第5話
日記20ページ目
あと2ヶ月で誕生日だが、ようやく基礎武術指南書の教本に書かれている内容をスムーズに行なえるようになった。
教本に書かれている内容も俺なりに理解しているが、それが本当に正解なのかは分からない。
けど、それでも全く何も知らなかった時と比べれば雲泥の差だ。
それに家族の中でモンスターと実際に戦ったことのある父さんに俺の動きを見てもらったが、一対一で弱いモンスターが相手なら今の俺でも戦うことが出来ると言うのが父さんの評価だった。
まだまだ子供だからこそ、俺の身体の体格が小さいこともあっての評価だそうだが、これは俺が成長すれば充分にモンスターと戦うことが出来るということだろう。
中学生になるまでの間にどれだけ技術を取得して技術の練度を鍛え上げられるかに、これからは注視して鍛えようと思う。
「ふっ!はっ!やっ!とりゃっ!父さん、どうかな?」
基礎武術指南書の教本に書かれた通りに型稽古を行なって、その成果を探索者だった父さんに披露する。
「なかなか動きも良くなったな。トオル、これなら天の
「ホント!?よし!これからも頑張ろう!」
探索者だった父さんが言うのなら本当だろう。もっと強くなる為にも練習しないと!
「このまま修行を続ければトオルが大きくなる頃には1階層を攻略も夢じゃないな。」
「うん、頑張る!アドバイスがあったら、教えてね、父さん!もっと強くなりたいから!!」
これからもっと俺が死ななくなる為にも頑張らないと!
日記21ページ目
今年の誕生日プレゼントは木製の剣と教本の基礎剣術指南書だった。
今年はギフトを授かる10歳の誕生日。
そのこともあって奮発したそうだ。
教本の基礎剣術指南書に書かれているのは基本的な刀剣の扱い方と刀剣を扱った動き、刀剣での戦い方などが書かれていた。
内容も他の教本と同じで絵と文字で書かれており、教本の内容も体術技術のことが書かれている基礎武術指南書と似たような内容の書き方なこともあって覚えるのもそれほど時間が掛かることはないだろう。
そして肝心の新しいギフトは実体分身と言うギフトだった。
実体分身は生命力、魔力、霊力の3つの力を使うことで発動することが出来る。
自分と全く変わらない実体を作り出す分身は俺と変わらない思考をしており、俺と違うのは2つだけ、それは生命力・魔力・霊力が回復しない事と耐久力がそれほどないことだ。
自分の分身だから生命力・魔力・霊力が回復しないのは分かるとして、耐久力もそれほどないというほどではない。
大人の男の人が殴る程度の力なら一撃で消滅する程度なので、日常生活で実体分身が消滅することはないのは幸いだ。
そして実体分身の何が1番すごいのかと言えばそれは実体分身で作り出した分身が経験した事を本体である俺に反映することが出来ることだ。
まるでNAR○TOの影分身の術のように効率良く修行も捗りそうだ。
でもこの修行法にも欠点があり、実体分身の分身が肉体を鍛えても本体に経験が反映されることはない。
だから肉体を鍛えるのは自分自身の努力で行なうしかないが、それでも技術を鍛えるのには役に立つ。
これからは実体分身で増やした分身には技術関連の修行を行なって貰い、俺自身は身体を鍛える他に生命力と魔力を増やす為に鍛えることにしようと思う。
そして今後は今まで偶にしか行なっていなかった霊力の感知技術の取得を再開する予定だ。
実体分身に使用するのは生命力・魔力・霊力の3つであり、分身を作るのに霊力が消費されるのなら使った際や減った霊力を感じ取りやすくなると思う。
小学校の卒業まであと2年と数ヶ月、それまでに成長できるだけ成長していくぞ。
「これが父さんと母さんからの誕生日プレゼントだよ、トオル。」
父さんと母さんに渡されたのは1冊の教本と木で作られた木剣だった。
「木剣と、教本はなんだろ?……基礎剣術指南書?剣術を覚える教本なんだ。」
「トオルはこれから探索者になるんだろ?それなら武器の技術も磨かないとな。」
「お母さんとしては危険な職業に就いて欲しくはないけど、それがトオルの夢なら応援するわ。」
父さんと母さんに応援されて頑張ろうとやる気が湧いてくる。
「それでトオル。ギフトはなんだったの?教えなさいよ。」
「実体分身ってギフトだったよ、姉さん。こんな感じに使うみたい。」
寝ている間に授かったギフトの知識は得ている。このギフトは今後の俺を強くするのに必須になるギフトだ。俺は早速ギフト実体分身を家族に披露する。
身体から生命力・魔力・霊力が消費されると、消費された生命力・魔力・霊力を使用して俺の分身が現れる。
「「これが実体分身だよ!」」
「「「トオルが増えた(てる)!?」」」
家族揃って唖然として全く同じリアクションをしている。その姿に仲が良いなと思ってしまう。
「「こんな風に分身が作れるんだよ!」」
「ホントに凄いわね。見分け付かないわよ。」
「サヤの言う通りだわ。」
「こっちが本体だろ?」
「「あれ?なんで分かるの父さん?」」
姉さんと母さんは見分けが付いていないのに何故か父さんにはバレてしまった。
「そりゃ分かるさ。生命力と魔力の量が違うからね。」
「そんな見分け方があるんだ。」
実体分身は簡単に見分けられる事実を知ってショックだったが、この実体分身の力はこんな物ではないことは内緒にしておこう。
日記22ページ目
実体分身のギフトを授かってから半年の月日が経った。
今の俺が分身する事が可能な人数は5人と少ないが、これまでよりも5倍の効率で修行が進んでいるとは思う。
実体分身で作り出した分身に小学校を通わせることで、その分の時間を本体の俺自身を鍛える時間に使えるのが良かった。
それでも毎回、実体分身の分身を自分で消すときに起こる経験や記憶の反映はまだ慣れていないが。
そして実体分身を使った修行方法で鍛えた結果、修行効率も良くなったお陰で生命力で肉体を強化する生命力身体強化を取得し、ようやく霊力の感知技術を取得することに成功した。
霊力の存在を知ってからここまで取得できなかった事が、ギフト実体分身を手に入れてから時間を掛けずに取得できたのは本当にラッキーだ。
他にも霊力を感知する事が出来るようになったお陰で霊体も理解する事が出来るようになり、治癒魔法で霊体や魂に関しての回復も行なえるようになった。
これは霊力が分からず、霊体や魂を感じられないから治癒魔法の対象にならなかっただけみたいだ。
これで新しく治癒魔法の回復範囲が増えたので、今後の探索者になった時に役に立つはずである。
生命力・魔力・霊力基礎の教本に書かれていた内容をマスターするには、あとは霊力だけになった。
これからはじっくりと今ある教本の技術の取得と技術の練度を高めていこうと思う。
「じゃ、学校よろしく。」
「面倒くさいけど行ってくるよ。」
分身の1人にランドセルを渡して小学校に向かうのを見送ると、俺は残りの分身たちと森の方へと移動する。
「分身1は武術!分身2は剣術!分身3は生命力関連の技術!分身4は魔力関連の技術だ!それぞれ頑張ってくれ。」
「「「「おう!」」」」
分身たちがそれぞれの修行を開始する。俺も身体操作基礎と基礎武術指南書の教本に載っていた身体を鍛える方法で修行を開始した。
途中で治癒魔法で変な負担が掛かっている場所の治癒も行ないながら、この日も肉体を鍛えて生命力・魔力・霊力を消費法の修行で増やしていく。
ちなみに小学校に向かった分身5は授業を受けながら霊力関連の技術を鍛えている。
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