第9話 魔導カー

「坊ちゃんは、何を作ろうとしているのですかな」

ガントの尋ねに俺は正直に答えた

「魔導カーを作ろうと思ってるんだ

魔石をエネルギーに動く車だ」

「それは馬車ではなくて 馬なしで動く車

最近王都で作られたと噂で聞きましたが」

「そうだ それを作ろと思って いろいろやってみたんだが

うまくいかない」

ガントは俺の錬金術で作った失敗作をみながら

「坊ちゃんは、錬金術でどのくらい物を作りましたか」

「今回が初めてだが」

ガントは腕を組んで、困った顔をして言った

「坊ちゃん、錬金術でいきなり大きなものはできませんよ

小さなものから少しづつ作っていかないと無理です

あと複雑なものをつくるときは設計図を描いた方がうまくいきます。」

「なるほど、参考になった 設計図を書いてみるよ」

孤児院に行ったときに馬車の揺れで腰と尻を痛めたので

錬金術で車を作ることにした

前世でオタクだった俺は学生時代にラジコンカーのプラモデルを

作ったことがあった その時の組み立て設計図を思い出しながら設計図を書いてみた 

それから毎日 タイヤを作ったりハンドルを作ったり座席をつくったり

設計図を基に各パーツをひとつずつ作っていくとうまくいった

それから試行錯誤しながら10日で魔導カーが完成した

黒いボディーのスポーツカータイプのオープンカーだ

これを見てガントは驚いていた

「ぼっちゃんの魔力がすごいのは知っていましたが 10日で魔導カーを作り上げるとは まさに錬金術の天才ですな」

「ガントは大げさだな」

ほめられてご機嫌な俺は

「試運転に行ってくる」

魔導カーの魔石に魔力を流すとエンジンがかかり動き出した

「さて 町の周りを一周するかな」

快適なスピードで動き出した 乗り心地も馬車よりも数倍よくなっている

これ以上よくするためには道を舗装するしかない

快適な運転に気を良くしたおれは歌を口ずさんでいた

「魔導ゴーゴーゴー 魔導ゴーゴーゴー 魔導ゴーゴーゴー!

ブラックボディー魔導ゴー 負けず魂親譲り ゆくぞ勝利のゴールまで♪」

懐かしのアニソンの替え歌をうたいながら運転したら

『魔導ゴーゴーゴー 魔導ゴーゴーゴー 魔導ゴーゴーゴー♪』

後ろから俺以外の歌声を聞いた バックミラーを見ると

後部座席になぜか孤児院にいたミケともう一人の獣人の子が歌っていた

思わず急停止した。


死亡予定日まであと 1068日

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