第12話

日記41ページ目

土曜日の今日は1人で天のタワーに向かった。

1人だけの探索だが、俺には実体分身のギフトがあるから荷物持ちは分身に任せて、俺は全力でこれまで分身たちが練度を上げた技術を使ってモンスターを倒して行った。

もちろんモンスターを探して倒すのは俺だけじゃない。

今日はすべての分身たちを天のタワーの探索に使っている。

天のタワーの入り口からそれぞれ分かれて探索を分身たちにさせた結果、かなりのドロップアイテムや魔石の回収が出来たほどだ。

この日だけでもかなりのポイントを獲得できた。

やっぱり俺は1人で行動した方が成果が出るのだろう。

授業では仕方なく組んでいるが、プライベートではあの3人と組んで天のタワーの攻略をしたくはないと思う。

1日でこれだけのポイントが貯まった事もあり、平日でもこれだけあれば訓練所を余裕で使えるだろう。

それに図書館にも行きたい。

図書館にはポイントを使わないと読めないコーナーに教本が置かれている。

だがら、今後もポイントを貯めて訓練所と図書館、それに少しずつ装備品も集めていこうと思う。

まだ、どの装備にも装備品を付けていないのだから、俺はまだまだ装備品でも強くなる余地が残っているのだから。

そして、この日に手に入ったニワトリのドロップアイテムの肉と卵を使った親子丼はなかなかに美味しかった。



「ふぅーー、はあっ!!!」


火拳闘法の技である一の技・火拳を胴体を狙って飛び跳ねたバッタに喰らわせる。

魔烈火という魔気の一種を纏わせた拳による一撃はバッタを殴り飛ばすのと同時に炎上させた。

バッタは身体を燃やしている魔烈火を消そうとするが、その火は魔気の一種である。

だからこそ、俺が燃やしたいと思う対象だけを燃やして行き、バッタはその身体を黒焦げにして生き絶えた。


「火拳闘法でも戦えるな。次は斬蹴気功法を試してみるか。」


まだ斬蹴気功法初伝を読み解いて分身に練習させているだけで、脚斬気をようやく使える様になっただけだが、技の一つも使えなくてもここら辺の弱いモンスターを倒すだけなら問題はないはずだ。

そう思いながらモンスターを探していると、モンスターのネズミが穴倉から出て来たタイミングで遭遇する。


「ヂュウー!!!」

「来たか。」


斬蹴気功法の呼吸を行ないながら体内で脚斬気を練っていく。

体内で練った脚斬気という闘気の一種を脚全体へと送り込み、俺は俺の脛を齧り付こうとするネズミを蹴り上げる。

まだ技術的にも未熟なせいでスパッと深く切り裂かなかったが、ネズミの表皮を毛皮と一緒に浅く切り裂いて地面に転がっていく。

本来の斬蹴気功法ならば、先ほどの一度の蹴りでネズミは剣で切り裂かれた様に両断されているはずだった。

それが浅く切り裂くだけで地面に蹴り飛ばしてしまうのは未熟な証拠だろう。

このまま斬蹴気功法だけで戦うことも出来るが、それだと戦闘時間が長引いてしまう為、俺は戦い方を変更して呼吸の仕方を変えた。


「これで終わりだ。火拳闘法三の技・火槌!!!」


拳に魔烈火を纏わせた俺は起き上がって再度攻撃を仕掛けて来たネズミに火拳闘法の技を打ち込む。

しゃがみながら重力や体重移動で重く威力のある拳を足元近くのネズミに打ち込んだ。

拳からはネズミの肉と骨を打ち込んだ感触が伝わり、そのまま骨がへし折れる感触を味わいながら燃え上がるネズミの焼ける臭いに顔を顰める。


「はぁ、もっと修行しないとな。斬蹴気功法はまだ使い物にはならないか。」


溜め息を吐きながら転がったネズミがドロップアイテムと魔石に変わるのを待つ。

そしてネズミから変わったドロップアイテムと魔石を分身が拾ってから探索に戻る。


「あっ、あれは初めてだな。」


未見のモンスターであるトカゲを発見した。

流石にトカゲが大きくなると迫力がある。

あのモンスターには素手での戦闘ではなく、俺は始まりの長剣を使うことにした。

意識して武器を取り出した俺は流水剣法を使って、トカゲと戦うことにした。


「キシャー!!」


ドタバタとした動きでトカゲは俺の方に接近してくる。

流水剣法一の技・流水、二の技・流水流し、三の技・流し斬りを使用してトカゲを受け流しながら攻撃を行なう。

一の技・流水で流れる様な動きをしながら、二の技・流水流しでトカゲの体当たりを刀身で受け流すと同時に三の技・流し斬りで後方へと受け流したトカゲを切り裂いた。


「ふぅ、一撃。」


俺の後ろではトカゲが両断されて草原を転がっていた。

トカゲがドロップアイテムに変わるまでの間に俺は周辺を確認する。


「周りには居ないか。おっ、変わったな。」


ドロップアイテムと魔石に変わったトカゲを分身が回収すると、俺と分身は探索に戻るのだった。



日記42ページ目

魔術の選択授業では基礎魔術指南書のコピーが使われていた。

内容は既に教本の基礎魔術指南書を読んでいる俺に取っては覚えている内容だった。

そんな覚えている内容を習う必要がなく、俺は授業中の暇になってしまう危機感を覚えてしまったが、先生が基礎魔術指南書を覚えた者が次の授業内容に使われる物を出してくれたので暇にはならなかった。

出されたのはコピーの無魔術初伝だ。

教本とは違ってコピーだと覚えるのに何故だか時間が掛かるらしい。

だからこそ、無魔術初伝が置かれている図書館で教本を読むことを先生からはオススメされた。

基礎魔術指南書のお陰でコピーでも無魔術初伝の内容を読むことは出来る俺だったが、これがコピーと教本の違いなのか何故だか覚えにくい。

それでも時間を掛ければコピーでも無魔術初伝の内容を覚えられるのだから頑張っていこうと思う。

無魔術初伝を覚えることが出来れば、その次の教本のコピーを先生が渡してくれるはずだから。



日記43ページ目

今日の授業は1日中天のタワーの探索を行なう授業だった。

昼食は天のタワーの中で食べることになるからと、お弁当の用意をして探索した。

上手く急所に当てれば一撃で、そうでなくても大体で3回攻撃すれば、今の俺たちでも天のタワー1階層なら問題なく倒せる。

だからこそ調子に乗ってしまったのだろう。

同時に遭遇するモンスターの数が増えている場所の探索をした時に怪我人が出てしまったのだ。

俺の治癒魔法のお陰で傷痕も残らずに治すことが出来たのだが、その影響でトカゲに足を噛まれて骨折した南さんが戦意喪失でこの日は午前中で天のタワーから帰還することになった。

南さんのあの恐怖に怯えた様子だとしばらくは天のタワーに来たくはないだろう。

それに今まで誰も怪我を負うことはなかったせいで、星野くんも乾さんも怪我をした南さんの状態を見て若干だが怯えて恐怖していたのが見て取れた。

このまま南さんが退学して転校、星野くんと乾さんが天のタワーの攻略に尻込みすれば、それだけ俺の授業での成績が悪くなるので出来れば3人共がこれまでと変わらずにモンスターと戦える様になって欲しいものだ。



日記44ページ目

南さんが退学して転校した。

やっぱり立ち直れなかった様だ。

俺も分身たちとの模擬戦で骨折や内臓破裂くらいの怪我をした事があるが、あれは本当に痛い。

それでも俺は死にたくないからこそ耐えられたが、南さんは耐えられなかったのだろう。

まあ、それも仕方のない事だ。

少し前まで小学生だったのだから、前世の記憶のある俺とは違う。

それに南さんが転校した事で俺の学校での探索者パーティーは3人になってしまった。

これからはこの3人で天のタワーの探索をするのだが、まだ星野くんも乾さんも本調子ではない。

出来ればだが星野くんも乾さんも怪我をしても治るのだから戦える様になって欲しい。

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