第99話 柊翔太の人格

「は?」

新田は自分の耳を疑うような素振りを見せた。


「新田なら薄々感じていると思うが、この生成AIはでは存在しない技術なんだ」

「うそ……でしょ?」


新田はかなり動揺していた。

彼女がここまで取り乱すのは珍しい。


「柊は未来から来たんだ」

景隆は柊の意図を汲んで言った。

第三者の証言があったほうが、少しでも信憑性が得られることを期待したためだった。


「柊の異常な知識はそう考えると辻褄が合うけど……って、石動はそれを知っていて、信じているの!?」

新田は口をパクパクさせていた。


「これから話すことは、荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、新田を信用しているから話せることなんだ」

「それって、以前に言っていた記憶のことに関係する?」 ※1

「そうだ、以前約束しただろ?」

「聞くわ」


新田は真っ直ぐに柊を見つめながら言った。


***


「にわかには信じられないわね……」

新田は柊が淹れたコーヒーを飲みながら、長い映画を観終わったような表情で言った。


「俺も最初は何いってんだコイツって思ったぞ」

景隆は当時のことを思い出した。

当時の柊は明らかに不審人物であった。


「話を聞く限りだと、あんたたちは元は同じ人間ってことよね?」

「そうだな」「そうだよ」

「それにしては似てなくない?」

『たまーに、ドキッとすることはあるんだけど……』


新田が言った後半部分は小声でよく聞こえなかった。


「柊は俺の倍くらい生きているからな。その間の人生で色々あったんじゃないか?」

「そうかもな」

「なによ、他人事じゃないでしょ」


景隆は自分がこの後に歩んでいたであろう人生を柊から聞かされることはほとんどなかった。


「それで、はどこにいっちゃったの?」

「それは俺も気になっていた」


柊は少し迷ったような様子を見せた後に言った。


「可能性はいくつかある」

「聞こう」


「最も可能性が高いのは、柊翔太は死んでいるということだ」

「うそっ!」

「俺が目覚めた状況を考えると、そう考えるのが自然だ」

「そうなのか……」


場がしんと静まり返った。


「入れ替わっている可能性もあるな」

「柊翔太の人格がお前とは逆に未来にいっているってことか」

「もし、そうなら、大変なことになっているでしょうね」


(仮に俺が柊の時代に飛ばされたらどうなるだろうか……全く想像が付かないな……)


「もしくは、俺がだと思いこんでいる可能性だ」

「さすがにそれはないんじゃないか? 俺の恥ずかしい過去まで全部知っているんだぞ」

「一般常識からすると、その説が一番説明がつくけどね」


新田はオカルトの類を一切信じないタイプであり、それは景隆も同様だった。


「実はその説を否定できるものがあるんだ」

柊が差し出した物は、景隆を大いに驚かせた。


⚠─────

※1 「芸能界に全く興味のない俺が、人気女優と絡んでしまった件について

」 109話 https://kakuyomu.jp/works/16818093077567479739/episodes/16818093087221361283

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