第5話 魔素の解毒が気持ちよくておかしくなるウサ子姉さん

 三人は夜道を進みながら、話を始めた。


「ねえアンナ、とりあえず、あなたたちがなんで里を出て旅するのか教えてよ」


「あなた、里の上層部と繋がってるでしょう? 私たちに信頼されたいなら、まずあなたが持っているやつらの情報を渡しなさいよ。そしたら教えてあげてもいいわよ」


「私、上層部の人達のことは、何も知らないの。本当よ。彼らから命令を受けて動いていただけだから。信じてよ。今更隠し事なんてしないわ。だって私、あなたたちにお漏らしするところまでみられちゃったんですもの。それ以外で私が知ってることなら、なんでも話すから」


 アロウラは顔を真っ赤にしてアンナの顔を見つめた。


「本当かしら? まあ、あなたは私の同期だから、特別に話してあげるわ。私たちはね、魔素を解毒するための触媒を探しているの。触媒っていうのは、魔素と触れることで、魔素を無毒な物質に変えることが出来る物質のことよ。それがね、この国のどこかにあるみたいだから、それを見つけ出すのが旅の目的よ。それに、触媒があれば、あなたの身体を元に戻すことも出来るわ」


 アロウラはその言葉を聞いて一瞬自分の耳を疑った。

 彼女は、自身の身体がどんどん魔物化していることを気にしていたからだ。


「魔素の解毒なんて、そんなこと、本当に出来るの!?」


「信じられないって顔ね。じゃあ、私たちが魔素の影響を受けずに魔物化しないのは何故だと思う?」


 アンナとクロウドの二人だけが、里の中で魔物化していないのは、周知の事実だった。


「里の長からは、あなたたちは呪いを受けたから、魔素の影響を受けないって聞いたけど。その身体も、呪いの影響なんでしょう?」


「呪いなんかじゃないわ。体質なのよ。私たちは初めから魔素の影響を受けないの」


「それにね、クロウドは魔素を完全に無毒化できるのよ。さっき話した触媒が無くてもね」


「本当なの、クロウド」


「うん。その代わり、僕は魔法が使えないんだけどね」


「クロウドは魔素を完全に無毒化出来るの。でも、私は耐性があるから魔素が体内にあっても平気だけど、無毒化までは出来ないから、魔法を使うとどうしても魔素が子宮に溜まってしまうの。魔素がたくさん溜まってくると、お腹が膨らんでしまってね。苦しくて動けないから、定期的にクロウドに魔素を吸い出してもらっているのよ」


「ちょっとまってアンナ、魔素を吸うって、どこから吸ってるのよ」


「いやねぇ、知っているくせに……」


アロウラは顔を真っ赤にして怒り出した。


「嫌よ、私、お漏らしをみられただけでも死ぬほど恥ずかしかったのに、そんな恥ずかしいこと、出来るわけないじゃない!!!」


「アンナ、からかうのはやめなよ。それじゃ僕が変態さんみたいじゃないか!! 大丈夫だよアロウラ。僕がどこでもいいからアロウラの身体に接触すればいいんだ。そうすれば、アロウラの中の魔素を無毒化出来るよ」


「どこでもいいの?」


「うん、大丈夫だよ。だから……ハグしてほしい。僕、ハグが大好きなんだ」


「そうなんだ。うん、ハグならいいわよ。それじゃあ、お姉さんがクロウドのこと、いっぱいハグしてあげる。こっちへきて」


アロウラはクロウドを優しく抱きしめる。


(ふわぁ。アロウラの身体って、柔らかくて気持ちいいなあ)


「ええっ? なんでハグしてるだけなのにこんなに気持ちいいの?」


「体内の魔素が解毒されているからよ。その時が最高に気持ちいいの」


(これやばい。ハグしてるだけなのに、気持ち良すぎて変な声が出ちゃいそう……)


「んぅっ!! んぁぅっ!!!」


耐えきれなくなったアロウラは思わず身体をクロウドに密着させる。


(!!! アロウラがおっぱいを押し付けてきた。うわぁ。もう僕、我慢できないよ。ごめんね、アロウラ)


クロウドはアロウラにキスをする。


(ちょっと、こんなに気持ちいいのにキスされたら、私、おかしくなっちゃう。ああ、そんなに激しく吸わないで)


 クロウドはキスをしながら、アロウラをさらにきつく抱きしめる。


(いやああああ!!! あたし、きもちよすぎておかしくなっちゃうよおおおおお!!!!!)


 身体をビクッビクッと震わせてから、アロウラは力なく倒れ込んだ。


 そして、アロウラの身体は、少しだけ、元の人間の姿に戻っていた。

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