夏休み前日;7/27 ー②第三者視点の思い出 1ー

タッタッタッタッ




急ぎ足で坂を駆け上がりながら


当時の自分を思い出してみる。


「やっぱり断片的にしか思い出せない…」


引っ越しや僕自身が忘れようとしていたのを含めても


やはり子供にとって5年という歳月は大きいのだろう、


ノイズがかかったようにおぼろげな記憶ばかりだ。




「見にくいな…。見やすいようにできないかな?」




足は止めないまま考える。


…そうだ、映像を切り替えるみたいに


夏休みの始めから思い出して行ってみよう


そうしたら思い出したくない記憶は避けれるかもしれない。


試しに昔の映写機のように、


覚えている記憶を順番に移していくのを思い浮かべる。




カシャカシャッ




うん。どうやら上手くいったみたいだ。


目の前に、古ぼけた映画のような


セピアカラーの映像が映る。


映ってるのは…扇風機?


ああ、そうだ。僕の家はクーラーが無かったんだよな




カシャカシャッ




次は…何だろう、駄菓子屋?


中がよく見えないがおそらくそうだろう。


僕はお金がなかったから中に入った事がない、


そのせいで中の構造をよく覚えていないのだ。


だから中がよく見えないのか?


そういえばいつも誰かのを見ているだけだったなぁ




カシャカシャッ




次は…




いつの間にか僕は久しぶりの思い出に浸っていた。


いつもなら、トラウマばかり思い出してしまうから。


そう、僕は気を抜いてしまっていた。


記憶は、トラウマは、


そう簡単に消えなどしないのに。






「次は何だろう?」




カシャシャッ




…?風、鈴…?風鈴の記憶何かあったかな??


よく見えないけど色がついていて綺麗だ、


何か柄も書いてあるようだがそれもよく見えない。


風鈴を眺めているとふわりと風が画面内を吹いた。


あ、今の風で画面の中の風鈴がゆれ…




チリィーン




ァ。




…ザガガガガッッ「縺ェ縺∽ソコ?」ガガッ




ァァコ、レ。は。 この記憶は




「蠢倥l繧医≧縺ィ縺励※繧薙§繧??縺医h」




ダメだ。


ーブツッー


即座に映像をきる。


「…ゔっ、、ハアッ、ハアッ…ッっ!」




目眩と、吐き気がする。




「ォェェヅッ…ハァッッハァッッ」




あつい。あついあついあつい。きもちわるい。




「ヴッ…ゲホッ!ハァーッハァッゲホゲホッ…」




おち、つけ これは……夢だ。


深呼吸をしろ…!




「ハアーッ」


深く息を吐いて。


息を深く吸う。 ……どうやら落ち着いたようだ






息を整えて顔を上げると目の前に学校があった。


いつの間にか着いていたようだ。




「……。早く、起きたい。」




悪夢を見るのは久しぶりだ。


そしてその理由も今ならわかる。




「……こうなるからか、思い出すと。」




完全に、気を抜いてしまっていた。


やはりあまりこの夢に長居するのは良くない。


急がなければ。


学校の入口まで歩く


……どうやら玄関の鍵はかかっていないようだ。


今の時間は、


あぁ


「やっぱりそうか。」




今の時間は授業終了直後、


つまり放課後になったばかりということだ。


ならやはりアレしかないだろう




急いで階段を登ろうとした僕はふと足をとめ考える。


この状況の場合、僕は会うのだろうか?


当時の、5年前の僕自身に。あの時の自分に。




「…いや、今は、考える事じゃないな。」




とりあえずは行かないければ起きることは出来ない。


そう呟き、僕は階段をもう一度登り始めた。






今日起きる、あの事件を止めに「図書室」へと向かって。


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