夏休み前日;7/27 ー①追憶 ー

…これは夢だろう


僕はぼんやりとした空間に立ちながらそう思った。


おそらく明晰夢というやつだ。


自分が夢を見ている事を把握していたり、


夢の内容を自分の好きなように変更出来るアレ。


今まで何度か見た事があるし、多分そうだろう。


記憶が確かなら今は授業中のはずなのだが




「寝てしまったのか僕は…」




…ハァ、明日から夏休みなのに


僕は何をしているんだ。授業中に居眠りだなんて、、


やはり昨日の夜更かしが良くなかったかもしれない。




「うーん、、昼休みに寝とくんだったなぁ。」




まあ今更後悔したところで後の祭りだが…




「とにかく、授業中なら早く起きた方がいいな。」




そう一人呟きつつ、明晰夢についての記憶を探る。




「確か自分で意識した内容に、夢を変えれたりするんだよな?前回はどうやって起きたんだっけ…」




すると、まるでその問いに答えるかのように


モヤモヤした物がぼんやりした空間を漂いはじめた。あぁそうだ_思い出した。




「このモヤに記憶が詰まってるんだよな?」




そしてモヤにぶつかると、


その記憶に関しての夢を強制的に見る事になる。


いつもなら好きな記憶を見つけて寄り道しながら


出口へと向かうが今はおそらくまだ授業中、そんな事はしてられない。何しろ目覚める為の出口は一番奥にあるのだ。




「ぶつからないようにしなきゃな…


まぁ、とにかく動いてみるか、っと」




泳ぐようにして出口を探していると、しばらくして奥の方に光が見えた。出口だ。


毎回寄り道しながら進んでいたので道があっているか不安だったが、要らぬ心配だったみたいだ。


ほっとした僕は先程よりも少し早く足を動かしながらそちらへと向かう。これなら授業終了までに間に合いそうだ。


そういえば、


他の人の明晰夢もこんな感じなのだろうか?


ネットには似たような内容はなかった気が…




ボスッ




「あっ。」




完全に出口直前で油断していた僕は


不意に目の前へと漂ってきた記憶に当たってしまった




「まずい、授業中に戻れるかな、、」




苦笑いを浮かべながら僕はその記憶へと吸い込まれていった。




…ミィーンミンミンミィイーン




ぼんやりと、蝉の声がする。




ミィンミンミンミィィーーーン




…いやぼんやりじゃないな、普通にうるさい。


目を開けると太陽の光で目が眩む




「眩しい、そして暑いな…」




そう、特に背中が。 ガバリと身体を起こし、


辺りを見回すとどうやら僕は古ぼけた


アスファルトの道路の上に寝ていたらしい。




「夢の中なのにこう、暑さとか声が聞こえるのは


相変わらず変な気分になるな。」




今回は酷くうるさい蝉のお陰で徐々に自覚する。


どうやらあのモヤに入っていた記憶の夢を


見始めたようだ。




「夏の記憶かな?一体いつの、、」




そこまで言いかけて、思わず口を閉じる。


…目の前の道にあるダンボール箱に見覚えがあったのだ。


よく、覚えている。いつもは無地だったのに


あの日はメロンの絵がプリントされたダンボールだった。


きっと何処かの家がメロンでも食べたのだろう


そして偶然その日にゴミに出した。ただそれだけだ




だが、それは後の記憶を強く彩ることになる




あの記憶か。5年前の夏休み前日の。


夢に出てくるものは印象に強く残っている物が多い




例えば酷く嬉しかったことや楽しい記憶


あとは…トラウマとか。


この記憶の場合は後者に当てはまる




「十中八九あそこだけど行きたくないなぁ」




あの夏休み関連の記憶はあまり思い出したく無い。


けどこの夢を早く終わらせるには行くしかないか…




覚悟を決め、僕は丘の上の学校を目指して走り出した

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