」
「その理由は、3つございます。
1つ目は、長浜の内政も整い、長期の戦の出兵が可能になったからです」
理路整然と、秀吉とーさんは話していく。蛍石のため、という個人的な考えだけではなく、まずは
……いや、凄いよ。プレゼンの力も必要な医師として、秀吉とーさんには完敗だ。
「また昨年の長篠では思うような大きな武功が取れなかった
2つ目は、
え、どこ?加賀国?秀吉とーさんの感じからして、北陸地方のどっかかな?
僕が首を捻りながらも、秀吉とーさんはまた、◯次元ポケットから取り出した⁉という素早さで例の日本地図を出し、指を指しながら説明する。
「謙信は1ヶ月前に
謙信のことなので、遅くても1年後、早ければ1月後には加賀国へ進軍する可能性が高くございます」
地図と一緒だと、ちょー分かりやすい。秀吉とーさんは富山県辺りを越中国と呼び、能登半島辺りを当然、能登国と言った。加賀国は石川県の南部辺りのようだ。
にしても謙信さんは凄いな、たったそれだけで能登半島を平定って……。
「確かに加賀国は大事だが、それほどまでに貴様が
てっきり、
ここまで聞き役だった信長さんが、秀吉とーさんに質問を投げかけた。僕としては残念なことに、地図で示してくれていないため、播磨やら但馬国やらが、どこにあるのかは分からない。
だけど秀吉とーさんは当然、僕みたいにガッカリしていなかった。
ついに、本題を切り出したのだ。
「えぇ、拘ります。
某の
「本日、石松丸を連れたのも、そのためにございます」
信長さんは驚いて言う。
「確かに貴様の息子は童にしては非凡な片鱗を見せていたが、そういうことなのか」
いや、僕は何もしてませんよ、信長さん。以前に会ったこともないし、さっき一緒に、受付やっただけの関係でしょ。
そんな僕の心の声はもちろん無視され、
「では、石松丸頼むよ。
やりたいことを正直に、上様へ伝えてくれ」
まさかのアドリブでのプレゼンを余儀なくされた。
いくら雰囲気が思ってたんと違っても、相手はやっぱりあの織田信長。どうしよう……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます