第93話 サブスクリプションビジネス

「ユニケーションも一種の動画配信と言えるぞ」

「そうなんだけど、もっとマス層に届くようなコンテンツをやれば、事業規模が拡大するよな」

「まぁ、そうだな」


柊は考え込んでいる。何やら思うところがあるようだ。


「未来の動画配信のマーケットはどうなっているんだ?」

「そうだな……まずはマネタイズの方法から話すか」

「事業を始めるなら一番重要なところだし、ぜひ聞いてみたい」


「大きく分類すると、サブスクリプション型と広告収入型に分けられる」

「どっちが多いんだ?」

「事業者の数で言えばサブスクリプション型だ」

「収益が安定しているからか?」

「詳しくはないが、おそらくそうだと思う。

サブスクリプション型はコンテンツに指向性があって、固定ユーザーが付きやすい」

「スポーツに特化しているとか、アニメに特化しているとか、そんな感じか……CS放送みたいなもんだな」

「あ、そうか、たしかに!……懐かしいな……」

「俺の時代では現役なんだよ!」

「俺の時代でも残っていた……のか……?」


CS(Communication Satellites)放送は通信衛星を利用した有料放送で、地上波よりも多くのチャンネルがある。

ニュースや映画、スポーツなど、特定のジャンルを専門としたチャンネルが多数を占める。


「サブスクリプション型でも幅広いジャンルを配信している事業者もある」

「資本力が大きいところだな」

「それもあるが、ECサイトなどが顧客を囲い込むためにやっている例もある」

「詳しく」

「ECサイトのプレミアム会員になることで、ユーザーは動画や書籍などのコンテンツを無料で消費できたり、安く買えるんだ」

「まさに囲い込みだな。ユーザー情報がめちゃくちゃ集まるから、マーケティングが色々できるな」

「そうだな。ネットの場合はユーザーからさまざまな情報を得られるので、テレビよりも選択と集中が容易だ」

「動画配信事業はデータがより重要になるんだな」


「ビデオレンタルの会社が事業を転換して、最大手まで上り詰めた事例もある」

「元からユーザーを抱えていたってことか」

「この会社はユーザーデータを最もうまく活用していると言っていいだろう。

皮肉にも、レンタル事業者がレンタル事業を潰す一因になった」

「絶滅したのか?」

「いゃ、細細と残っているはずだ」


「柊の話を聞くと、サブスクリプション型の動画配信事業では、欠かせない要素があるな」

「うむ、聞こう」

「資本力、コンテンツ力、そして顧客情報だ」

「たしかに、まとめるとそんな感じだな……俺はコンテンツビジネスに興味がなかったので、気にしていなかったが」

「これって、コンテンツは商材と置き換えれば、どのビジネスでも同じことが言えないか?」

「そうだな」


「うーん、今の俺たちにはどれも持っていないことがわかったよ」

「うまくいっている企業は少なくとも、お前が言ったどれかは突出していたな」

「危うく、勢いで始めるところだった。まぁ、その前に柊が止めるだろうが」


景隆は柊が語った内容を咀嚼した。


「柊のおかげで、なんとなくわかってきたぞ。広告収入型はどうなんだ?」

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