第3話 宣戦布告
会議が終わった後に俺はそのへんにいた宰相を捕まえた。
「待ってくれよ宰相」
俺が声をかけるとビクッとしていた。
「は、ははは、な、なんでございましょう?オルクス様」
動揺していた。
目が泳いでる。
俺の暴虐っぷりを見ての反応だろう。
まぁビビるのも仕方ないだろう。
俺だって他人視点でこんな暴君を見ていたら怯えるし。
「安心しなよ。俺は無差別に殺してるわけじゃないから」
「ご要件は?」
「べルマンドへ手紙を書くんだよ」
「手紙?なんの?」
「今から戦争しますって手紙」
さすがの俺もよーいどんも言ってないのに戦争する気にはならん。
いったん「戦争をしますよ」って相手に伝えてからしたいわけだ。戦争を始める前はそれが礼儀だろう。
そのへんのマナーというかルールくらいは弁えている。
「なぜ私に頼んでいるのですか?」
「書き方が分からんからな。得意だろ?宰相なら」
「まぁ、苦手ではありませんが」
顔に出てた。
(いやなお願いされてるなー)って。
もともと宰相は気弱な人だ。
自分の立場としては戦争なんてやりたくないんだろう。
だが、俺という悪魔が存在していることによって、そんなことは口が裂けても言えないわけだ。
王族の命令はぜったいだ。
逆らってはいけない。
もしも逆らえば殴られて頭を踏み潰されるからな。
かわいそうに。
一ミリくらいは同情してあげる。
だが、こいつの気持ちを考えるとは言ってない。
俺もこのままでは命がかかってるからだ。
「宰相。頭に穴を開けるのと胃に穴を開けるの、どっちがいい?」
少しの沈黙。
どっちがいいかを考えていたらしい。
でも、自分の命には変えられないらしい。
「胃に穴を開けましょう」
そういう返事だった。
宰相の執務室へと案内してもらった。
「さぁ、書き方を教えてくれ」
「うーん……」
頭を悩ませていた。
「戦争の申し出など書いたことがないものでして、困ってしまいますね」
どうやら引き受けたはいいものの、何を書けばいいのかは全くわかっていないようだ。
俺としても困ったな。この手のことは慣れていない。
「やはり、ありふれた手紙と同じように書いてみればいかがでしょう?最初は拝啓から始めましょう」
ふむ。拝啓だな。
「次に軽くですが相手国に対する感謝の気持ちとか崇めるような文を書いてみましょう」
拝啓
べルマンド王国様。
暑いですね。こうも暑いと貴国のアイスが食べとうございます。売れ行きもさぞ良いことでしょう。私としてもとても喜ばしいと感じております。
「適当すぎませんか?」
「今から戦争するのにていねいに書く必要ある?大事なのはこのあと。分かりやすい本題だよ」
さて、本題に入ろうかと思うのですが。
あなたの国の王子が生意気だったので殺しました。
こちらには謝罪する気持ちは一ミリもありません。
よって、穏便に済ませるためにも戦争をして貴国を滅ぼしたいのだが。
よろしいか?
終わり
「これでいいか。ありがとう宰相」
「は、はぁ……」
困ったような息を吐いていた宰相。
「行ってきます」
「どこに行かれるのですか?」
「べルマンドだよ。直接手紙を渡してくる」
「え?」
キョトンとしてた。
「この手紙はいたずらではないことを伝えるためにも俺が直接行って渡す。そのまま戦争してくるよ」
数秒の沈黙の後。
宰相がポツリと呟いていた。
「戦争とはいったい……?それより胃が痛いなぁ」
◇
準備なども込で1日かかったが、俺は隣国のべルマンドへやってきた。
さっそく王城に招かれたが登城してすぐにクソのような扱いを受けていた。
「あらあらオルガイが来ましたわよ」
「ほんとですこと。オルガイはみすぼらしいですわね」
「あんなみすぼらしい男でも王族になれるなんてオルガイはすごいですわね」
「やっぱりオルガイは低俗な国ですわね」
オルガイっていうのはオルガルド人とか国に対する蔑称だ。
この国くらいでしか使われてない。
この国はほんとクソだよな。せっかくはるばるやってきた外国人に対する扱いがこれだぜ?
だが、俺は何も知らないフリをしてそのまま王城へと入っていった。
アポはあるのですぐに王様への謁見が可能だった。
謁見の間には王様とそれから騎士がいた。
王族の警護をしている近衛騎士である。
「遠かったでしょう?ようこそチンケなオルガイよ!オルガイはいつ見ても笑えるものだな!」
王様ですらこの有様だ。
終わってる。この国。
ここに来るまでに差別用語しか聞いてない。
俺たちはべルマンド人にたいしても差別なんてしてないのに。
こいつら、俺達になにか恨みでもあるのだろうか?(歴史的にはとくに問題はないどころか、俺たちが下手にでてたくらいだけど)
「して、なんの用だね?オルガイよ」
「先日タクトくんが我が国にいらしたので、そのお礼に、と思いましてね」
「そういえばタクトとお付がまだ帰ってきておらんがまだそちの国におるのか?」
「その件なんですがね。これをどうぞ」
手紙を紙飛行機みたいにして投げ飛ばした。
いつもなら歩いて渡しに行くんだけど。
こんな奴にていねいに接する気持ちがミジンも湧かなかった。
「なんとオルガイはマナーがなっておらんな。素晴らしいマナーだ」
「ははは、そちらのお陰様ですよ」
嫌味が飛び交う。
「して、この手紙はなんなのか。オルガイよ拾いなさい」
「お前が拾えカス。投げ飛ばしてやっただけ有難いと思え」
口喧嘩に付き合うのが馬鹿らしくなったのか王様が拾った。
かさっ。
目を通すと見る見るうちに顔が青ざめて言った。
気持ちいいなぁ。
さっきから差別用語しか吐かないやつがぷるぷるしてるのは絶景だな。
「これはオルガイジョークか?タクトを殺した?笑えんぞ?」
反対に俺はにっこり笑ってあげる。
「まさか。こんな場面で冗談なんて言いませんし書きませんよ。お前んとこの王子は個人的に嫌いだからっかり殺しちゃった☆」
「キェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!」
王様はとんでもない叫び声を上げていた。
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