第15話
死鬼である義平の討伐が終わったことを岡崎の屋敷にいる義実に報告すると、岡崎の屋敷からは歓声があがった。滅びの危機にあった岡崎が救われたのだから当然なのかもしれないが、御霊はその歓声に素直に驚き、泣きながら礼を言ってきた義実にも慌てた反応しか返せなかった。
そして残りの天魔の掃討は岡崎衆に任せると、御霊達は大庭御厨へと帰っていく。
その途中で景季は暗い空を見上げながらぼやく。
「岡崎の連中もせめて飯でも食わせてくれればいいのになぁ」
「兄者は命のやり取りをした直後なのに食べれるのですか?」
御霊の驚いたような言葉に景季は大きく笑う。
「当たり前よ。あれだけ暴れたのだから腹が減ったっ。親父殿っ」
景季の言葉に景時が顔を顰めながら口を開く。
「妻……お前の母が準備しているはずだ」
「お、儂達の分もあるか?」
景久の言葉に景時は無言で頷くと口を開く。
「しかし、今回は酒はなしだ」
景時の言葉に景久と景季から文句がでるが景時は手で抑える仕草をする。
「今回の騒動で梶原から岡崎に様々なものを渡して貸しを作る。そのためには酒もまた貴重」
「岡崎の奴に手助けするのか?」
「我らと同じく鎌倉に住まう者だ。それくらいしても罰は当たらんだろう」
景時の言葉に景季は舌打ちをしてからそっぽを向く。それを心配そうに御霊はみる。
「兄上」
「わかっている。わかっているがわかりたくないのだ」
景季の複雑な表情に御霊は何も言えなくなる。そんな御霊の頭に景親が手を置く。
「儂らの代では三浦党と結ぶことはできんかもしれん。だが、御霊、お主や景季の代にはよくして欲しい」
「わ、私がですかっ?」
景親の言葉に御霊は驚きの声をあげる。それに対して景親は真剣な表情で続ける。
「江ノ島の龍神を討つことができれば三浦党の連中の顔色も変わろう。そして龍神を討った御霊を特別視するはずだ。その時こそ我ら鎌倉党と三浦党は手を取り合うことができるであろう。そしてその中心には御霊、お主がいるのだ」
景親の言葉に御霊は表情を自信なさげに崩す。それを見て景親は苦笑しながら頭を撫でた。
「御霊のこの様子では一人前になるのはまだ先だな」
「御霊、そういう時は『私に万事お任せください』と即答するのだっ」
「三浦党と一番問題を起こしそうなお主が言うでないわっ」
景季の言葉に景時が怒鳴ると鎌倉党の面々から笑い声が溢れる。その笑い声は平穏になった鎌倉の夜に響きわたった。
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