第3話 硬いパン
母たちが家をでて数分のこと
玄関を見つめ立ち尽くしている僕に弟が僕の服の袖を引っ張った
ぼーっとしていた僕はそれに気づいて我に帰り弟を見る
「にぃちゃん?」
なにも知らない顔で僕の顔を見上げてくる
「あ、あぁ、一人にしてごめんな、そうだ。ご飯にしよう。母さんがパンを置いていってくれたんだ。それを食べてれば母さんもすぐ帰ってくるさ」
そう思っていた
散らかった部屋に戻り弟と一つのパンを半分に千切り分けっこして一緒に食べる
硬いパンだ
ろくに噛めたもんじゃない
そんな時弟が口を開きこう言った
「僕ね。将来はにぃちゃんみたいなかっこいい大人になるんだ。」
少しびっくりする気持ちと照れくさい気持ちに反応が遅れる
「そうか、じゃあ、頑張らないとな!」
硬いパンを噛みちぎり弟の頭を撫でる
ここに母さんと三人で暮らせたらどれだけ幸せだろうか
そんなことを考えていた束の間
一台の電話機が狭い部屋に音を響かせた
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