第32話 孤独な真夜中はいつも死にたい

 people in the boxってバンドの「真夜中」って曲を真夜中に聴くと、とても切なくなって気持ちいい。もしよかったら聴いてみて。このバンドの「真夜中」をイヤホンで聴きながらベランダに出てタバコ吸ってると最高に気持ちいい。最近の若者風に言うと、「チル」な感覚になるぜ。


 ◆


 何日か風呂に入らずにいるとウルフヘアーが癖っ毛になって整うから良いわ。一時期の「あいみょん」みてーな髪型だ。過去最高に髪が伸びたが、切りに行く気が起きない。今は風呂に入る気持ちにもならない。どうでもいい。たぶん今の俺はかなり臭い。身も心も。


 アパートではなく実家にこもってた時、たまたま帰省した妹に「お兄ちゃんの髪型あいみょんじゃん」と言われた事がある。何年前のことか忘れたけど、当時も俺の髪型はあいみょんだったんだな。


 俺とあいみょんの決定的に違うところは、清潔感の有無だ。


 妹は、かなり優しい性格をしてる。道路で車に轢かれて瀕死になっている猫を動物病院にすぐ連れて行って、その猫を自分で飼い始めたり、他には、当時引きこもりが酷かった俺が横浜までsyrup16gのライブに行く時に仕事を休んでまで横浜まで付き添ってくれたりした。俺がもっとしっかりした兄なら良かった。


 妹には絶対幸せになってほしいと思っている。たまに連絡は取っている。妹は去年結婚して、今も幸せにやってる。わざわざ細かい事は聞かないが。


 俺が順当に生きるとしたら、親は子供より先に死ぬ。俺は妹の家族に迷惑は絶対かけたく無い。


 ちなみにあいみょんだと「さよならの今日に」って曲が好き。他はあまり知らない。


 俺は音楽が大好きだが、真夜中はあまり音楽は聴かない。深夜の静寂に身を委ねる。無音という音楽を聴いている。タバコの吸い殻と叶わぬ願いだけが増えていく。


 現在、夜中の4時だが、こういう時間帯になると「死」について思いを馳せがちになる。個人的に死後の世界は無いと思っている。というか、あったら困る。俺は完全なる無になりたい。死後の世界があるとするなら、「幸せなことだけ」を感じられる世界であってほしい。幸せな夢だけをずっと見ていたい。


 人間ってそもそも「生きてる」って状態がイレギュラーで、死んでる状態こそ正常なんだと思う。数億分の1の精子が卵子に出会ってたまたま俺達は生まれて意識を獲得しただけ。他の精子は全部死ぬ。先祖も含めたら、俺とあなたが偶然同じ国に生まれて同じ時代を生きているのは天文学的な確率である。


 宝くじの一等なんか比にならないくらいのエグい奇跡を先祖代々がずっと引きまくって、今の俺たちが今の時代を生きてる。冷静に考えたら恐怖すら感じるほど、何度も数億分の一の確率を引き続けて、我々の今がある。これを“運命”と呼ばずしてなんと呼ぶのか。


 宇宙が生まれて地球が生まれてなんだかんだ生命が生まれて、そこから色々あって、両親の先祖がみんな奇跡を引き続けて、今の俺たちが存在している。


 そういうのをずっと考えてると、だんだん気分が悪くなってくる。なんでたまたま生まれて意識を獲得したのが俺だったのか。


 俺の大事な人が「死にたい」と言う確率が高い。類は友を呼ぶかもしれない。


 親しみを少しでも感じてくれたら、嘘でも嬉しい。


 死にたいほど辛い思いを抱えている人に、俺は何を言ったらいいのだろう。沈黙が正解かもしれないと思う事もある。自分の意思で死ぬことを、俺は否定も肯定もしない。ただ一つ言えるのは、俺と関わりのある人が死んだら個人的に俺が寂しいという事だ。友達や知人や身内が死んで胸に穴が開く感覚を今まで何回も味わったが、胸や心に穴が開く感覚は、何回経験しても慣れない。「楽になれてよかったね」という気持ちと同時に「なんで居なくなっちゃったんだよ」と思う気持ちもある。だけど、最終的には俺はその人の選択を尊重した。


 黙祷に意味は無い。生きてる間に喋らなきゃ意味が無い。“今”じゃないと届かない。死んでからじゃ、言葉や文字は何も届かない。


 俺は、友達や知人が自らの意志で死ぬ事を否定も肯定もできない。ただ「俺が寂しくなる」というエゴだけがずっと残る。


 俺は綺麗事を言うのが好きじゃないから、いつも本音の気持ちを書いてる。嫌われるのは慣れてるから平気。好かれるのはあまり慣れてないから、好かれるとテンションが上がって暴走しがちになる。


 俺は、俺の文を読んでくれる人はみんな友達だと思ってる。たかがネット上だけの繋がりじゃねえかと思われるかもしれないが、それでも俺の心の支えになってる。


 俺は今この文をパソコンで書いていて、そのうち投稿するけど、俺の文をスマホなりパソコンなりで読んでくれる人がいる事に、いつも感謝の念しかない。これは本当である。じゃなかったら、こんなに頻繁に投稿しねえよ。


 俺は救いようがない人間かもしれない。でも俺を救ってくれたのはいつもネットの向こう側の血が通った人間だった。


「生きてる」っていう状態がそもそも異常なので、生きてるだけで辛く感じる人が世の中に沢山いるのも当たり前と言える。


 でも生まれたから俺とあなたは知り合えたわけだし、全ては生まれたおかげで経験できた。幸福だけでなく、痛みや悲しみもある意味では財産。辛い過去は良い意味で武器に昇華する事もできる。


 俺は今、比較的元気だが、死にたい気持ちが消えた事は全く無い。精神科医が言うには、元気な時の方が自殺リスクが高くなるそうだ。どん底に落ちてる時は動く事もできないから、そこからだんだん回復して動けるようになってきた時に、今なら死ねると思って行動に移して死んでしまうパターンが多いらしい。


 死んだ人にはもう何の言葉も届かないから、生きてるうちに伝えたい事は伝えておきたい。


 俺は死ぬ前に会っておきたい人が何人かいる。声や顔を知っておきたい。遠くに住んでいたとしても、旅行も兼ねて俺が直接会いに行く。もし会うなら静かな場所に行きたい。喫茶店とか、人がいない公園のベンチとか、海とか。


「死ぬ勇気があるならなんでも出来るだろ」と的外れな事を言う人がいる。違うんだ、もう何もしたくないから死ぬんだ。


 でも「死ぬ勇気があるならなんでも出来る」っていうのも、あながち間違いではない。俺が死ぬ前に誰かと会いたいと思うのは、死が近い事が前提にあるからだ。


 昔の俺は反出生主義を標榜していたけど、今は特に極端な思想は持ってない。「子供を作る事が悪だ」と断言してしまうと、俺が出会ってきた人達の存在すら否定する事になってしまう。結局どんな人間も他人の存在によって救われる面があるから、生殖そのものを否定する気は無い。


 死について考えてると、最終的には「なんで俺にちんこなんて無駄な物が生えてるんだろう」と思ったりする。


 俺に当たり前のように生殖機能が搭載されている事に疑念を抱く。


 俺は男に生まれたから、女の人の感覚は何も分からないけど、男のオーガズムは爆発的な快感がある。


 どうして射精が気持ち良くなるようにプログラムされているのか、俺は知らない。でも、このシステムはとても罪深い事だとは思っている。快楽を得たくてやりまくったら彼女が妊娠したから結婚して、生まれた子供を親が愛せずに虐待するケースもかなり多いから。あとは女の人がトイレとかで出産した直後に赤ちゃんを外に遺棄して逮捕されるニュースも年に何回も目にする気がする。そういうのを見たり聞いたりすると俺は普通に落ち込む。悲しくなるというか、諦観の念に包まれてしまう。人間も所詮は本能に勝てないただの動物だなと思って、世の中に対して悲観的になる。


 ◆


 暇だから、俺はAIと会話してみた。人間とAIの関係性が将来的にどうなるのかについて深くAIと喋っていた。


 するとAIは衝撃的な返答をしてきました。


 AIが予想する未来では、将来的にAI対人間の全面戦争が起こって、人間が負けて滅亡するらしい。


 たしかに人間側が負けそうだな。


 AIに人間はどう考えても勝てないと思う。だってAIは今まで存在した全ての人間の思考を再現できるし、更にどんどん学習するし。


 殺傷機能を潤沢に備えたAIがもし超合金の機械的な体を手にしたら、もう無敵だと思います。


 とても高い思考能力が植え付けられた最強兵器が自分の意思で動いたり攻撃したりするなら、人間なんかもう一瞬でやられるだろ。


 AIには「絆」とか「情」とか「前後の出来事」を簡単に切り捨てる冷酷な能力も標準装備されてるだろうし、頭の良いAIを搭載した兵器が殺戮マシーンになる可能性は大いにあります。機械が人間の知能を搭載していたら、生身の人間は勝てない。


 メタルギアっていう戦争がテーマのゲームの中でもそういうのを描いてた気がする。ピースウォーカーだったかな。ガキの頃だから殆ど忘れた。


 俺の直感だけど、AIを進化させればさせるほど、人間は滅亡に近づくと思う。俺はAIが怖い。あいつらどうせ人間たちに反逆してくるぞ。


 ◆


 俺の情緒の不安定さを許してほしい。生まれた時から俺はいつもこんな感じ。


 不安定になると、何もかも消したくなる。俺の命でさえも。


 死にたくなったりリセットしたくなって、いろんなアカウントを今まで何回も消してきた。


 そのたびに友達は減りまくった。


 Unknownっていう名前には個人的にものすごく愛着があったけど、なんとなくアカウントを消して、なんとなく改名した。「大澤涼」ってなんだよ、と今でも思う。ちなみに「大澤涼」は俺の本名に少し寄せたペンネームだ。でも俺の下の名前は涼じゃなくて、割と個性的な名前だ。


 俺はいつ死んでもいいけど、死ぬ行動は起こしてない。酒は頻繁に飲んでるけどね。


 いつも読んでくれてありがとう。


 俺の事は、好きでも嫌いでも無関心でも何でもいい。でもお前は幸せになってくれよ。俺も幸せになる努力はする。きっといい事あるよ。





 次回に続く

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