第35話 巨人の体内に侵入したアンナ

 巨大なイバラ姫が出現したことで、ミリエラは驚愕してた。


「嘘でしょ。マスターが巨人になったなんて。あんなのとどうやって戦えばいいの?」


 組織の人間が唖然とする中、マスターは不敵な笑みを浮かべていた。


「ふふ、この大きさなら魔法の威力も桁違いだからな。一気に破壊してやるよ」


 マスターは手から閃光魔法を繰り出した。


 閃光魔法の通った先は、空気が震えて、全てが消え去っていた。


「ダメだ。この威力では防ぎようが無いわ。私たちにはもう撃つ手が残ってないの?私たちはこのまま国が破壊されるのを見ているしかないの?」


 ミリエラは絶望していた。


「ふふ、素晴らしい威力だ。このまま、私の魔法で全て消し去ってやるよ。いくら避難しようが、インフラが無くなれば生活は出来ないだろう?死ぬのが少しだけ遅くなるだけだ」


 巨人となったマスターはこの国の主要な街が存在する方向へ閃光魔法を飛ばしていく。


 閃光魔法は地平線の彼方まで飛んでいき、通過した場所にあった全てのものが消滅していた。


「これで主要な都市は大体破壊できたな。では、細かいところを破壊していくか。終末まで、ゆっくりと時間をかけて絶望を味あわせてやるよ」


「ずいぶん楽しそうね」


「!!!!!」


 マスターは、聞こえるはずのない声がコクピットの入口付近から聞こえてきたので、驚きを隠せなかった。


「……お前、どうやってここに来た?」


「どうって、普通に下腹部に入口があったから、そこから入ってきたのよ」


 アンナは隙をみて機械人形の下腹部から、人間の子宮の部分にある機械人形のコクピット部分に乗り込んでいた。


 そして、内部から機械人形を破壊しようと考えていた。


「ふん、魔法で気配を消しているな。しかし、いくら気配を消そうが、触手が自動で侵入者を感知して排除するはずだ。私以外の者にあの触手の攻撃を対処できるわけがない。どうやってここまで入ってきた?」


「私もあなたと同じで、細胞が活性化しているの。超再生能力があるから無理矢理突破させてもらったわ」


「ならば、もう一度試させてもらおうか」


 マスターはアンナの周囲に無数の触手を出して彼女を攻撃するが、アンナは即座に肉体を再生させたため、平気だった。


 そしてアンナは魔法で触手を全て吹き飛ばしてしまった。


「なるほど。確かに今の私と同じ能力を持っているようだ。まったく、思い通りにはいかないものだな」


 マスターはアンナを睨みつけた。


「私にはこの身体があるから戦って死ぬことはほぼないけど、外から巨人を相手にするのは面倒だからね。内側から破壊させてもらうよ」


 そう話しながら、アンナは魔法で高速で回転する光の球を作り出し、マスターの方へ投げつけた。


 投げつけられた光の球は急速に拡大して、コクピットの中を押し潰していった。


「残念ね。これで終わりよ!!!」


(ちぃっ、こいつ、やりやがった!!! 早く身体を分離しないと。この巨体のままでは再生が追いつかなくなりそうだ!!!!!)


 アンナが巨人から脱出すると、すぐにマスターも中から飛び出してきた。


 そして、巨大な機械人形は内側から膨張し続けるアンナの魔法に耐え切れず、破裂するように吹き飛んだ。

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